今回は久しぶりの自分用の調整じゃ。物はMontblanc No.342のKMニブ付き。
これまで幾度となくクーゲルニブの調整報告をしたが、なんと自分用のクーゲルニブは初めて!
欲しくて購入したのではなく、オークションでbidした事すら忘れていたので、連絡が来た時に不思議に思ったほど興味が無かった・・・
なんせ調整の中で堪能しているので、敢えて欲しいとは思わなかったのだが、何かの縁で所有する事になったので、お輿入れまでの間に【別嬪しゃん】に変身させておこう。
先日のNo.342 ST 事件以降、Montblanc No.342のペン先の【儚(はかな)いような柔らかさ】を再評価している。
拙者がVintageの1950年代Montblancに嵌っていたのは5〜7年前。現在ではすっかり熱は冷めて、N0.256や色軸の【No.254、No.344、No.342】を各一本ずつ持っているのに過ぎない。
先日の事件をきっかけに改めて筆記してみたが、今後拙者が筆記に使うとしたらNo.342だけだと確信した。この柔らかさを【儚柔】と当て字を付けてみた。読み方は無いが・・・
【何の必然性があってクーゲルは世に出たのか】に対しては、拙者は勝手に以下のように想像している。
★当時のペンポイントは角研なので横細縦太の字になってしまう
★海外にも縦横同じ線巾が好きな人はいる
★その人達用に、イリジウムを斜めに研げるように丸玉を発売した
若干苦しい説明ではあるのだが、研ぎ師から見れば、その程度の差異でしかない。
横顔を見ると、先端にいくに従って猫背が強くなり、最後のところでペンポイントだけが上に反っている・・・これが縦横均一の字巾を出す秘密じゃな。
ペン先を外してみると、ペン先のスリットが詰まっている。ただし非常に柔らかいニブなので詰まってはいても多少筆圧をかければすぐにペン先は(だらしなく)開き、インクはドボドボ出てくる。
従ってペン先のスリットを開くかこのままにするかは考えどころ。何度も締めたり開いたりして落としどころを探った・・・
このモデルは左の写真と同じ、最後期(1957〜1960)のモデルと同様の形状をしているが、ペン芯はフラットフィードじゃ。拙者はグレー軸を持っているが、そちらは通常の厚いペン芯だったはず。後で付け替えたのか、元々混在していたのかを知りたいなぁ。ご存じの方がいたら情報くだされ。
ペン先に装着するにあたっては、ペンポイントの腹側だけを開け、背側は密着させることにした。No.342用もクーゲルニブはエラを反らすようには設計されていない。多少エラを張らせようとしたところ、ペン先が前から見てカモメの翼のように中央がへこんだ形になる。
こうなると光の加減で浪打が目立ち、気になってしようがない。書き味重視の人には問題ないが、【見映え】重視の拙者には耐え難い。そこでカモメが目立たない程度にエラを張らせ、最後に耐水ペーパーと金磨き布でカモメ状態を消し去った。その結果としてペン先がますます柔らかくなった。
横顔は左のとおり。クーゲルは腹の部分を調整していない事が多く、それが【クーゲルらしい】独特の引っ掛かり感が残った書き味を演出している。
ただし楽しめるのは大型のクーゲルニブの場合で、No.342程度のニブではどうしても多少立てて書く事になるので、あまり楽しめない。ペンを寝かせて書いてこそ楽しめる書き味なのでな。
そこで今回は腹の部分を削り取って、最近あまりはやらない【ヌメヌメ調整】を施した。【ヌメヌメ調整】は調整界の【ヤマンバ&ルーズソックス】のようなもので、根強いファンがいる。
【ヌメヌメ調整】はともかく【ヤマンバ&ルーズソックス】のいる街は【世界遺産】に登録したいほど好きなのじゃが・・・最近みかけんなぁ・・・
【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1h 調整2h 執筆1h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間