2007年07月11日

水曜日の調整報告 【 ペン芯の折れたMontblanc 80年代 No.146 14C-EF 】

2007-07-11 01 最近Montblanc No.146のVintage物の値段がじわじわと上がっている。当然だと思う。現行品より性能が良くて、姿かたちも美しいのに、現行品の3割くらいの値段で買えていた方が特殊なケースだったのじゃ。まだまだ相場は上がるはず。

 【昔は安かったのに利殖目的の素人が増えて相場が上がって迷惑だ】的な発言を見かけることもあるが、それは変。【自分たちが散々資源を食い荒らしておいて、発展途上国が資源を消費し始めると眉を顰める】行為に近い。身勝手で【男前な考え方】ではない。

 新品の万年筆はお嫁に出す時べらぼうに値が下がるが、中古で購入した万年筆は、それほど変わらない値段でお嫁に出せる。すばらしい事ではないか!これは相場が高騰しているおかげ。むしろ感謝しなければな。

 さて今回の依頼品は、二束三文で入手したと思われる。

2007-07-11 02 なんとスリット入りのペン芯【1980年代】の下半分が折れている。スリットにカッターの刃でも入れて遊んでいるうちに折ってしまったものと思われる。

 こういう傷物を見つけたら必ず確保されるが良い。万年筆としての寿命はまだまだある。ペン先だけでも1万円以上の価値はあるのじゃ。

2007-07-11 03 裏側から見ると、非常に綺麗に折れている。通常ならペン芯を交換するのじゃが、このスリット付きのペン芯は既に入手不可能じゃ。サービスセンターに出すと胴体ごと新しくなり、目の玉が飛び出るような金額を請求される可能性もある。せっかくフリマで入手した意味が無いじゃろう。

 そこで今回は現状を出来るだけ生かしつつ、珍しい万年筆として生かす事にした。いわば整形手術かな。ただしプチ整形。【フラットフィーダーもどき】のファニーフェイスは残しておこう。

2007-07-11 04 ペン先は80年代前半の14Cのニブ。おそらくはEFであろう。ペン先のスリットがこれでもか!というくらいに強く締まっている。これではインクは出ない。

 また表にも裏にも【エボ焼け】が多少見受けられる。これはいかなる場合にでも取り除いていた方が良い。もし使うのであればという前提じゃがな。

 使わないで保存しておくだけなら、エボ焼けは落さない方が良い。後世の人にエボ焼け状態を伝えるためじゃ。自分たちの時代でエボ焼けを消してしまっては申し訳ないからな。

2007-07-11 05 こちらがプチ整形後のペン芯の全体像。折れ目が汚かったのをヤスリと耐水ペーパーで磨いただけじゃが、アグリーで面白い形状になった。下半分の支えが無くなると、ペン芯はずいぶんとお辞儀角度が深くなったような気がする。気のせいかな?

2007-07-11 06 こちらは調整が終わったペン先とペン芯を胴体に差し込んだ状態。上から見る分にはまったく普通のペン先に見える。書いてみてもインクはシュルシュルと出てくる。70年代の18Cのペン先ほど厚みが薄いわけではないので、ふわふわの書き味とはいかないが、14Cの時代のペン先も大好きじゃ。

  ピストンガイドが金属製になって以降は、その重量増に耐えるためか、ペン先がさらに厚くなってガチンとした書き味に移行していく。

2007-07-11 07 最後にこちらが真横からの画像。割れ残りのフィンを削り取ったので、引っ掛かってさらに状態が悪くなるリスクはなくなったはずじゃ。

 それにしても1950年代初期のフラットフィーダーのようでなかなか良い。もし下半分のフィンをバリバリに折ってしまったら、こういう状態に改造してしまった方がすっきりして良いかもしれない。

 ちなみにインクフローにも書き味にも悪い影響はなさそうじゃ。もし影響があるとすれば、インクをペン先に保持出来る量が減った事。胸に挿したまま歩きまわるような事は避けるべき。あくまでも自席において労わりながら使ってあげるのが良かろう。


【 今回の調整+執筆時間:3.5時間 】 分解&画像処理2.0h 調整0.5h 執筆1.0h

画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上げ(磨きなど)をする作業、及び、
画像をスキャナーでPhotoshopLEに取り込み、向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間

調整
とはペンポイントの調整をしている時間

執筆とは記事を書いている時間



これまでの調整記事

2007-07-09   Montblanc No.74 14C-F
2007-07-06   Pelikan 400 緑縞 14K-M
2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-01   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M

2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
2007-05-30   Pelikan 400 灰茶 14C-F 
2007-05-28   Montblanc No.1468 18K-OBB
2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル
2007-04-30   Montblanc ヘミングウェイと同時期の No.146 14K-B 
2007-04-27   Montblanc 50年代 No.146 14C-B
2007-04-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-B
2007-04-23   Montblanc No.134 スチール-BB 
2007-04-20   Montblanc No.146 14K-BB TEST
2007-04-18   Montblanc 80年代 No.149 14K-B
2007-04-16   Montblanc 70年代 No.149 14C-EF ああ無残・・・ 
2007-04-13   Montblanc 80年代 No.149 14K-BB
2007-04-11   Montblanc 50年代 No.146 14C-KEF 軸削り
2007-04-09   Paker Sonnet F 遠隔調整
2007-04-06   Montblanc No.94 18C-F
2007-04-04   セーラー 初代キングプロフィット 21K-B
2007-04-02   Pelikan #600 18C-B 軸折修理
2007-03-30   Pelikan M800 螺鈿 18C-B
2007-03-28   Montblanc 80年代 No.146 14K-M
2007-03-26   Pelikan M250 14C-B
2007-03-23   Montblanc No.146 曲がり 18C-M
2007-03-21   Montblanc 50年代 No.149 14C-EF
2007-03-19   Pelikan 400NN 14C-ST
2007-03-16   Pelikan 500N 茶縞 14C-M 
2007-03-14   Parker Sonnet 鍍金ペン 
2007-03-12   Montblanc 60年代 No.149  14C-KBBB  
2007-03-09   Pelikan M800 18C-F
2007-03-07   Pelikan 400NN 緑縞 14C-BBB
2007-03-05   鍍金三昧
2007-03-02   Pelikan M800 14C-M
2007-02-28   Pelikan 400 茶縞 14C-F
2007-02-26   Omas D-Day 18C-B
2007-02-23   Montblanc No.256 14C-KOB
2007-02-21   Pelikan 140 黒軸 14C-ST 
2007-02-19   Montblanc No.149 14K-M
2007-02-16   Pelikan 140 緑縞 14C-KF
2007-02-14   Montblanc No.142 14K-KM
2007-02-12   Sheaffer インペリアル・ソボリン 14K-M
2007-02-09   Montblanc No.149 14C-M
2007-02-07   Pelikan M710 トレド 18C-EF バイカラー
2007-02-05   Montblanc No.146 14K-EF 遠隔調整
2007-02-02   Pelikan M1000 緑縞 18C-3B
2007-01-31   Montblanc No.146G 14C-KM
2007-01-29   Delta 366 M 
2007-01-26   2006年最高調整【自分用】 
2007-01-24   Pelikan M200 ダークブルー 母の遺品 
2007-01-22   Waterman ル・マン 200 
2007-01-19   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 その2      
2007-01-17   Pelikan 100N OM 
2007-01-15   プラチナ 蒔絵 
2007-01-12   Parker Duofold クロワゾネ
2007-01-10   Faber-Castell スネークウッド M 
2007-01-05   Montblanc ボエム アメジスト OB 
2007-01-05   Pelikan アテネ B 
2007-01-03   Montblanc No.254 OB 
2006-12-30   セーラー プロフェッシュナルギア 水色 
2006-12-27   Sheaffer コノソアール 赤軸 OB  
2006-12-16   Sheaffer インペリアル 777 金キャップ & 青軸 
2006-12-13   Montblanc デュマ 
2006-12-09   Pelikan 1935 Malachit Green F 
2006-12-06   Pelikan 1931 Toledo B  
2006-12-02   Montblanc No.252 OBBB 
2006-11-29   Montblanc No.149 ピストンガイド交換 
2006-11-25   Montblanc No.149 ニブ塗分け 
2006-11-22   Namiki Vanishing Point ペン先のロジウム鍍金 
2006-11-18   Pelikan M910 トレド ペン先の三層鍍金 
2006-11-15   Pelikan M800用 ペン先の三層鍍金  
2006-11-11   カランダッシュ ボールペンの銀鍍金 
2006-11-08   Montblanc No.149 ペン先裏のロジウム鍍金   
2006-11-04   Montblanc No.149 O3B でも・・・  
2006-11-01   Parker Duofold International XXB 
2006-10-28   Montblanc 1970年代 No.146 ああ無残! 
2006-10-25   Montblanc 1980年代前半 No.146 B   
2006-10-21   Montblanc No.149 B 至高のペン先   
2006-10-18   Sheaffer Snorkel 青/ 赤  
2006-10-14   Senator  President  B 
2006-10-11   プラチナ #3776 セルロイド 極太  
2006-10-07   Conway Stewart Churchill IB
2006-10-04   OMAS パラゴン BB   
2006-09-30 Montblanc No.254 OBB  
2006-09-27 Montblanc Np.146  丸善120周年記念 
2006-09-23 Montblanc No.149  BBB 
2006-09-20 Pelikan 140 赤 
2006-09-16 Sheaffer Crest 黒 & 赤 
2006-09-14 Soennecken Pony  
2006-09-13 Montblanc No.742-N  

2006-09-09 Montblanc No.252 
2006-09-07 Montblanc No.22 緑 
2006-09-02 Montblanc No.744 OBBB 
2006-08-31 Montblanc No.1465 高筆圧対応化 
2006-08-30 Montblanc  No.149 開高健モデル 
2006-08-26 Montblanc  No.644 グレイ縞 
2006-08-23 Montblanc 1970年代 No.146    
2006-08-19 Montblanc Monte Rosa 
2006-08-16 Sheaffer Tuckaway  

2006-08-10 Montblanc No.256 KOB   
2006-08-05 Conway Stewart Floral   
2006-07-29 Montblanc 1950年代 No.146 
2006-07-22 Montblanc No.74改 Kugel
2006-07-15 シェーファー ノスタルジア・バーメイル
2006-07-08 シェーファー ニュー・コノソアール
2006-07-01 アウロラ 88 オールブラック
Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(5) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
pelikan_1931 さん

ご教示いただき、ありがとうございました。
納得しました。
Posted by 茶渋 at 2007年07月11日 20:52
茶渋 しゃん

本来の位置というのが決まっていないのがこの時代の万年筆のいいところじゃ。

イリジウムの形状は依頼者の書き癖に合わせるので、形状はかならず変わる。

通常ひっくり返して書いてもそこそこの書き味になるように調整するのじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月11日 20:30
orichan しゃん

赤インクを入れて漏れるとしゃれにならない職業なので、要注意じゃな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年07月11日 20:16
いつも調整報告、ごくろうさまです。楽しませていただいてます。
今回の調整結果について、2、3教えていただけませんか。

調整後はペン先が2ミリくらい引き出されているようですが、
このペンの場合、本来の位置はどちらなのでしょうか。
写真では、調整前は585の刻印は読めなかったように
見えます。とすれば、調整前の位置がおかしかったのかな
と思ったものですから。

調整後、イリジウムの形状がずいぶん変わっているように
見受けられるのですが、何か理由があるのですか?

前から疑問に思っているのですが、ペン先より上にある
イリジウム(紙と反対側の意味)を整形することで
書き心地に何か影響があるのでしょうか。それとも
単に見栄えが良くなるだけでしょうか。

Posted by 茶渋 at 2007年07月11日 12:33
師匠
今回もありがとうございました。月曜日より、早速、白衣の胸に挿して歩き回っていました。今のところインク漏れは無いのですが、机の上だけの使用に本日より変更いたします。
Posted by orichan at 2007年07月11日 07:16