2007年09月19日

水曜日の調整報告 【 Montblanc 50年代 No.146 14C-KF キャップ交換 】

2007-09-19 01 今回の依頼はペン先調整ではない。ペン先調整自体は2007年6月4日に実施した。あまりにキャップが固いので何とかして欲しいというもの。

 1950年代のMontblanc No.14Xに使われているセルロイドは恐ろしく痩せる。特にキャップは凄い。キャップの口を鼻に当てると、樟脳の匂いがするものがあるが、それはまだ痩せ続けている証拠。

 痩せていく時に最初に出る症状は、キャップリングがくるくる回るようになること。最後にはキャップリングが脱落したりするほど痩せてしまう。

 キャップが固くなるのは、この中間ぐらいの時点じゃ。痩せると内側に向かって収縮するので、内径が狭くなってしまい、胴体のネジを捻るとき、キャップを押し広げながらねじ込むことになる。耐えられない堅さになってしまう。

 拙者も過去何度もそういう個体に出会ったが、どう対処したか?ひとことでいえば部品レベルにばらして再利用部品としたのじゃ。

 拙者は萬年筆は常に完璧な状態で使いたいと考えている。従ってキャップが橘井萬年筆を使っていると精神衛生上良くない。従って使わない・・・使えない状態にしてしまったのじゃ。

2007-09-19 02 一応ペン先を確認してみたが、6月4日の時点から調整が狂ってはいない。さすがに趣味の文具箱 Vol.8の121頁でMontblanc No.146を使った字を披露してるだけのことはある・・・・が、指導の先生を前にして、なをかつ写真を撮られながら、原稿用紙に向かって字を書くということから、多少は緊張していたのか、筆記角度が拙者のまえで書くときとは、全く違う。

 おそらくは書いている最中を撮影したのではなく、撮影のためにいったん筆記を止めて、文字が見えやすい角度にペンを捻ってから撮影したのではないかな?

2007-09-19 03 元々はKugelであるが、あまりKugel臭い調整にはしていない。普通に持って、普通に書けば、柔らかくてインクフローも良いな・・・という感じに仕上げている。

 Kugelらしい調整はNo.342程度の小さいニブの方がおもしろい。まるっきり性格の変わった萬年筆に変身する。No.146やNo.149におけるKugelはインクフロー向上ブースターのような感じかな?あくまでもオリジナルの味を生かした調整が拙者の目指すところじゃ!・・・もっとも、たまに変わるが・・・

2007-09-19 04 キャップを確認したところ、クラックが入っている。おそらくは痩せたキャップリップ(口)が、何度も軸で拡げられている内に、耐えきれなくなって割れたのであろう。

 この割れを修理することは出来る。しかしまたすぐに割れてしまうことは明白。そこでキャップ自体を交換することにした。幸い(上記の経緯から)部品はたくさんあるのでな。

2007-09-19 05 ただし天冠は委託品のキャップトップを有効利用することになった。ごらんのとおり、あまりに美しい飴色!これほど美しく変色することはあまりない。黄色が強すぎたり、白が強すぎたりで、本当の象牙色にはなかなか変色してくれない。

 この個体のキャップトップは完璧な象牙色。惚れ惚れするほど。これは外して再利用する事にした。

2007-09-19 06 こちらが痩せたキャップじゃ。画像の真ん中からやや右寄りの部分が内側にググッと痩せているのがわかろう。

 本当ならキャップ全体が痩せるのだが、インナーキャップがあれば、その部分は痩せず、結果として凸凹状態になってしまう。

2007-09-19 07 こちらが換え用のキャップ。何年も前に購入した1950年代 No.146から外して保存していた部品。前の図と比べれば痩せが明らかに少ない事があかろう。

 このキャップに、象牙色のホワイトスターマークが付いた天冠を取り付ければ理想通りの萬年筆になる。

2007-09-19 08 こちらが修理完了状態のNo.146。一番最初の画像では、キャップは・・・まるで胃腸障害で痩せてしまった人ようにキャップリングから左側がやせていた。それがちゃんとぽっちゃりとしたすてきなボディラインに戻った!


【 今回執筆時間:2.5時間 】 画像準備1h 調整0.5h 執筆1h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間


【これまでの調整記事】

2007-09-17   万年筆博士 水牛軸 14K-HM 曲げ戻し 
2007-09-15   Senator President 14C-B 交換後 

2007-09-12   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thin 
2007-09-10   Pelikan ナイアガラ 18C-B 交換後  
2007-09-08   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thick
2007-09-05   Montblanc 50年代No.144 14C-B 
2007-09-03   Montblanc 80年代No.146 14K-EF ペン先曲がり 
2007-09-01   Montblanc No.342 14C-KM 

2007-08-29   Montblanc No.23246 ヘマタイト 18K-F 
2007-08-27   DELTA 20周年記念 18K-F
2007-08-25   Montblanc No.342 + No.252 そしてペン先曲がり
2007-08-22   Pelikan M1000 2.2B for 書家 
2007-08-20   Montblanc 60年代No.149 18C-M 尻軸不良
2007-08-18   Sheaffer Snorkel 金張 14K-EF
2007-08-15   Montblanc 60年代No.149 18C-OB  ハプニング! 
2007-08-13   Montblanc 70年代No.149 14C-EF → B
2007-08-11   Montblanc 70年代No.146 14C-EF from 岡山
2007-08-08   Montblanc 80年代No.146 14K-OB お好きに!
2007-08-06   Montblanc 50年代No.144-G 14C-EF
2007-08-04   Montblanc 50年代No.146 14C-M

2007-07-28   Platinum #3776 金魚 14K-太 
2007-07-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-EF ペン先交換
2007-07-23   Pelikan 100 14C-F 2本から一本を作る! 
2007-07-20   Pelikan M800用 14C O3B → 3B  & 鍍金
2007-07-18   Pelikan #520NN 14C-M
2007-07-16   コルクが劣化したMontblanc 50年代No.144 14C-M
2007-07-13   ペン先のひん曲がったPelikan M700 トレド 18C-BB
2007-07-11   ペン芯の折れたMontblanc 80年代 No.146 14C-EF
2007-07-09   Montblanc No.74 14C-F
2007-07-06   Pelikan 400 緑縞 14K-M
2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-01   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
2007-05-30   Pelikan 400 灰茶 14C-F 
2007-05-28   Montblanc No.1468 18K-OBB
2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
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2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル
2007-04-30   Montblanc ヘミングウェイと同時期の No.146 14K-B 
2007-04-27   Montblanc 50年代 No.146 14C-B
2007-04-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-B
2007-04-23   Montblanc No.134 スチール-BB 
2007-04-20   Montblanc No.146 14K-BB TEST
2007-04-18   Montblanc 80年代 No.149 14K-B
2007-04-16   Montblanc 70年代 No.149 14C-EF ああ無残・・・ 
2007-04-13   Montblanc 80年代 No.149 14K-BB
2007-04-11   Montblanc 50年代 No.146 14C-KEF 軸削り
2007-04-09   Paker Sonnet F 遠隔調整
2007-04-06   Montblanc No.94 18C-F
2007-04-04   セーラー 初代キングプロフィット 21K-B
2007-04-02   Pelikan #600 18C-B 軸折修理


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Blog紹介 
この記事へのコメント
penroseしゃん

No.256は金属の部品が中に入っている。従って痩せようにもじゃまされて痩せられない。
それで軸にクラックが入ってしまうのじゃ。時間がたてば100%クラックが入ると考えて良い。
Posted by pelikan_1931 at 2007年09月20日 22:07
師匠
自分の146のキャップが何でデコボコになってリングがくるくる回るのかわかりました。
 256のキャップはデコボコになってないのですがほぼ同じ年代だと思うのですがなぜでしょうか。
 細い上下のリングは遅乾性の接着剤で固めたので太い真ん中のリングは師匠のゆるみ止めを試してみます。
Posted by penrose at 2007年09月20日 11:04