Montblanc No.74はフルハルター森山さんが、コストと性能のバランスが最も良い一品として評価しているようじゃ。フェンテのでべそ会長も全色そろえて愛でておられる。系列のPIX No.75やNo.76とともに最も愛されているシリーズ。不思議と悪口もほとんど聞かない。
金貼りキャップにプラスティク軸といういでたちは派手というほどではないが、質素でもない。貧乏人が気張って着飾ったような感じがしてなにか共感?を覚えてしまう。
通称イカペンと呼ばれる独特の形状のニブにフード付きの首軸がついている。このフードの効果に付いては過去に報告済だと思うが、念のためもう一度。
ペン先と突き出したフードの間には0.5ミリほどの隙間があるが、筆記時にはこの隙間にインクが充填される構造になっている。このフードがオーバーフィードと同じ効果を果たし、潤沢なインクフローを実現している。
書き味の良さは一にインクフロー、二に丸め・・・などと呼ばれるが、No74は書き味をインクフローで演出した見事な逸品。仕組みが複雑なのにもかかわらず弱い素材を使っていた為トラブルが多発したのが70年代モデルに移行した理由かもしれないが、復活して欲しいモデルの筆頭じゃな。
依頼内容はインクフローの改善。依頼人は書き味には鷹揚じゃが、インクフローと書き出し掠れには過敏!拙者とまったく同じ!
この個体は発売初期のエボナイト製のソケットを使っている。このソケットは重厚で良いのだが、ペン先とペン芯を指で挟んで引き抜く時に壊れそうで気を使う。後期のグニョグニョの半透明樹脂のソケットの方が多少乱暴に扱っても良いので気が楽じゃ。
調整後のペン先。よく見るとペン先に【24】との刻印がある。これはキャップがプラスティック製の安価モデルNo.24用の14金ペン先。No.74のペン先は【14】の刻印がある18金ペン先。
西武百貨店が東口にあり、東武百貨店が西口にあるJRの駅よりは混乱は少ないが・・・。なぜ【74】にしなかったかといえば、元々、18金ペン先付きの樹脂軸高級モデルであるNo.14の軸バリエーションの一つがNo.74。従ってNo.14とNo.74、はたまた全身金貼りのNo.84や金無垢のNo.94もペン先は共通なのじゃ。
ちなみに柔らかさや弾力は14金も18金も大差ない。通常は14金の方が書きやすいものだが、ことNo.14系列のペン先では差が無いようじゃ。少なくとも拙者には個体差以上の有意差は検知出来ない。
No.74のペン先調整の基本は【ニブの寄りを弱める】こと。寄りの強さによって硬さを出しているようなところもあるので、スリットを開き気味にして寄る力を弱めるかゼロにすれば、インクフロー向上とともに、柔らかい書き味に一変する。
こちらが調整後のペン先の拡大図。
軸の細さから考えれば、意外なほどズッシリとした感のあるNo.74。もしNo.14からNo.94までの全ての軸と全てのペン先のバリエーションを揃えたら幸せ!と考える人も多い。
1960年代の万年筆で、まだ50年はたっていない。気長に待てばコレクターから出てくるチャンスは少なくなかろう。特にEFやFの書き味は絶妙。ペンポイントから2~3ミリがピコピコとしなる書き味はPelikanのステノグラフにも似て絶品。嵌ると立ち直れなくなるようじゃな。
【 今回の調整+執筆時間:3時間 】 分解&画像処理1.5h 調整0.5h 執筆1.0h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上げ(磨きなど)をする作業、及び、
画像をスキャナーでPhotoshopLEに取り込み、向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間