今回の依頼品はデルタ20周年記念モデルの値段が高いほう。バーメイル仕上げでレバーフィラーとなっている。拙者は購入以来一度も使わないままペンケースの奥に眠らせているので、今回の修理で初めて使った!
ベースとなる色の組み合わせは、言わずもがなの【ドルチェヴィータ(甘い生活)】で、オレンジの軸の両端を黒で締めている。キャップを閉じたときも、後ろに挿した時も色のバランスに破綻はない。さすが伊太利亜のデザインじゃ!
軸は良いのだが、万年筆製造経験の少ないデルタはレバーフィラーが苦手。最高の品質のゴムを使ったらしいが、最高の品質のゴムはインクサックには最低のゴムだった・・・
エボナイト製ペン芯に乗ってはいてもエボ焼けは少ない。首軸の端部分に多少汚れがあるくらいじゃ。
あとペン先は詰まっていて、これでは満足にインクは出ないだろう。大手文具店の店頭の人々も、口をそろえて最近の万年筆はインクの出が悪い・・・といっているのに、いっこうにインクフローが良い万年筆が市場に出ないのが不思議・・・
もっとも文具店の店頭でのやりとりを1時間ほど耳を澄ませて聞いていたところ、老人ほど細書きの万年筆に固執している感じがする。極細以外を一切認めようとしない・・・もう少し頭を柔らかくしないと長生き出来ないよなぁ・・・と不謹慎な事を考えておった・・・
こちらがスリットをごくわずか開いてインクフロー改善を図った後の画像。これは今までで一番良い具合にスキャナーで撮影できた画像じゃ。
デルタには【コストカット】なんて無粋な発想は無いのかもしれない。ペン先にコストカット穴が無いだけでデルタが好きになってしまう。しかもペン先の根本が長い事は、ペン先の安定感を増すのに非常に有効!
これが溶けたゴムサックを取り除いた直後の首軸じゃ。ゴムサックが黒化して溶け、首軸と同化している。
ゴムを溶かすとは・・。この首軸はエボナイト製かな?それともペン芯のエボナイトが悪さをしたのか?
いずれにせよ、黒化したゴムサックの跡を削り取ってインクサックを取り付ける必要がある。
こちらが削り終えた直後の首軸。インクサックが取り付けられる部分の根本が若干細くなっているのは、抜け落ち防止効果をねらっているのじゃ。
この軸の左端の段差の部分に【サックセメント】を塗る。それにゴムサックを挿し込んで固着してしから胴軸に差し込むわけじゃ。
こちらがインクサックを嵌める前の状態。首軸の左端にサックセメントという名の【ゴム糊】を薄く塗りつけるのじゃが、この段階で最も重要な事は・・・
サックの長さをどうするか? 長すぎると軸内で折れてインクが入りにくいし、短かすぎるとインク量が少ない。適正長さの測定方法は・・・定例会で伝授しよう。
こちらがインクサック取り付けて乾かしたところじゃ。どこにでも転がってそうなインクサックだが、新興万年筆メーカーは実験の蓄積がないので、やはり新たな試みには弱い。
こちらは修正済みのペン先を胴体へ嵌めた段階での記念画像。インクサックを専門で作っている会社の製品なのでインクには最も強い(はずな)ので一番安心!
拙者も過去に100本以上は修理しているが、サックが溶けたというような事故は無い。
これが調整後のペン先を首軸に取り付けての記念スキャンじゃ!
スリットがペンポイントの間にもきっちりとはいっているのがわかろう。これがインクフローが良い細字用の調整の極意じゃ!
【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 調整1h 執筆1h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間