最近Montblanc No.146のVintage物の値段がじわじわと上がっている。当然だと思う。現行品より性能が良くて、姿かたちも美しいのに、現行品の3割くらいの値段で買えていた方が特殊なケースだったのじゃ。まだまだ相場は上がるはず。
【昔は安かったのに利殖目的の素人が増えて相場が上がって迷惑だ】的な発言を見かけることもあるが、それは変。【自分たちが散々資源を食い荒らしておいて、発展途上国が資源を消費し始めると眉を顰める】行為に近い。身勝手で【男前な考え方】ではない。
新品の万年筆はお嫁に出す時べらぼうに値が下がるが、中古で購入した万年筆は、それほど変わらない値段でお嫁に出せる。すばらしい事ではないか!これは相場が高騰しているおかげ。むしろ感謝しなければな。
さて今回の依頼品は、二束三文で入手したと思われる。
なんとスリット入りのペン芯【1980年代】の下半分が折れている。スリットにカッターの刃でも入れて遊んでいるうちに折ってしまったものと思われる。
こういう傷物を見つけたら必ず確保されるが良い。万年筆としての寿命はまだまだある。ペン先だけでも1万円以上の価値はあるのじゃ。
裏側から見ると、非常に綺麗に折れている。通常ならペン芯を交換するのじゃが、このスリット付きのペン芯は既に入手不可能じゃ。サービスセンターに出すと胴体ごと新しくなり、目の玉が飛び出るような金額を請求される可能性もある。せっかくフリマで入手した意味が無いじゃろう。
そこで今回は現状を出来るだけ生かしつつ、珍しい万年筆として生かす事にした。いわば整形手術かな。ただしプチ整形。【フラットフィーダーもどき】のファニーフェイスは残しておこう。
ペン先は80年代前半の14Cのニブ。おそらくはEFであろう。ペン先のスリットがこれでもか!というくらいに強く締まっている。これではインクは出ない。
また表にも裏にも【エボ焼け】が多少見受けられる。これはいかなる場合にでも取り除いていた方が良い。もし使うのであればという前提じゃがな。
使わないで保存しておくだけなら、エボ焼けは落さない方が良い。後世の人にエボ焼け状態を伝えるためじゃ。自分たちの時代でエボ焼けを消してしまっては申し訳ないからな。
こちらがプチ整形後のペン芯の全体像。折れ目が汚かったのをヤスリと耐水ペーパーで磨いただけじゃが、アグリーで面白い形状になった。下半分の支えが無くなると、ペン芯はずいぶんとお辞儀角度が深くなったような気がする。気のせいかな?
こちらは調整が終わったペン先とペン芯を胴体に差し込んだ状態。上から見る分にはまったく普通のペン先に見える。書いてみてもインクはシュルシュルと出てくる。70年代の18Cのペン先ほど厚みが薄いわけではないので、ふわふわの書き味とはいかないが、14Cの時代のペン先も大好きじゃ。
ピストンガイドが金属製になって以降は、その重量増に耐えるためか、ペン先がさらに厚くなってガチンとした書き味に移行していく。
最後にこちらが真横からの画像。割れ残りのフィンを削り取ったので、引っ掛かってさらに状態が悪くなるリスクはなくなったはずじゃ。
それにしても1950年代初期のフラットフィーダーのようでなかなか良い。もし下半分のフィンをバリバリに折ってしまったら、こういう状態に改造してしまった方がすっきりして良いかもしれない。
ちなみにインクフローにも書き味にも悪い影響はなさそうじゃ。もし影響があるとすれば、インクをペン先に保持出来る量が減った事。胸に挿したまま歩きまわるような事は避けるべき。あくまでも自席において労わりながら使ってあげるのが良かろう。
【 今回の調整+執筆時間:3.5時間 】 分解&画像処理2.0h 調整0.5h 執筆1.0h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上げ(磨きなど)をする作業、及び、
画像をスキャナーでPhotoshopLEに取り込み、向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間