今回の依頼品はMontblanc No.146の純銀モデル。純銀モデルにはライン模様のNo.1468とバーレイ模様のNo.1466とがある。紹介するのはNo.1466の方。
その昔、カタログを眺めてはため息をついていたころ、No.1466にはまったく興味がなかった。No.1468の滑らかなラインが好きだったのと、バーレイ模様は銀が変色した場合、銀磨き布で磨いても綺麗にならないのではないかという漠然とした不安があったからじゃ。
そういえばキャップも軸も純銀のNo.146Xは拙者の萬年筆人生のなかで購入したことは一度もない。持ってはいるが、これは交換で手に入れたもの。
一度チャンスはあった。まだeBayに9600bpsの電話回線で入っていたころ・・・
No.1468の素通しインク窓、エボペン芯、18Cニブ、Mint、Bニブ付きというのが出ていた。300ドルで終了一分前。当時の伝送速度であれば。30秒前にLast Bidのチャンスがある。そこで500ドルBidの準備をしておいて午前3時頃、【今じゃ!】とばかりに、当時のコンパックのデスクトップPC (OS:Windows 95)のキーボードを叩いたら、フリーズした・・・結局300ドルのままオークションは終わった・・・
次の日、ポチっと押したのは萬年筆ではなく、IBMのハイエンド・デスクトップ・パソコンじゃった・・・このパソコンもWindows Meの時代にたたき壊された・・・
拙者がパソコンを買いかえたのは? ・・・ それはオークションで非常に悔しい負け方をしたとき・・・。最近は達観してきたのでそういう事はない。単なる目移りじゃ・・・
Windows XPの販売期間が6ヶ月延長になったので、もうしばらくはPCを買わなくてすみそう。もっとも先月娘に買い与えたWide液晶のPCは6万円以下。拙者の萬年筆のコレクションの一本当たりの平均価格よりも安い。それなのに何故かPCにお金を払うのは腹立たしい・・・不思議じゃ・・・
こちらがペン先の状況。スキャナーの動く方向にペンを置き、ペン先を左向きにした時の画像が左側で、右向きに置いたときの画像が右側。陰の出方やコントラストが微妙に違うのがわかろう。斜めに置くとまた違った見え方をする。こういう画像を何枚も比較しながらBlogに掲示する1枚を選んでいるので、準備に異様に時間がかかってしまうのじゃ。
この個体もペン先のスリットが詰まりすぎている。依頼者は太字、極太のペン先はたくさん保持しているので、今回はインクフローがドバドバではない普通の中字【M】に調整してみた。
それがこの状態。ほんの少しだけスリットを開いた上で、依頼者の筆記角度に合わせて、ペンポイントをごくわずかに研磨してある。
接紙面を平面に研ぐとドバドバのインクフローとヌラヌラの書き味になってしまうので、多少その傾向を押さえた研ぎにした。
ストライプのインク窓であるが、ありがたいことにエボナイト製ペン芯がついている。インク窓がストライプになって以降もしばらくはエボナイト製ペン芯付モデルも売られていたので、オークション等で入手される場合は、ペン芯画像にも注意する事じゃ。
もっともペン芯の材質の違いによるインクフローの差は、スリット幅調整による差の10%以下。材質を変えるより、調整を変える方がはるかに効果が高い。
そして今回の目玉は、胴体を【いぶし銀】化したこと。【生贄】とか【献体】という形で持ち込まれた萬年筆は、調整時に拙者の好きなように改造する事がある。
これまでにもParker 75やPilot シルバーンの石垣でも純銀軸をいぶし銀化はしてきており、拙者も仕上がり具合に対する想像はついていた。最高!とは言えないまでも、なかなかおもしろいね!という評価はいただけるとの確信はあった。
出来上がった物を見て、息を飲んだ・・・すばらしい!純銀バーレイ軸をいぶし銀化すると、これほど美しくなるとは!予想を遙かに超えた美しさじゃ!
これがライン模様のNo.1468であれば、ここまでにはならなかったはず。ラインのなかの平面部分に斑が出来ていたであろう。
いぶし銀は平面のない細かい模様を持つ純銀軸の上でこそ美しい!とわかった記念すべき一本!
大成功じゃ!
今回執筆時間:5時間 】 画像準備2h 調整2h 執筆1h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間