2007年10月03日

水曜日の調整報告 【 Montblanc No.1466 14K-M いぶし銀 】

2007-10-03 01 今回の依頼品はMontblanc No.146の純銀モデル。純銀モデルにはライン模様のNo.1468とバーレイ模様のNo.1466とがある。紹介するのはNo.1466の方。

2007-10-03 02 その昔、カタログを眺めてはため息をついていたころ、No.1466にはまったく興味がなかった。No.1468の滑らかなラインが好きだったのと、バーレイ模様は銀が変色した場合、銀磨き布で磨いても綺麗にならないのではないかという漠然とした不安があったからじゃ。

 そういえばキャップも軸も純銀のNo.146Xは拙者の萬年筆人生のなかで購入したことは一度もない。持ってはいるが、これは交換で手に入れたもの。

 一度チャンスはあった。まだeBayに9600bpsの電話回線で入っていたころ・・・

 No.1468の素通しインク窓、エボペン芯、18Cニブ、Mint、Bニブ付きというのが出ていた。300ドルで終了一分前。当時の伝送速度であれば。30秒前にLast Bidのチャンスがある。そこで500ドルBidの準備をしておいて午前3時頃、【今じゃ!】とばかりに、当時のコンパックのデスクトップPC (OS:Windows 95)のキーボードを叩いたら、フリーズした・・・結局300ドルのままオークションは終わった・・・

 次の日、ポチっと押したのは萬年筆ではなく、IBMのハイエンド・デスクトップ・パソコンじゃった・・・このパソコンもWindows Meの時代にたたき壊された・・・

 拙者がパソコンを買いかえたのは? ・・・ それはオークションで非常に悔しい負け方をしたとき・・・。最近は達観してきたのでそういう事はない。単なる目移りじゃ・・・

 Windows XPの販売期間が6ヶ月延長になったので、もうしばらくはPCを買わなくてすみそう。もっとも先月娘に買い与えたWide液晶のPCは6万円以下。拙者の萬年筆のコレクションの一本当たりの平均価格よりも安い。それなのに何故かPCにお金を払うのは腹立たしい・・・不思議じゃ・・・

2007-10-03 03 こちらがペン先の状況。スキャナーの動く方向にペンを置き、ペン先を左向きにした時の画像が左側で、右向きに置いたときの画像が右側。陰の出方やコントラストが微妙に違うのがわかろう。斜めに置くとまた違った見え方をする。こういう画像を何枚も比較しながらBlogに掲示する1枚を選んでいるので、準備に異様に時間がかかってしまうのじゃ。

 この個体もペン先のスリットが詰まりすぎている。依頼者は太字、極太のペン先はたくさん保持しているので、今回はインクフローがドバドバではない普通の中字【M】に調整してみた。


2007-10-03 04 それがこの状態。ほんの少しだけスリットを開いた上で、依頼者の筆記角度に合わせて、ペンポイントをごくわずかに研磨してある。

 接紙面を平面に研ぐとドバドバのインクフローとヌラヌラの書き味になってしまうので、多少その傾向を押さえた研ぎにした。

2007-10-03 05 ストライプのインク窓であるが、ありがたいことにエボナイト製ペン芯がついている。インク窓がストライプになって以降もしばらくはエボナイト製ペン芯付モデルも売られていたので、オークション等で入手される場合は、ペン芯画像にも注意する事じゃ。

 もっともペン芯の材質の違いによるインクフローの差は、スリット幅調整による差の10%以下。材質を変えるより、調整を変える方がはるかに効果が高い。

2007-10-03 06 そして今回の目玉は、胴体を【いぶし銀】化したこと。【生贄】とか【献体】という形で持ち込まれた萬年筆は、調整時に拙者の好きなように改造する事がある。

 これまでにもParker 75やPilot シルバーンの石垣でも純銀軸をいぶし銀化はしてきており、拙者も仕上がり具合に対する想像はついていた。最高!とは言えないまでも、なかなかおもしろいね!という評価はいただけるとの確信はあった。

2007-10-03 07 出来上がった物を見て、息を飲んだ・・・すばらしい!純銀バーレイ軸をいぶし銀化すると、これほど美しくなるとは!予想を遙かに超えた美しさじゃ!

 これがライン模様のNo.1468であれば、ここまでにはならなかったはず。ラインのなかの平面部分に斑が出来ていたであろう。

 いぶし銀は平面のない細かい模様を持つ純銀軸の上でこそ美しい!とわかった記念すべき一本!

 大成功じゃ!



今回執筆時間:5時間 】 画像準備2h 調整2h 執筆1h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間


【これまでの調整記事】

2007-10-01   Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 
2007-09-29   吸い込まれるような透明軸 Chronoswiss

2007-09-26   Montblanc 80年代 No.146 14K-EF 胴軸交換

2007-09-24   20年間酷使した Pelikan M800の復活 
2007-09-22   女王からの依頼 : ペン先の無いセルロイド軸 
2007-09-19   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF キャップ交換

2007-09-17   万年筆博士 水牛軸 14K-HM 曲げ戻し 
2007-09-15   Senator President 14C-B 交換後 

2007-09-12   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thin 
2007-09-10   Pelikan ナイアガラ 18C-B 交換後  
2007-09-08   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thick
2007-09-05   Montblanc 50年代No.144 14C-B 
2007-09-03   Montblanc 80年代No.146 14K-EF ペン先曲がり 
2007-09-01   Montblanc No.342 14C-KM 

2007-08-29   Montblanc No.23246 ヘマタイト 18K-F 
2007-08-27   DELTA 20周年記念 18K-F
2007-08-25   Montblanc No.342 + No.252 そしてペン先曲がり
2007-08-22   Pelikan M1000 2.2B for 書家 
2007-08-20   Montblanc 60年代No.149 18C-M 尻軸不良
2007-08-18   Sheaffer Snorkel 金張 14K-EF
2007-08-15   Montblanc 60年代No.149 18C-OB  ハプニング! 
2007-08-13   Montblanc 70年代No.149 14C-EF → B
2007-08-11   Montblanc 70年代No.146 14C-EF from 岡山
2007-08-08   Montblanc 80年代No.146 14K-OB お好きに!
2007-08-06   Montblanc 50年代No.144-G 14C-EF
2007-08-04   Montblanc 50年代No.146 14C-M

2007-07-28   Platinum #3776 金魚 14K-太 
2007-07-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-EF ペン先交換
2007-07-23   Pelikan 100 14C-F 2本から一本を作る! 
2007-07-20   Pelikan M800用 14C O3B → 3B  & 鍍金
2007-07-18   Pelikan #520NN 14C-M
2007-07-16   コルクが劣化したMontblanc 50年代No.144 14C-M
2007-07-13   ペン先のひん曲がったPelikan M700 トレド 18C-BB
2007-07-11   ペン芯の折れたMontblanc 80年代 No.146 14C-EF
2007-07-09   Montblanc No.74 14C-F
2007-07-06   Pelikan 400 緑縞 14K-M
2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-01   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
2007-05-30   Pelikan 400 灰茶 14C-F 
2007-05-28   Montblanc No.1468 18K-OBB
2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
絶対に断れないように、言葉巧みに言い寄ったのじゃが・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年10月03日 21:41
ブログを御覧のみなさんへ
師匠に調整をおねがいすると、【生贄】とか【献体】の名のもとに、
勝手にいぶし銀にされるのかと心配になる方があるかもしれません。
師匠からは調整前にいぶし銀にするかどうかの御丁寧なメールを
いただいたことを、ここに記しておきます。
先輩!ありがとうございました。

Posted by ズミルクス at 2007年10月03日 19:08