今回紹介する部分は、普通の人にとてはちっともおもしろくないかもしれない。しかし、IT業界に関係のある人にとっては感慨深く、また、考えさせられる事が書いてある。
【匠の世界】を崩壊させたのは、汎用コンピュータではないか?
今回紹介する部分を読んで、漠然とそう感じてしまった。
まずは左上の頁から・・・
【Buchungsmachinen】を英語に訳せば【Accounting Machine】。これを日本語に訳しても【会計機】。なんのことやらさっぱりわからない。
この頁の中程にバローズとかオリベッティとかの社名があるので、それを手がかりにして検索してみたら、ここに行き当たった。還暦おやじの1963年頃の思い出し話。1963年といえば、このカタログが発行された年。
従って会計機とはここに紹介されている機械に間違いはない。そして、この機械用のリボンをPelikanは作っていた事になる。バローズは米国の会社、オリベッティは伊太利亜の会社じゃな。
ではどんな形状か?というのが上の真ん中の頁だが・・・よくわからんな・・・
会計機というからには、計算過程が印字されなければならないはず。それにしては長さが短いような気もするが・・・
右端は、個別企業用の会計機用リボンかもしれない。メルセデスやレミントンランド、トライアンフにツァイス・イコン・・・こういう会社が会計機を自社用に開発していたのか、リボンだけ専用幅だったのか・・・たしかに幅は微妙に違うようだがな。
それにしてもPelikanにカタログで、メルセデスやツァイス・イコンの名が出てくるとなんとなく嬉しい。 この段の左端は【Rechenmaschinen】で、英訳すれば【Calculaing Machine】、要するに計算機。上にでた会計機と違うところは、どこかな?会計機は貸方と借方を両方印刷してくれるのかな?どう考えてもメモリなどあるはずもなく、表計算は出来まい。早い話が印刷機の入力インターフェースが経理屋用に出来ているのが会計機で、単なる計算用が計算機なのだろう。建築計算などにも使えたのかな?とにかく計算のプロセスが印字されるのは便利だったろうな・・・
ここにもオリベッティとレミントンランドの社名を見かける。この手の計算機市場を席巻していたのかもしれない。
真ん中の頁には【Lochkartenmaschinen】用のリボンとの記述がある。英訳すれば【Punch card 機】。正式な呼び方は【パンチカードシステム】。となれば右端頁にあるとおり、IBMの独壇場。
【パンチカードシステム】は汎用コンピュータのはしりで、国勢調査や統計解析に使われた。カードから読み込んだデータで計算するのだが、長い計算になると途中結果をカードに打ち出しておいて、次回の計算の入力に使ったりした。
SORTが出来なければ国勢調査には使えなかっただろうから、SORT機能は付いていたと思われる。 パンチカードシステムの中で、レミントンランド社の名があり、その下に【Tabelliermaschinen】との説明がある。これは【作表機】と訳すのが適当だろうか?
IBMが汎用計算機にシフトしようとしていたころ、レミントンランドは表作成の専用機を作っていたことになる。
真ん中の頁は【Adressiermaschinen】で【宛名印刷機】と訳す。打ち込んだ名前をフォーマットしてタイプするだけなのか、一覧から選べば打てるのか、あるいは以前に打ったカードを入れれば、タイプしてくれるのか・・・?これの姿や仕組みを知りたいものじゃ。
右頁は【Registrierkassen】、いわゆる【キャッシュレジスター】。暗算が苦手な人にとっては救いの神だったはず。当時はこれがタイプライターの次に一般的な機械ではなかったのかな?
この9頁を眺めていると、それぞれの機械は(パンチカードシステムを除いて)単一目的で作られている。利用者が欲しい機能を組み込んだハードを作っていただけじゃ。だが計算機能、印刷機能などは備わっている。
そこから汎用コンピュターの発想が出てきたのだろう。今では宛名印刷も会計処理も、複雑な表計算もノートPCで出来る時代になった。
汎用コンピュータの良さは、ハードを変えなくてもソフトを変えれば多目的に使える事と聞いていた。ところが実際は・・・
ソフトが変わるとより高いCPUでないと稼働スピードが遅いので、PCの買い換えになる。
これなら専用機の方がずっと良いのでは?それに専用機からは匠の臭いがする。現代で生み出される機械の多くは、その開発コストの半分以上がソフト開発にかかっているらしい。
このソフトといわれるものが機械を味気なくしてしまった。ソフトの全くないニコンFに惹かれだしたのもそのせいかもしれない。メカの世界は匠の世界。そして萬年筆の世界も、いまのところ匠の世界。インクフロー自動制御機能なんてのが発明されたら・・・・そこからは【万年筆の終焉】へひた走ることじゃろう・・・
過去の【Pelikan 125 Jahre Katalog】
2007-09-11 Pelikan 125 Jahre Katalog その4
2007-09-04 Pelikan 125 Jahre Katalog その3
2007-08-28 Pelikan 125 Jahre Katalog その2
2007-08-21 Pelikan 125 Jahre Katalog その1