今回の調整品は拙者の持ち物。購入してから長期間手が付けられなかった・・・筆記に使う万年筆に事欠いているわけではないし、他人用の調整の方がおもしろいので、ついつい後回しになりがち・・・・ 8月の夏休みに一挙に調整し終えた中の一本。
最近、だんだんと軽い万年筆が好きになってきている。元々はOMASのような大柄で軽い万年筆が好きだった。それがどんどん重い万年筆が好きになっていったが、取り回しが不便なため、50年代No.149を使って以降は、軽い万年筆に好みがシフトしてきている。
ただ軽いだけではだめで、ズッシリとしているけど、軽い・・・万年筆が好き!そう、このNo.144やNo.142のような比重の大きなものがマイブーム!
以前はNo.146とNo.142を集中的に購入していたのだが、そのあたりの相場が上がってしまったのと、飽きてきたので、現在ではNo.144。ま、どれにしても形状、重さとも相似形なので、違和感はない。
書き味はNo.25Xに代表されるイカペンのEFと、No.14XシリーズのBがお気に入り。書いているときに、脳の裏側を耳かきでほじってくれるような快感がある。ぬるぬるではなく、コリコリとか、シャラシャラという筆記音の方がより気持ちがよい。
実は筆記音というのは重要。試しに耳栓をして筆記してみるとよくわかる。音がしない筆記は拙者にとっては物足りない。従って自分用の調整は、最近ではヌルヌルとは無縁じゃ。
この1950年代No.144はインクを適度に入れた状態で24g強。大きさから考えると、かなり重いが、この重さがイイ!そしてM800よりはかなり軽い。軽くて重量感のある・・・何とも言えない良い気持ち!
購入段階ではスリットが詰まりすぎているのと、多少ペン先が首軸に入りすぎのようじゃ。
こちらが調整前の横顔。後期の厚いペン芯が付いている。見映えは圧倒的に前期のフラットフィードが良いのだが、インク漏れ対策などでは後期ペン芯の方がやはり優れている。また温度変化によるペン芯のゆがみも少ないので安心は安心。ただしペン先の微調整用にペン芯の方をお湯で曲げて・・・という際には非常に力がいる。フラットフィーダーならすぐに曲げられるが、厚いペン芯ではそうはいかない。ペン芯を削って微調整した方が曲げるより楽じゃな。
こちらはペン先のスリットを開いて、ペン芯とともにソケットに少しだけ押し込んだ状態。この状態でソケットを回す専用工具を使って首軸にソケットをねじ込んでいく。ピッタリとソケットが止まったら、ゴム板でペン先とペン芯を挟んで、適度な位置まで一気に押し込む。これがペン先とペン芯の位置関係を狂わせずに押し込む最良の方式じゃ。
こちらが押し込んだ状態。ペン先に文字が刻印されているペン先は可能な限りそれが読める状態にしておきたい。もちろん、ペン先がぐらつかないことが前提ではあるが。
【神は細部に宿る】というが、ペン先の拡大画像を見ていると時間のたつのを忘れてしまうほど美しい。
こちらは横顔。拙者の調整は少しペン芯からペン先が前に出すぎでは・・・という声が出る直前くらいにしている。通常よりはかなり前進させている。昔はペン芯とペン先が密着する面積が大きいほどインクフローが良いと考えていたが【萬年筆の科學】を読んでから気が変わった。
いまでは不安定がもたらす安定的なドキドキ感を求めて、危うい位置を割り出している。理屈ではなく直感でな。
Bとは言っても限りなくイタリックに近い筆記線を描いてくれるのがVintage Montblancの特徴。これがO3BやBBBになるとその傾向は助長される。
縦横同じ字巾が良ければクーゲルがある。ただ拙者は筆記体のアルファベットを書くのであれば、イタリック調整のニブから描き出される字の表情が好きじゃな。
【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1h 調整2h 執筆1h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間