
ここに来るまでにはストーリーがあったようじゃ。依頼人はクライアントと萬年筆の話で盛り上がり、相手のNo.146を見せてもらった。最近インクが詰まって出ない・・・とか。
【それならWAGNERでちょちょいのちょいでさぁ・・・】と安請け合いして定例会に持ち込んだ。
最初はらすとるむしゃんが、時計用のトンカチでコツコツと叩いてペン芯を胴軸からたたき出そうとしていたが、ビクともしない。
もう定例会終了時間も近づいている・・・そこで拙者が奪い取って、ノックアウトブロックの上で、ハンマーで叩くようにガツン!ガツン!ガツン!とやったら、ペン芯は見事に抜けた!
でノックアウトブロックを持ち上げると、軸がハラハラと3分割した。インクが固まってペン芯と首軸が一体化したようになっていたのじゃ。

修理品が持ち込まれるとは考えていない。持ち込まれるのはあくまでも【生贄】。似て食おうが焼いて食おうが拙者の勝手なのじゃ。それにしても固かった!

スリットが詰まっていて、インクがとても出るように思われない。インクフローを悪くして極細字を実現しているのだが、それにしても詰まりすぎ!

そして裏側から見るとペン先のスリットの詰まり具合がよくわかる。隙間は・・・ハート穴以外は全くない・・・これではツケペンに近い状態ではなかったかな?

拙者はこの金一色の14Kニブのデザインがシンプルで好きじゃ。特にペン先両側のスロープの美しさはNo.149開高健モデルに匹敵する!コストカット穴のないペン先もちょっとした優越感を持たせてくれる。


もう捨てよう!と思うほど酷い萬年筆であっても、部品にばらせば使える部分も多いので、大切にな!【WAGNER】に持ち込んで、部品提供してもらえれば将来誰かの萬年筆の一部として再利用されるじゃろう。お待ちしていますぞ。


持ち主は萬年筆が好きじゃ。ということはこの萬年筆が手に渡ると狂喜乱舞して、こればかり使うようになる。時間に追われる商売なので、たまには筆圧が高くなってしまう事も多いはず。気になるのはペン芯とペン先の間でのインク切れ・・・
従って多少筆圧がかかってもインク供給が安定した萬年筆にしなければならない。妥協点がこのペン先とペン芯の位置関係なのじゃ。

従ってペンポイントは大きいが字巾は狭く、インクフローが悪い。こういうペンは筆圧を上げがちで好ましくない。今回はスリットを拡げたのでインクフローは良いのだが、書き味は今一歩。
これは鉈の先端が鋭利に尖っており、書くに際してその先端部がたまに紙の繊維を拾ってしまうのじゃ。人間緊張したり、あせったりするとペンが立ち気味になる。その時にひっかかるのじゃ。

今回執筆時間:7時間 】 画像準備2h 調整3h 執筆2h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間