2007年08月16日

解説【萬年筆と科學】 その45

最後は品質勝負であるとわかった・・・【第四十五章】

 渡部氏は何故Waterman社が変化に立ち後れ、ParkerやSheafferが色軸やセルロイド軸やデスクセットなどへ短期間に対応出来たのかを分析している。

 Waterman社は当時創業50年、社員3,000人を擁する大企業。それに比してParkerやSheafferは足下にも及ばぬ規模の会社であったらしい。その事が変化への対応を容易にしたと結論づけている。

 パイロット社らしく船にたとえて話をしている。

 【船の舵の効果が大船になるほど鈍感になり、小舟になるだけ敏活になるのが船の慣性の大小による事は、物理学の教うる如く自然の勢です。会社商店の歴史が古くなるだけ因循という時間的慣性が大となり、そしてその陣容が大きくなるだけ保守という質量的慣性が強くなり、その結果は世相の変遷に沿って自由自在に営業方針の舵を取る事が遅鈍になる傾向のあることもまた自然の勢です。会社商店が古くなり大きくなったと喜んでいる反面には必ずこうした偶力が働きつつある事を思うのです

 そういう傾向にある事は否定しないが、いくら大きな会社でも【経営トップは若い人】を実践している会社はフットワークが良い。過去の失敗体験が会社の動きを愚鈍にする。従って失敗を知らない若い経営者に会社をまかせ、先輩は過去の失敗を分析して、再発しないようにアドバイスするだけにすればよいのじゃ。

 従業員1万人程度の会社の社長が40歳そこそこでもおかしくはない。むしろ40代
前半が一番働ける時期でもある。そして一番失敗しやすい時期でもある。

 【人は次のポジションで力を発揮できるかどうかを検証して昇進させるのであって、現在のポジションで果たした実績を評価して昇進させるのではない

 平地の白兵戦で強い二等兵を将軍にするのではない。将軍として力を発揮できる人材にトレーニングを施して将軍にするのじゃ。

 渡部氏のいうように【組織が変化を鈍重にするケース】では、ほとんどの場合、【ルール】がじゃましている。ルールは過去の事件に対する反省や、成功事例の一般化として作られるが、未来を予想して作られる物ではない。

 変化に対応できるルールとするには【このルールで対処できないと思われる自体が発生した場合は、このルールは直ちに廃止する】と記載しておけばよい。これ拙者の成功体験じゃが・・・一般化出来るかな?

 色軸争いに勝利したParkerとSheafferがこのまま突っ走るのかと思いきや、まずParker社に赤字が現れ始めた。

 ゾコラ支配人の高級・高価一点張りの営業政策にひびが入り、販路は拡大されたが利益は低下していった。その為かどうかゾコラ支配人は解雇されたらしい。

 それに引き続きSheaffer社も一時のごとき営業成績が維持できず経営の一大危機に陥ったらしい。

 しかるにWaterman社は泰然自若として経営しており、株価暴落などの事態には陥っていなかったとか。

 その差は【品質】。ParkerやSheafferは新製品の市場への投入を急ぐあまり品質の高くない品をマーケットの要請でどんどん投下していった。しかし品質問題が頻発すると利用者は二度とそのメーカーの物は買わなくなってしまう・・・

 というのが渡部氏の分析じゃ。

 当時のように万年筆が生活必需品であればそうであろう。しかし万年筆がアクセサリーに近い存在になった現在では多少違うような気もする。

 我々はメーカーに冒険して欲しい。失敗して品質問題起こしても良い。それもコレクションアイテムじゃ。

 それよりユーザの声を反映した新製品発売、チャレンジをどんどんして欲しい。値段は多少高くても良い。嗜好品だからな!

 市場を見ないで変な製品をを作ったり、クレーマーの情報を元に製品のもっとも魅力的な部分を殺したり・・・という事を止めて欲しい。

 メーカーと顧客がいっしょになって萬年筆を作り上げていくことが出来れば、萬年筆の時代は来るであろう。メーカーを孤独にはさせない。必ずFollowする。でも直すべきは直してね・・・

 【顧客の囲い込み】がニッチビジネス成功の鍵!そして【囲い込み】の最高の状態は【顧客自身を企画マン、営業マンとして使う事】。こうやって何百年も続いている和菓子屋さんもある。萬年筆界もそろそろ自前主義をやめてみては?製品開発から販売、修理までのパイプライン上に顧客を取り込むことが出来ればこの上ないパワーとなるのじゃよ。しかも給与はいらない。最高の労働力なのにな・・・


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Posted by pelikan_1931 at 07:30│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 情報提供