新潟県三条市といえば、ジャイアント馬場さんの出身地として有名。
TVのプロレス中継では【新潟県三条市が生んだ世界の巨人ジャイアント馬場】と紹介されていた。
従って三条市は長嶋茂雄さんの実家である千葉県佐倉市よりも耳に入る機会が多かった。また我々万年筆愛好家の間では佐倉市はWAGNER会員番号【00000】で日本の万年筆コレクターの草分け:中園宏さんの実家としての方が有名じゃな。
実は中園さんのお宅は長嶋宅の近所。長嶋茂雄と瓜二つの兄弟が農作業をされているとお話されていた。
今回の依頼品は新潟県三条市からやってきた。お預かりした後に大地震があり心配していたのじゃが、依頼主から【心配ご無用!】との便りが届いたので一安心。
依頼内容はペン先先端がズレているので直して欲しいというもの。やっとの思い出手に入れたVintage No.146の姿が見苦しいと心が痛むものじゃ。ご本人がWAGNER 裏定例会に持参されたほど・・・。
そのほかにも左図のように多少スリットは詰まっているので、通常の1950年代 No.146よりはインクフローが悪い。
たまに切り割りが左右にズレているものを見かけるが、そこは問題ない。ペン先にも傷はなく非常に良い状態じゃ。
ペンポイントはMだが、上から見るとやや丸みを帯びている。これはこの当時好まれた調整かもしれない。拙者の好みからすれば、開高健モデルのNo.149-Mのようなエッジの立った【M】の調整にしたいが、依頼者の趣味とは違う感じがしたので止めておいた。
こちらは横顔。1950年代後半の厚いペン芯。こちらの方が丈夫でインクのボタ落ちも少ないが、ペン先のカーブに合わせてペン芯を曲げる作業は極端に難しい。
作業性から言えば、初期のフラットフィーダーの方が断然良い。メーカーもそれを知った上でモデルチェンジしたのであろうから、フラットフィードにはよほど大きな問題が潜んでいたのであろう。ただそれは未だに拙者の知るところでは無い・・・
こちらがペン先をペンポイント側から見た画像。ペン先がペン芯の上に左右対称に載っている必要があるのだが、かなり左に傾いているのがわかろう。この状態では、書くに際して書き出しで掠れたり、斜め線がガリガリと引っ掛かったりするはずじゃ。
なをこれはスキャナー画像。ノックアウトブロックの穴にペンを反対に立て、それを下からScanしたもの。これは非常に生産性が高い撮影技法じゃ。お試しあれ。
この位置調整をするには、一度ペン先とペン芯を抜く必要がある。厚いペン芯の場合にはゴム板で両方を挟んで引っ張っても抜けるが、安全を考えれば首軸を左に回してはずし、ノックアウトブロックを使ってペン先とペン芯を後ろから叩き出すのがBetter。ただし首軸を接着剤で固めてあったり、セルロイドが脆くなっているケースもあるので、力を入れすぎないようにな。
一度抜いたペン先とペン芯は、ちゃんとした状態になるように指ではさんで状態を見る。段差があるようなら指で曲げて位置調整をする。
ただし力ずくで曲げたものには、調整戻りが発生することがあるので、時間を掛けてな・・・365歩のマーチのように、三歩進んで二歩下がるを繰り返して目標の位置に持ってくるのじゃ。約2週間かけてやれば問題無いじゃろう。
少し押し込んで位置関係を確認したら、目標の位置までグッと一気に押し込むのが良い。もちろんゴム板で挟んで押すことをお忘れなく。
上から見ると若干ではあるがスリットが開いている事がわかろう。このほんの少しのスリットによって書き出しの掠れが激減する。また書いている途中のインクの濃淡の差が少なくなる。
なぜ出荷時からこのスリットを拡げないのかな?イタリア・メーカーの中にはスリットを少し拡げて供給するメーカーも出てきた。あとは国産がやってくれれば・・・
耐久性やインクボタ落ち防止を中心に考えれば寄りは強い方が良いが、筆記者の気持ち良さを考えるならスリットを開いて出荷して欲しい・・・あるいは販売店を教育して欲しい・・・ものじゃ。
そもそもヘビーユーザの声を取り入れる仕組みを社内に持っているのだろうか?クレーマーの意見ではなく、愛好家の意見を取り入れてこそ製品はグレードアップするのにな・・・
こちらは調整後の横顔。ペン芯を少し後退させた。この方が弾力が多少とも増大する。
お辞儀したペン先は、弾力を楽しむもの!見ているだけで気持ちよくなりそうなカーブ!すばらしい!
【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1.5h 調整1.0h 執筆1.0h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間