2007年07月06日

金曜日の調整報告 【 Pelikan 400 緑縞 14K-M 】

2007-07-06 01 今回の依頼品はPelikan 400。過去に何度も調整している。ところが調整する度に新たな発見に出会う。発売した数も多いし、仕向け地別に細かな仕様変更があったり・・・・

 はたまた物を大事にする欧州から中古で流れてきた物は、さまざまな時代の部品が組み合わさっている場合も多い。それに豊富なペン先バリエーションを加えると、まったく同じ物に出会う事はほとんどあるまい。

2007-07-06 02 今回の依頼品で、面白いことを発見した。縞胴と尻軸の境目の部分に【PELIKAN 400 GŰNTHER WAGNER GERMANY】と刻印してあるが、最初のPと最後のYがこんなにズレている。

 ずっと文字の刻印は仕上げの最終工程でなされていると思っていたのじゃが、ひょっとすると板の段階で文字を刻印し、最後に接合しているのかな?ちなみにどんなに目を凝らしてみても接合箇所はわからなかった。図のEの部分が接合部分かな?とも考えたが単なる模様のようじゃ。上まで繋がっていない・・・

 接合部を見分ける方法が知りたいな・・・現行品はすぐわかるのじゃが・・・

2007-07-06 03 今回の依頼内容は、例によってインクフローの改善。Pelikan 400の時代のペン先は異様にお辞儀状態なのででスリット先端が強力に左右から押し付けられている。この個体は特に強烈! かなり筆圧をかけないとインクが出てこない。

 また右横からごくわずかにペン芯が見えている。真上からならセーフじゃが
、ちょっとでもペン先を捻ると見えてしまう。これは非常に不快なので見えない状態に微調整が必要

2007-07-06 04 これがソケット毎首軸からはずした状態。ソケットの状態もペン芯の状態も上々。Pelikanのこの時代の万年筆をばらした際、一番美しいと思えるのは、このペン先ユニットの姿。ペン先+ペン芯+ソケットだが個々の部品は凡庸で地味だが、3つを組み立てると非常に魅力的に映る。

 一時このユニットだけを大量に入手し、ペンホルダーに挟んで浸けペンで利用していた事もある。

2007-07-06 05-12007-07-06 05-2 こちらが調整前のペン先の表と裏じゃ。表にはソケットと接する部分にエボ焼けが発生している。インクがエボ焼けを誘発していたからじゃろう。

 ちなみに横に並べた【ペン先画像】は拡大率を小さくしてあるので悪しからず。

 また裏側には強烈なエボ焼けが残っている。これではインクフローの悪さに拍車がかかってしまう。

 ペン芯を1時間ほどロットリング洗浄液につけてみたが、一切汚れが出てこなかった・・・ということは既に十分洗浄されていると見た。ひょっとするとロットリング洗浄液で洗われたのかもしれない。

2007-07-06 06-12007-07-06 06-2 こちらが調整後のペン先の表裏。

 エボ焼けを取り除き、膨大な時間を費やしてスリットを空けた。もっともこれだけ鍛え上げられたペン先なら、すぐに調製戻りが発生して先端は再び閉じてしまう。

 しかし一旦開いたスリットが調整戻りで閉じたのと、元々閉じていた状態とはまったく違う書き味になる。前者の書き味は絶品じゃが、後者は我慢ならん!というくらいの劇的な書き味変化がある。

2007-07-06 07 これが首軸に装填して、微調整を繰り返した段階。既に調整戻りでスリットは閉じている。しかしフェザータッチで書いてもペン先は見事に開いて大量のインクを供給してくれる。

 早いスピードで左から右に弧を描いてみると、キュイーン!というペン鳴りとともにインクの飛沫が飛び散る!こういう状態のペンポイントを丸めると・・・夢のような書き味になるのじゃ!

 ただしペン鳴りを減らそうと表面を15000番なんぞのラッピングフィルムで磨いていくと、インクスキップが頻繁に発生する。そういう場合はあわてず、一ヶ月ほど書きまくってペンポイントの表面に傷を付ければよい。その場で一瞬でスキップを止める技もあるのじゃが、熟練が必要なのであまりお奨めできない。

最近調子が良いな・・・今回も大成功じゃ!


【 今回の調整+執筆時間:3時間 】 調整2.0h 執筆1.0h


これまでの調整記事

2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-02   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
2007-05-30   Pelikan 400 灰茶 14C-F 
2007-05-28   Montblanc No.1468 18K-OBB
2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル
2007-04-30   Montblanc ヘミングウェイと同時期の No.146 14K-B 
2007-04-27   Montblanc 50年代 No.146 14C-B
2007-04-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-B
2007-04-23   Montblanc No.134 スチール-BB 
2007-04-20   Montblanc No.146 14K-BB TEST
2007-04-18   Montblanc 80年代 No.149 14K-B
2007-04-16   Montblanc 70年代 No.149 14C-EF ああ無残・・・ 
2007-04-13   Montblanc 80年代 No.149 14K-BB
2007-04-11   Montblanc 50年代 No.146 14C-KEF 軸削り
2007-04-09   Paker Sonnet F 遠隔調整
2007-04-06   Montblanc No.94 18C-F
2007-04-04   セーラー 初代キングプロフィット 21K-B
2007-04-02   Pelikan #600 18C-B 軸折修理
2007-03-30   Pelikan M800 螺鈿 18C-B
2007-03-28   Montblanc 80年代 No.146 14K-M
2007-03-26   Pelikan M250 14C-B
2007-03-23   Montblanc No.146 曲がり 18C-M
2007-03-21   Montblanc 50年代 No.149 14C-EF
2007-03-19   Pelikan 400NN 14C-ST
2007-03-16   Pelikan 500N 茶縞 14C-M 
2007-03-14   Parker Sonnet 鍍金ペン 
2007-03-12   Montblanc 60年代 No.149  14C-KBBB  
2007-03-09   Pelikan M800 18C-F
2007-03-07   Pelikan 400NN 緑縞 14C-BBB
2007-03-05   鍍金三昧
2007-03-02   Pelikan M800 14C-M
2007-02-28   Pelikan 400 茶縞 14C-F
2007-02-26   Omas D-Day 18C-B
2007-02-23   Montblanc No.256 14C-KOB
2007-02-21   Pelikan 140 黒軸 14C-ST 
2007-02-19   Montblanc No.149 14K-M
2007-02-16   Pelikan 140 緑縞 14C-KF
2007-02-14   Montblanc No.142 14K-KM
2007-02-12   Sheaffer インペリアル・ソボリン 14K-M
2007-02-09   Montblanc No.149 14C-M
2007-02-07   Pelikan M710 トレド 18C-EF バイカラー
2007-02-05   Montblanc No.146 14K-EF 遠隔調整
2007-02-02   Pelikan M1000 緑縞 18C-3B
2007-01-31   Montblanc No.146G 14C-KM
2007-01-29   Delta 366 M 
2007-01-26   2006年最高調整【自分用】 
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2007-01-22   Waterman ル・マン 200 
2007-01-19   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 その2      
2007-01-17   Pelikan 100N OM 
2007-01-15   プラチナ 蒔絵 
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2007-01-10   Faber-Castell スネークウッド M 
2007-01-05   Montblanc ボエム アメジスト OB 
2007-01-05   Pelikan アテネ B 
2007-01-03   Montblanc No.254 OB 
2006-12-30   セーラー プロフェッシュナルギア 水色 
2006-12-27   Sheaffer コノソアール 赤軸 OB  
2006-12-16   Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 
2006-12-13   Montblanc デュマ 
2006-12-09   Pelikan 1935 Malachit Green F 
2006-12-06   Pelikan 1931 Toledo B  
2006-12-02   Montblanc No.252 OBBB 
2006-11-29   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 
2006-11-25   Montblanc No.149 ニブ塗分け 
2006-11-22   Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金 
2006-11-18   Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金 
2006-11-15   Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金  
2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(16) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
なるほど、その分析はおもしろそうです!
株式の取引に通じるものがありますね。
そう聞くと嵌りそうで怖いです。
株式の取引も半分くらいは自分の考えが正しいか実証したいために
行っているようなものですので。
Posted by shamal at 2007年07月08日 23:21
stylustipしゃん

最後の10秒で入札されてもPC2台あればなんとかひっくり返せるが、拙者の経験では8秒前ならひっくり返せない。それ以降にbidされても追いつかない・・・

ただ自動bidするPGMも出てきたようなので安心は出来ないがな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月08日 23:18
shamalしゃん

ヤフオクの自動延長は気分が悪いので、競ったら降りる。
eBayは相手の過去履歴を見ながらどういうパターンで来るか?入札金額は10
ドル刻みか、5ドル刻みか・・・101ドルとくるか、99.9ドルで様子見をするタイプかなどにわけて、50人分ほどのデータを記録していた。
最近はBidした個人が特定できないケースが多いので、ほとんどやっていない。

ま、eBay傾向分析が趣味だったかも?その理論を証明するために、万年筆を買っていたフシもある・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月08日 23:13
最近は最後の3秒です。
秒殺です・・・
Posted by stylustip at 2007年07月08日 23:08
最後の8秒ですか・・・厳しいですね。
師匠の生贄達の画像を見るとまた煩悩が・・・いけないいけない。
これが公明の罠というやつですね(爆)
Posted by ロブーオ at 2007年07月08日 22:53
秒単位の勝負ですか。
最後まで競ってしまうと、熱くなって予算以上の額で入札するので、
最近は早めに入札して終了後に結果を見ることにしました。
それでもたまに自動延長されていたりして、ついポチっとやって
しまいますが・・・
Posted by shamal at 2007年07月08日 22:46
海外オークションで取りたいと思ったら、最後の8秒くらいが命ですな。
ADSLもなかったころは、最後の30秒が勝負でしたがな。

最近は、人が血道をあげたものを生贄と考えているので、Won物はほとんど記憶にも無い物ばかりじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月08日 21:51
shamalさん

おそらく何度かぶつかったかもしれません!
2年間くらい海外オークションに参加していながら
いまだに1本も400とご縁がないのですから、トホホもいいところです。
最後の30秒の時間帯にきちんとその場にいないのが原因でしょうが。
いつも運を天に任せて入札して放置・・・Item not won・・・
この繰り返しですね(笑)
Posted by ロブーオ at 2007年07月08日 21:36
ロブーオさん、こんにちは。

入札、もしかしたらぶつかっていたかもしれないですね・・・
400はかなり高騰してしまっているので、最近は海外に手を出しています。
Posted by shamal at 2007年07月08日 21:12
shamalさんpelikan_1931さんこんにちは

>平行のものもあれば、斜めのものもあって、いかにも手作り

なるほど、そういうことなんですね。
職人ごとにその人の得意な継ぎ方をしていたのかもしれないですね。
400が高騰しているのはそれだけ人気があるということなんでしょうが
ますます縁が遠退きそうで残念です。
それでも気長にトライはしてみるつもりですが、
浮気はするなという天の声なんでしょうか・・・
Posted by ロブーオ at 2007年07月07日 15:07
shamalしゃん

明日持参して拙者に切れ目を教えてくだされ!
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月07日 10:16
ロブーオさん、こんにちは。

最近400系は高騰していますね。
特に茶縞はユーロボックスより高くなることもしばしばで、
驚かされます。
過去に本気で入札したもので唯一落札できなかったのが400NNでした。

軸の接ぎですが、手元にあった5本ほど確認したところ、
平行のものもあれば、斜めのものもあって、いかにも手作り
という感じです。
Posted by shamal at 2007年07月07日 01:32
ありがとうございます!
Posted by shamal at 2007年07月07日 01:15
ペリカン400いいですね。
ずっと欲しいと思ってますが縁がなくて持ってません。
今まで20回くらいは入札に参加したことがありますが
100パーセント他の人が落札していくという、
まるで万年筆に避けられているかの如き結果です。
この時代のペリカンの軸は緑の縞の途中で斜めに継いであるように見えますが
どうなんでしょうか?
Posted by ロブーオ at 2007年07月06日 20:26
shamal しゃん

ご明察!

後刻印、しかも回しながら刻印の証拠を見つけたとは! でかした!
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月06日 17:32
見覚えがあるなと思ったら、私の依頼物でしょうか?
400は入手するたびにそれぞれ微妙に違うので、どれが正しいのやらわからず
全く困ったものです・・・といいつつ、楽しんでいますが。

刻印の件ですが、手持ちの物を確認したところWAGNERのWが継ぎ目に
掛かっているように見えますので、やはり成形後に刻印したように
思われます。ぐるっと刻印する際に軸か型のどちらかが傾いていた
のでしょうか。

先日自分でも400NNのスリットを開こうと悪戦苦闘して、やっと
チョビッとだけ開くことができました。
pelikan_1931さんの苦労を実感しました。
Posted by shamal at 2007年07月06日 16:28