2007年09月29日

土曜日の調整報告 【 吸い込まれるような透明軸 Chronoswiss 】

2007-09-29 01 今回の依頼品はChronoswissの萬年筆。制作したのはPelikan社。Chronoswissは下記のとおり日本語のHPも持つ独逸の時計メーカーで、Montblancの腕時計よりは高価だと思う。

 時計メーカーが萬年筆で儲けようとは思わないはずなので、ひょっとすると時計のおまけとして作られたものかな?

http://www.chronoswiss-japan.com/jpn/


2007-09-29 02 この萬年筆はスケルトン仕様で、ニブが2個付いている。このあたりが実におもしろい。

 企
画した人間はPelikanファンだと断言できる。もし拙者がChronoswiss社から企画を任されたら、スケルトン、交換ニブ付きというところまでは同じ事をする。そこから先のデザインはさすがChronoswiss!時計のモチーフをクリップやリングなどに巧みに利用している。

 拙者は昔、銀座にあったEbelのブティックで、Ebelという時計メーカーのロゴが付いた箱に入ったPelikanの萬年筆を買ったことがある。中身はM710そのまんま。Ebelのロゴがついているのは木製の箱の内側だけ。それでも購入したのは、アメ横でM710を買うよりも安かったから・・・。そうEbelブランドのM710の定価の方が、Pelikan M710の4割引より安かったのじゃ。こういう事があるからブティック巡回はやめられない。

2007-09-29 03 このChronoswissはeBayで何度か見た記憶があるが、毎回通常ニブとオブリークニブの組み合わせだったような気がする。MとBという理想的な組み合わせの物には初めて出会った。

 依頼内容は例によってインクフローの改善じゃ。今回の場合、ペン先とペン芯の位置関係は変更しなかった。Chronoswissの企画者が【万年筆ファン】と感じたので、彼または彼女の意志を尊重した。それに拙者の理想の状態とそれほど違わない状態に
セットされているし・・・

 ただしインクフローについては調整しないと使えるレベルではないので若干スリットを拡げておいた。

2007-09-29 04 こちらはM付きのペン先ユニット。ソケットの中央にポチっとした凹型のへこみがある。ここにペン先の太さの部分を合わせるのか!そこまでこだわってこそ時計メーカー!さすが! と感心したのじゃが・・・

2007-09-29 05 Bのペン先を見たら位置はズレている。しかもズレた位置が正しい。拙者の買いかぶりだったらしい・・・

 実はPelikanのソケットにはペン芯の突起物を収納する穴が2ヵ所ある。そこの穴にペン芯を併せて押し込むので、必然的にペン先とペン芯の位置は固定的になってしまう。

 萬年筆専門店の中には、萬年筆としての機能に関係のない、ペン芯の突起物を最初から折ってしまう店もある。またノックアウトブロックで抜く場合、誤って突起物を折ってしまうこともある。

 拙者はオリジナル性を重んじるので突起物が折れないようにするプロテクターを自作した上で、ノックアウトブロックを使っている。

2007-09-29 06 今回の調整で拙者がやったことは、スリットを多少拡げることと、依頼者の筆記角度で書いたときに、書き始めに掠れる確率を下げるためのおまじないをするだけじゃ。要するに多少研磨している。

 今回はポリエチレングリコール(PEG)水溶液には浸していないので、もし書き出しでインクが掠れる事が頻発すれば、PEGを試してみると良いじゃろう。Pelikan製のペン芯にPEGが効果があるかどうかは疑問だがな・・・

2007-09-29 07 上の写真が調整後のMのペン先、左が調整後のBのペン先じゃ。いずれも依頼者の書き癖に合わせて先端部のエッジを多少丸めてある。こうすれば筆記角度が変化する場合でも許容範囲が広い。

 今回の依頼者は、将来筆記角度が可変方向に振れそうな予感がするのでこういう措置をとった。かなりバランスが偏った限定品を好んで使う人は、筆記角度が徐々に変化していく傾向が強いのじゃ。

2007-09-29 08 ペン先とペン信夫位置関係はなかなか良い。敢えて外してペン芯を痛める必要もあるまい。

 スケルトン萬年筆にはインクを入れない主義の拙者には、とてもこの萬年筆を使う勇気はないが、依頼者は使っているのかなぁ・・・ものすごく仕上がりが美しい萬年筆なので、軸と同じ色のインクを使わないと見苦しくなりそうじゃ・・・

 もしペン!ペン!ペン!ファウンテンペン!の続編が出来るなら、ぜひ載せてもらいたい一本じゃ。

私がもったいなくて使えないこの一本


今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 調整1h 執筆1h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間

 


【これまでの調整記事】

2007-09-26   Montblanc 80年代 No.146 14K-EF 胴軸交換
2007-09-24   20年間酷使した Pelikan M800の復活 
2007-09-22   女王からの依頼 : ペン先の無いセルロイド軸 
2007-09-19   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF キャップ交換

2007-09-17   万年筆博士 水牛軸 14K-HM 曲げ戻し 
2007-09-15   Senator President 14C-B 交換後 

2007-09-12   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thin 
2007-09-10   Pelikan ナイアガラ 18C-B 交換後  
2007-09-08   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thick
2007-09-05   Montblanc 50年代No.144 14C-B 
2007-09-03   Montblanc 80年代No.146 14K-EF ペン先曲がり 
2007-09-01   Montblanc No.342 14C-KM 

2007-08-29   Montblanc No.23246 ヘマタイト 18K-F 
2007-08-27   DELTA 20周年記念 18K-F
2007-08-25   Montblanc No.342 + No.252 そしてペン先曲がり
2007-08-22   Pelikan M1000 2.2B for 書家 
2007-08-20   Montblanc 60年代No.149 18C-M 尻軸不良
2007-08-18   Sheaffer Snorkel 金張 14K-EF
2007-08-15   Montblanc 60年代No.149 18C-OB  ハプニング! 
2007-08-13   Montblanc 70年代No.149 14C-EF → B
2007-08-11   Montblanc 70年代No.146 14C-EF from 岡山
2007-08-08   Montblanc 80年代No.146 14K-OB お好きに!
2007-08-06   Montblanc 50年代No.144-G 14C-EF
2007-08-04   Montblanc 50年代No.146 14C-M

2007-07-28   Platinum #3776 金魚 14K-太 
2007-07-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-EF ペン先交換
2007-07-23   Pelikan 100 14C-F 2本から一本を作る! 
2007-07-20   Pelikan M800用 14C O3B → 3B  & 鍍金
2007-07-18   Pelikan #520NN 14C-M
2007-07-16   コルクが劣化したMontblanc 50年代No.144 14C-M
2007-07-13   ペン先のひん曲がったPelikan M700 トレド 18C-BB
2007-07-11   ペン芯の折れたMontblanc 80年代 No.146 14C-EF
2007-07-09   Montblanc No.74 14C-F
2007-07-06   Pelikan 400 緑縞 14K-M
2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-01   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
2007-05-30   Pelikan 400 灰茶 14C-F 
2007-05-28   Montblanc No.1468 18K-OBB
2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル

Posted by pelikan_1931 at 10:10│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
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使うのがもったいないですか〜。○| ̄|_
すみません。<m(__)m>ガンガン使ってま〜す。やってはいけない行為でしょうか。
インクは、軸色に合わせ、ペリカングリーンを使っております。インクの色そのものは派手過ぎて、余り好みではないのですが。
師匠のおっしゃる通り、書き出しでの掠れが気になっており、調整願おうかと思っておりましたが、しばらく使った今は、調子よくなってきましたので、様子見と言う事に致します。
Posted by b787 at 2007年10月02日 18:01
 私の場合、「もったいなくて使えない、これらの120本」となりそうです。
Posted by monolith6 at 2007年10月01日 12:49