さて昨日予告した【EFのニブはもっと派手なNo.149に装填し、軸にばかり目が行くような状態でないとバランスが取れない。ふふふ・・・そちらは近日中に画像をお目にかけよう。すごいですぞ!】をさっそく紹介しよう。
上の画像はSunnyしゃんの元へ旅立つ前の姿。多少小太りの地味〜な彼女は、Sunnyしゃんの手によって【超派手な良い女】に変身したのじゃ。
まずはSunnyしゃんを紹介しておこう。事実を話すのではなく、彼との会話の中から単語を拾って作った拙者の妄想が生み出した人物像だが、当たらずといえども遠からずであろう。
敬虔なクリスチャンであるSunnyしゃんは、定例会/裏定例会の日にも、必ず教会に寄ってから参加しておる。
キリスト教とは後悔を引きずらない宗教で【主よお許しください・・・また万年筆を買ってしまいました・・・アーメン】と懺悔すれば神は必ず許してくださり、後悔する心は消え、新たな希望とともに万年筆を探し回れることが出来る。
しかし妻は許してはくれない。万年筆を好きになり始めたころは、寛容な笑顔で受け入れてくれた。【浮気するよりずっと良いわ・・・安い物ね、ふふふ】
しかし狂ったように買っていたある日、ついに妻の怒りが爆発した。主と違って妻は厳しい。「右の頬を打たれたら、左の頬を・・・」なんてことは言わない。「右か左か!どっちの頬を打たれたいの!」と来る。
恐れおののいたSunnyしゃんは、妻に対して【八枚の反省文】を書き、万年筆を購入するのを止めた。そして・・・
【万年筆を買うのではなく、材料を買ってきて自分で作るのなら妻の逆鱗には触れまい・・】と勝手に判断したSunnyしゃんは、知人の外人に旋盤を借り、万年筆を制作するためのキットを買ってきて、日夜万年筆作りに精を出していた。
しかし、ただ単に木製の万年筆を作っているだけでは飽きてしまう。そこで漆塗りに挑戦した。漆を乾燥させるための【ムロ】を買い、過去に購入した安価な万年筆に漆を塗りまくっていた。
1年ほど前までは、傍目に見ても【素人の手慰み】だったが、3ヶ月ほど前にはプロはだしの腕前になっていた。そこで、さらなる向上の為に、拙者のNo.149を提供することにし、練習用の胴軸1本と、漆を塗るべきキャップ+胴軸をお渡しした。
分解して渡したのはクリップ部分を塗りやすくするのと、No.149であることを強くは意識させない為じゃ。単なる部品に塗る感覚で肩の力を抜いて塗ってもらいたくてな・・・
調整の世界でも、他人の万年筆を調整して初めて腕が上がっていく。自分の万年筆をいかにうまく調整出来ても、それだけでは自信が持てない。他人の大切な万年筆を調整して初めて得られる満足感、高揚感、そして挫折・・・そういう経験してこそ、一段高い調整のレベルに到達出来る。塗りの世界も同じじゃろう。
自分用の調整と、他人用の調整とではアドレナリンの出方が違う。他人用の方がはるかに仕上がりが良いのじゃ。従って拙者は新しい調整を試す時には、必ず他人の万年筆を使う。成功したら初めて自分用の万年筆の調整に適用するのじゃ。
今回のSunnyしゃんもそのノリ。【それじゃ私のNo.149にも塗りますんで、金具を外してくださいな・・・】とか。仕上がりを皆に絶賛されて、低アドレナリンでも成功する自信がついたらしい。 2007年8月12日(日)に持ち込まれたSunny製漆塗りを【曼荼羅】と名付けた。派手なのに落ち着いている。キリスト教徒のSunnyしゃんが到達した【密教】の世界じゃ!
約3ヶ月間【塗って、乾燥させて、研いで】を何度も繰り返してここまでたどり着いたとか。ルーペで観察していると別の世界に引き込まれる錯覚を覚えてしまう。解脱した世界ではなく、欲望に満ちあふれた世界・・・まるで【WAGNER】の象徴じゃ!
西の奇人が開発した【万華鏡万年筆】に負けない【倒錯の世界】へと導いてくれる【鍵】のよう。そういえばビッグXに変身する際に使う【マグネットペンシル】にも似ている・・・相当古い話じゃが・・・
細部を拡大しても破綻がない。これは相当気を遣ってマスキングした上で塗らなければ出来ない技。しかも通常のエアーブラシ用のマスキングテープでは滲んでしまうのでボンドやセロテープなどでマスキングするらしい。今度【メッキマスク液】を紹介することにした。
一見するとわからないが、金粉も塗り込まれている。そんじょそこらの蒔絵よりもはるかに多くの時間と情熱と闘志が入っている。やはりアマチュアに妥協はない! 筆記時はこういう雰囲気になる。特筆すべきは、表面に漆が塗ってある為、きちんと押し込めば、キャップのぐらつきが解消される。
No.149やNo.146の欠点は書いているとキャップがぐらついてしまうこと。それを嫌ってキャップを強く押し込むと、胴軸にねじ部分で醜い擦り傷がついてしまうため、しょっちゅうプラスティック磨き布で磨いていなければならなかった。
ところがこの漆塗りのNo.149では、キャップをぐっと押し込めば、ピタっと胴体と一体化し、一本の棒のような感じで、まったくぐらつかない。しかもキャップを引き抜いた後に、傷も残らない。硬いようで弾力があり復元性も高い漆厚塗りならではの特徴であろう。
今までのNo.149に対する漆塗りでは、漆の厚さ分だけ軸を削ってから塗るのがプロの世界の常識だった。しかし今回のSunnyしゃんの塗りで【削らないで直接塗った方がキャップの具合が良い】事がわかった! これも理屈と実用の違いじゃ。12日のルーペの話と同様じゃな。 こちらはペン先の状況。この万年筆につければ、誰もが胴体に気をとられてペンポイントの貧弱さに気づかないだろう。
書いてみて、さらに驚いた。漆塗りの軸は手の中で滑らないので、持っていて軽く感じる。従って非常に取り回しが楽で、EFで書いていてもまったくストレスが無い。
萬年筆界に新たな潮流が生まれるかもしれない。単なる装飾でしかなかった塗りに、実用としての大きな価値が出てくる・・・No.146とNo.149のキャップ脱落防止として!
そういえば初代【ラッカナイト】やエボナイト製軸の紫外線による変色を防ぐため・・・まさに実用だった!
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