2007年09月01日

土曜日の調整報告 【 Montblanc No.342 14C-KM 】

2007-09-01 01 今回は久しぶりの自分用の調整じゃ。物はMontblanc No.342のKMニブ付き。

 これまで幾度となくクーゲルニブの調整報告をしたが、なんと自分用のクーゲルニブは初めて!

 
欲しくて購入したのではなく、オークションでbidした事すら忘れていたので、連絡が来た時に不思議に思ったほど興味が無かった・・・

 なんせ調整の中で堪能しているので、敢えて欲しいとは思わなかったのだが、何かの縁で所有する事になったので、お輿入れまでの間に【別嬪しゃん】に変身させておこう。

2007-09-01 02 先日のNo.342 ST 事件以降、Montblanc No.342のペン先の【儚(はかな)いような柔らかさ】を再評価している。

 拙者がVintageの1950年代Montblancに嵌っていたのは5〜7年前。現在ではすっかり熱は冷めて、N0.256や色軸の【No.254、No.344、No.342】を各一本ずつ持っているのに過ぎない。

 先日の事件をきっかけに改めて筆記してみたが、今後拙者が筆記に使うとしたらNo.342だけだと確信した。この柔らかさを【儚柔】と当て字を付けてみた。読み方は無いが・・・


2007-09-01 03 【何の必然性があってクーゲルは世に出たのか】に対しては、拙者は勝手に以下のように想像している。

 ★当時のペンポイントは角研なので横細縦太の字になってしまう
 ★海外にも縦横同じ線巾が好きな人はいる
 ★その人達用に、イリジウムを斜めに研げるように丸玉を発売した

 若干苦しい説明ではあるのだが、研ぎ師から見れば、その程度の差異でしかない。

 横顔を見ると、先端にいくに従って猫背が強くなり、最後のところでペンポイントだけが上に反っている・・・これが縦横均一の字巾を出す秘密じゃな。

2007-09-01 04 ペン先を外してみると、ペン先のスリットが詰まっている。ただし非常に柔らかいニブなので詰まってはいても多少筆圧をかければすぐにペン先は(だらしなく)開き、インクはドボドボ出てくる。

 従ってペン先のスリットを開くかこのままにするかは考えどころ。何度も締めたり開いたりして落としどころを探った・・・

2007-09-01 05 このモデルは左の写真と同じ、最後期(1957〜1960)のモデルと同様の形状をしているが、ペン芯はフラットフィードじゃ。拙者はグレー軸を持っているが、そちらは通常の厚いペン芯だったはず。後で付け替えたのか、元々混在していたのかを知りたいなぁ。ご存じの方がいたら情報くだされ。

2007-09-01 06 ペン先に装着するにあたっては、ペンポイントの腹側だけを開け、背側は密着させることにした。No.342用もクーゲルニブはエラを反らすようには設計されていない。多少エラを張らせようとしたところ、ペン先が前から見てカモメの翼のように中央がへこんだ形になる。

 こうなると光の加減で浪打が目立ち、気になってしようがない。書き味重視の人には問題ないが、【見映え】重視の拙者には耐え難い。そこでカモメが目立たない程度にエラを張らせ、最後に耐水ペーパーと金磨き布でカモメ状態を消し去った。その結果としてペン先がますます柔らかくなった。


2007-09-01 072007-09-01 08 横顔は左のとおり。クーゲルは腹の部分を調整していない事が多く、それが【クーゲルらしい】独特の引っ掛かり感が残った書き味を演出している。

 ただし楽しめるのは大型のクーゲルニブの場合で、No.342程度のニブではどうしても多少立てて書く事になるので、あまり楽しめない。ペンを寝かせて書いてこそ楽しめる書き味なのでな。

 そこで今回は腹の部分を削り取って、最近あまりはやらない【ヌメヌメ調整】を施した。【ヌメヌメ調整】は調整界の【ヤマンバルーズソックス】のようなもので、根強いファンがいる。

 【ヌメヌメ調整】はともかく【ヤマンバルーズソックス】のいる街は【世界遺産】に登録したいほど好きなのじゃが・・・最近みかけんなぁ・・・



【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1h 調整2h 執筆1h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間 


これまでの調整記事

2007-08-29   Montblanc No.23246 ヘマタイト 18K-F 
2007-08-27   DELTA 20周年記念 18K-F

2007-08-25   Montblanc No.342 + No.252 そしてペン先曲がり
2007-08-22   Pelikan M1000 2.2B for 書家 
2007-08-20   Montblanc 60年代No.149 18C-M 尻軸不良
2007-08-18   Sheaffer Snorkel 金張 14K-EF
2007-08-15   Montblanc 60年代No.149 18C-OB  ハプニング! 
2007-08-13   Montblanc 70年代No.149 14C-EF → B
2007-08-11   Montblanc 70年代No.146 14C-EF from 岡山
2007-08-08   Montblanc 80年代No.146 14K-OB お好きに!
2007-08-06   Montblanc 50年代No.144-G 14C-EF
2007-08-04   Montblanc 50年代No.146 14C-M

2007-07-28   Platinum #3776 金魚 14K-太 
2007-07-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-EF ペン先交換
2007-07-23   Pelikan 100 14C-F 2本から一本を作る! 
2007-07-20   Pelikan M800用 14C O3B → 3B  & 鍍金
2007-07-18   Pelikan #520NN 14C-M
2007-07-16   コルクが劣化したMontblanc 50年代No.144 14C-M
2007-07-13   ペン先のひん曲がったPelikan M700 トレド 18C-BB
2007-07-11   ペン芯の折れたMontblanc 80年代 No.146 14C-EF
2007-07-09   Montblanc No.74 14C-F
2007-07-06   Pelikan 400 緑縞 14K-M
2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-01   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
2007-05-30   Pelikan 400 灰茶 14C-F 
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2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
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2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
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2007-04-30   Montblanc ヘミングウェイと同時期の No.146 14K-B 
2007-04-27   Montblanc 50年代 No.146 14C-B
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2007-04-20   Montblanc No.146 14K-BB TEST
2007-04-18   Montblanc 80年代 No.149 14K-B
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2007-04-09   Paker Sonnet F 遠隔調整
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2007-03-30   Pelikan M800 螺鈿 18C-B
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2007-03-12   Montblanc 60年代 No.149  14C-KBBB  
2007-03-09   Pelikan M800 18C-F
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Posted by pelikan_1931 at 09:09│Comments(9) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
榊主水しゃん

New149ですか・・・価格が上がっただけ・・・んあんてことでないのを祈ります。最近Montblancは情報発信をしないので、こういう情報は大助かりです。
Posted by pelikan_1931 at 2007年09月02日 15:51
stylustipしゃん

でかした! 証拠発見ですな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年09月02日 15:41
5
当時の金属技術と万年筆需要が合わさって「クーゲル」が生まれたと考えてよいのでしょうか。
均一な線幅と言うのは、研ぎを行わなければ考え付かないような気もします。

ところで、モンブランのブティックに今日行ってみたら「New149」なんて看板がかかってましたが、またどこか新しくなったのですかねえ?
見た目さっぱり違いがわかりませんでした(笑)
Posted by 榊 主水 at 2007年09月02日 02:00
pelikan緑本のニブの広告を見ていたら、
Kポイントの処ではギザギザ山形線の幅が均一でした。
師匠が仰るとおり均一な線幅を求めてのペンポイントだったのかも知れませんね。
Posted by stylustip at 2007年09月01日 22:32
Bromfield しゃん

通常はスチールニブの方が厚いので、金ペンではぐらぐらして書けないはずじゃ。
ただstylustipしゃんの言うように、運が良ければグラグラしないかもしれん。
Posted by pelikan_1931 at 2007年09月01日 21:55
stylustipしゃん

モンテローザも柔らかいですな。あの大きさが柔らかさを円質するには最高なのかもしれん。
大きなニブでは自分の体重を支えるためだけに厚くなってしまいそうじゃな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年09月01日 21:52
スチールと金とではニブの厚みが違うかも知れませんが、
ひょっとしたら可能かも知れません。
ここは先入観を棄てて深く考えずに、まず分解して確認してみましょう。

ニブが固定できてインクがボタ落ちしなければラッキー。
新たな発見があるかも知れません。
Posted by stylustip at 2007年09月01日 14:00
本当は質問コーナーの方がよいのかもしれませんが、342の話なので。

先日オークションで購入したのは342のスチールニブのものでした。そこで訳もわからず、342の金のMニブを別に購入したのですが、これは交換、装着可能なのでしょうか。もし偶然とはいえ「儚柔」が経験できたら最高に幸せなのですが。ちなみにスチールニブもペン芯はフラットフィードでした。
Posted by Bromfield at 2007年09月01日 10:12
是非当家に(^^;
準備万端整えてご縁があるのをお待ち申し上げておりまする。(^^;;;
実際342のニブは柔らかく、儚いですね。
低筆圧化矯正ギブスのようなニブだと思います。
Posted by stylustip at 2007年09月01日 09:20