2007年10月01日

月曜日の調整報告 【 Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 】

2007-10-01 01  今回の依頼品はParker 75のレッドラッカーモデル。Parker 75の首軸先端の金属部分は純銀であったり、アルミニウム合金だったりして、インクに冒されやすいのが弱点だったらしい。

 それを何とかしようと、金鍍金にしたのがこのモデル。この後のモデルではプラスティックに金の細いリングだけになっている。またペン芯の構造も変わってしまった。従って従来からのペン先を流用できる最後のParker 75がこれじゃ。

 Parker 75で最も優れているのは、キャップが【パチン!】と締まる感触。今まで25年ほど萬年筆を使っているが、いまだParker 75以上の感触のものに出会った事はない。

 同じような形状でもParker プリミア・コレクションは【プスン・・・】という音で締まり、なんとも気持ち悪い。【パチン!】と締まるParker 75はこれだけで評価出来
る!プリミアがParker 75の後継になれなかったのは、キャップの感触が原因だったのかもしれない。首軸の材質にも大いに問題はあったが。

2007-10-01 02 依頼内容はインクフローと書き味の改善。ペン先を見ると確かにスリットは詰まっている。しかもギチギチに詰まっている。これでは相当筆圧をかけないとインクは出ない。

 日本ではXFParkerSheafferEFと呼ばずXFと表記〕が最も売れたようだが、拙者は大嫌い!今までに何個XFニブを机にたたきつけた事か・・・

 Parker 75は、ペン芯からペン先を外せばスリット調整は容易だが、外すときにペン芯とペン先に傷が付いてしまう。これがイヤで最近は絶対にペン芯からペン先を外さないようにしている。


2007-10-01 032007-10-01 04 ペン芯はプリミアに使われているのと同じ凹凸の多いタイプになっている。このタイプになってからインクの出が絞られたような気がしている。気のせいかもしれないが・・・

 ペン芯のインク保持能力が向上したので、逆にインクフローを抑え気味にしてあるのかもしれない。どうもXFやFではしっくりこない。

  ペン先はフランス製の14金ペン先。元々ゴリゴリした書き味がParker 75の細字の書き味。嵌るとほかの萬年筆に見向きもしなくなるほど。拙者も一時そういう時が合った。ただしXFとは相性が悪かった。嵌ったのはM以上だけ。

2007-10-01 05 しばらく格闘してみたが、どうやってもXFのニブで依頼者が望むインクフローと書き味を出すのは無理と判断して、ペン先交換することにした。M以上は全てコレクション品に付いているので外せないが、Fであればごろごろと代替品が部品箱に転がっている。


2007-10-01 072007-10-01 06 そこでインクフローが良い頃の裏がツルツルのペン芯付きのFニブでフランス製というのを引っ張り出してきた。

 XFと比べればかなり大きなペンポイントの上、スリットもそれほど詰まっていない。これを素材として依頼者の好む筆記角度に調整を施した。

 元々Sheaffer好きな依頼者ゆえ、筆記中に必要以上にしならない書き味が好み。従ってインクフローが良く、引っ掛かりさえなければParker 75はSheafferに負けない書き味を提供してくれる。

2007-10-01 08 ただし、左のコンバーターを長時間使っているとインクが出なくなることがある。ずっとペン先を下に向けて書いていると、コンバーターの中の玉がインクの流れを阻害してインクがストップする事がまれにある。コンバーターを下に向けてスライドを下に下ろそうとすると玉が固定されてしまう事も・・・・

2007-10-01 09 そこで中押し式コンバーターと交換することにした。これは松江の中屋万年筆店で分けてもらったものじゃ。このコンバーターはインク保持量が見えないという欠点はあるものの、昔ながらの質感が実によい。

2007-10-01 10 首軸に突っ込む部分を見るとちゃんと滑り止めのギザギザが付いている。こういう細やかな心配りが、コストカットの流れのなかで消えていくのが悲しい。

 古き良き時代の米国の誇りがコンバーターの中押し金属の部分の刻印に見ることが出来る。【PARKER U.S.A.】良い響きじゃ!


今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 調整1h 執筆1h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間


【これまでの調整記事】

2007-09-29   吸い込まれるような透明軸 Chronoswiss
2007-09-26   Montblanc 80年代 No.146 14K-EF 胴軸交換

2007-09-24   20年間酷使した Pelikan M800の復活 
2007-09-22   女王からの依頼 : ペン先の無いセルロイド軸 
2007-09-19   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF キャップ交換

2007-09-17   万年筆博士 水牛軸 14K-HM 曲げ戻し 
2007-09-15   Senator President 14C-B 交換後 

2007-09-12   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thin 
2007-09-10   Pelikan ナイアガラ 18C-B 交換後  
2007-09-08   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thick
2007-09-05   Montblanc 50年代No.144 14C-B 
2007-09-03   Montblanc 80年代No.146 14K-EF ペン先曲がり 
2007-09-01   Montblanc No.342 14C-KM 

2007-08-29   Montblanc No.23246 ヘマタイト 18K-F 
2007-08-27   DELTA 20周年記念 18K-F
2007-08-25   Montblanc No.342 + No.252 そしてペン先曲がり
2007-08-22   Pelikan M1000 2.2B for 書家 
2007-08-20   Montblanc 60年代No.149 18C-M 尻軸不良
2007-08-18   Sheaffer Snorkel 金張 14K-EF
2007-08-15   Montblanc 60年代No.149 18C-OB  ハプニング! 
2007-08-13   Montblanc 70年代No.149 14C-EF → B
2007-08-11   Montblanc 70年代No.146 14C-EF from 岡山
2007-08-08   Montblanc 80年代No.146 14K-OB お好きに!
2007-08-06   Montblanc 50年代No.144-G 14C-EF
2007-08-04   Montblanc 50年代No.146 14C-M

2007-07-28   Platinum #3776 金魚 14K-太 
2007-07-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-EF ペン先交換
2007-07-23   Pelikan 100 14C-F 2本から一本を作る! 
2007-07-20   Pelikan M800用 14C O3B → 3B  & 鍍金
2007-07-18   Pelikan #520NN 14C-M
2007-07-16   コルクが劣化したMontblanc 50年代No.144 14C-M
2007-07-13   ペン先のひん曲がったPelikan M700 トレド 18C-BB
2007-07-11   ペン芯の折れたMontblanc 80年代 No.146 14C-EF
2007-07-09   Montblanc No.74 14C-F
2007-07-06   Pelikan 400 緑縞 14K-M
2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-01   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
2007-05-30   Pelikan 400 灰茶 14C-F 
2007-05-28   Montblanc No.1468 18K-OBB
2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル

Posted by pelikan_1931 at 06:00│Comments(8) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
カメさん

Parker 75であれば、新品同様の中古でも1万円くらいで入手可能ですが、
修理するとなると、首軸が5000円(米国からの送料抜き)、ペン先単体で100ドル程度かかります。
曲がったペン先を直すのは非常に難しいので、普通は受けてはくれないでしょう。
萬年筆研究会【WAGNER】に持ち込めば、曲がり程度なら直りますが、参加費(2回分)を考えれば、中古購入よりも高くなります。

遺品を直して使いたい・・・というような明確な目標が無いのなら修理はやめておいた方が良いでしょう。
Posted by pelikan_1931 at 2015年05月28日 21:00
コメント失礼します
今日初めてこのページを見ました
実はパーカー75と思われる万年筆を持っているのですがペン先を曲げてしまったり、ペン先のすぐ上についてる金色のリングが一部取れてしまったりと修理が必要な箇所が何ヵ所かあります。
パーカーにメールで修理が可能か聞いてみたところ部品がなく修理ができないとのことでした。
そんなときにこのページを見つけ、もしかしたら修理が可能かもしれないとコメントいたしました。
このコメント欄で修理を依頼することは可能なのでしょうか?
またいくらほどで修理してもらうことが出来るのでしょうか?

もし修理を依頼するようなところなのでなければ申し訳ございません
Posted by カメ at 2015年05月28日 00:27
丸刈太しゃん

デラックス漆は試筆したことしかないが、かなり柔らかいペン先ではなかったかな?
Posted by pelikan_1931 at 2007年10月11日 00:12
こんにちは。4本爪のクラッチスプリングと首軸のくびれが「パチン」を
演出していますね。後期のプラスチック製クラッチでは今ひとつです。
このクラッチの摩耗やへたり、破損が泣き所ではありますが。

パイロット「デラックス漆」のキャップかみ合いも好きです。
Parker75よりずっと剛直で、「バッチン!」という感触で収まります。
Posted by 丸刈太 at 2007年10月10日 13:11
みーにゃしゃん

ほかに眠っているのはありませんかな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年10月02日 20:07
monolith6しゃん

やはりそうであったか・・・
スライド式コンバーターは便利なのだがなぁ・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年10月02日 20:06
ありがとうございます〜!
ペン先ごと交換して、コンバーターまで…お手数をおかけしました。

ストレスのないものに仕上がっていて、ずっと使ってみたかった、パーカーのペンマンインク サファイアを入れてみました。
滑らかにかけて、インクの濃淡もちゃんと出て感激でした♪
ありがとうございます。

キャップのパチン感、いいですよね。
こんな気持いい閉まり方なら、他の万年筆もネジ式から全部このパチン!に変えたいくらいです。

この万年筆は実家に眠っていたもので、やっと日の目を見ることができました。感謝です。

Posted by みーにゃ at 2007年10月02日 00:15
 見識お見事です。75のペン芯はご指摘のとおり、XFニブ用のそれと、F用のそれとでは同じプラスティックでも時期が違います。F用の方が古く、XF用の方が新しいものです。そして新しくなって以降、フローが渋くなり、かつ、経年変化によってペン芯の先がお辞儀するようになってきます。古い方には余りこのような現象は見受けられません。

 更にコンヴァータについてもご指摘のとおりで、スライド式で吸入するとインクの棚吊り現象が起き、フローも良くありません。
Posted by monolith6 at 2007年10月01日 12:43