2007年10月08日

月曜日の調整報告 【 Montblanc モンテローザ ピストン交換 】

2007-10-08 01 今回の依頼品は、2006年8月19日に調整したもの。これのピストンが壊れたというのが今回の依頼事項。実はこの時代の安価モデルのピストンには同様のトラブルがよく起こる。

 特に最近の怪しいインクを入れていると弁が一部溶けて胴軸内部にはりつくような感じになり、ピストンを無理やり動かそうとすると・・・弁の部分が折れる・・・のかもしれない。

2007-10-08 02  弁はプラスティック製のネジで固定されているが、この根元が弱く、ネジ込み過ぎてもプチっと割れてしまう。あきらかに設計ミス。実は同じような状況はMontblancのNo.25Xシリーズでも発生する。弁がグラグラするのでちゃんと固定しようと、ネジを力一杯右に回すと・・・ピキっという音を立ててネジの根元が剥離する・・・

2007-10-08 03 ペン先は以前に紹介したとおりNo.142の物を装着している。元々スチール製のガチガチにスリットが詰まったペン先だったが、ペン先を交換したことによって繊細な書き味になっている。

 ただし萬年筆の重量がNo.142に「比べて軽いので、多少筆圧を大きめにした方が、このペン先の本来の素質を生かせそうじゃ。

2007-10-08 04 吸入機構の要である弁が壊れては萬年筆としては機能しない。また場所が場所だけに接着剤で固定することも出来ない。そこで移植手術をする事にした。

 たまたま部品箱の中に、ペン先もキャップも無くなったモンテローザの赤軸があった!

2007-10-08 05 分解してみると弁は無事じゃ。これなら即時移植手術が出来る。この弁・・・というか弁とネジと中軸が一体となった部品毎移植することにした。ピストン機構ごと移植しなかったのは、提供部品と軸本体の色合いが微妙に違っていたからじゃ。

 同じモデルの同じ赤軸とはいっても製造時期や製造ロットによって軸色には多少変化があったらしい。

2007-10-08 06 左画像の下から上へ部品の移動を行ったわわけだが、色の違いがわかるかな?上の方が若干明るい色をしている。

 そして上の色が本来のモンテローザの色。この鮮やかな赤色はMontblancの中でも特に美しい。もしこの色のMontblanc No.149があれば狂喜乱舞する人がいるだろうにな・・・

2007-10-08 07 こちらが移植を終えてキャップを閉じたところ。天冠にホワイトスターは無く、キャップの口のところの金具が波打って雪の形を演出している。こちらの方がNo.342のキャップよりは垢抜けている。

 かわいさと不格好さが同居した、曰く言い難い形状をしている。いくら可愛いぶってもオシャレとは言えない・・・このあたりの垢抜けなさが人気が長続きする原因かもしれない。拙者は大好きじゃ!

2007-10-08 08 キャップを後ろに挿すと雰囲気は一変する。なんというか・・・ステロイドを大量使用していた、旧東ドイツの女子スポーツ選手のような・・・筋肉質なペン先が目立つ。

 ワーゲンビートルにポルシェのエンジンを積んでいるような感じさえする。その昔、発泡スチロール製のボートに競艇用のエンジンを積んだら、競艇用ボートよりも直線スピードが出たという実験を父親がやったことがあるが、まさにそのノリじゃ!

2007-10-08 09 小さなペン先というのは筆記時のブレが少ないので、普通の人にとっては大型ニブよりも書き味が安定していて、筆記時の悩みが少ない。

 大型ニブに憧れて、どんどん大きなペン先に行くほど、書き味のブレに悩まされ【こんなはずではなかったのに・・・】と思ったことはないかな?

 【部下の安い萬年筆の方が何故ふわふわと気持ちよく書けるのか?】というのが拙者が調整に入っていったそもそもの理由じゃ。そして今でも【ひょっとすると小さいペン先の方が書き味は良いのではないか?】という疑問は消えない。

 メーカーの人が答えてくれるのなら、拙者自身が○曜日の質問コーナーに、【どうして大型ニブの萬年筆を作る必要があるのですか?】と聞いてみたいほどじゃ。

 拙者には50年代No.142のペン先の書き味は、同時代のNo.149の書き味を凌駕しているようにしか思えないのだがな・・・


今回執筆時間:5時間 】 画像準備2h 調整2h 執筆1h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間

 


【これまでの調整記事】

2007-10-06   Parker バキューマティック ペン先曲がり 
2007-10-03   Montblanc No.1466 14K-M いぶし銀
2007-10-01   Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 
2007-09-29   吸い込まれるような透明軸 Chronoswiss

2007-09-26   Montblanc 80年代 No.146 14K-EF 胴軸交換

2007-09-24   20年間酷使した Pelikan M800の復活 
2007-09-22   女王からの依頼 : ペン先の無いセルロイド軸 
2007-09-19   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF キャップ交換

2007-09-17   万年筆博士 水牛軸 14K-HM 曲げ戻し 
2007-09-15   Senator President 14C-B 交換後 

2007-09-12   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thin 
2007-09-10   Pelikan ナイアガラ 18C-B 交換後  
2007-09-08   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thick
2007-09-05   Montblanc 50年代No.144 14C-B 
2007-09-03   Montblanc 80年代No.146 14K-EF ペン先曲がり 
2007-09-01   Montblanc No.342 14C-KM 

2007-08-29   Montblanc No.23246 ヘマタイト 18K-F 
2007-08-27   DELTA 20周年記念 18K-F
2007-08-25   Montblanc No.342 + No.252 そしてペン先曲がり
2007-08-22   Pelikan M1000 2.2B for 書家 
2007-08-20   Montblanc 60年代No.149 18C-M 尻軸不良
2007-08-18   Sheaffer Snorkel 金張 14K-EF
2007-08-15   Montblanc 60年代No.149 18C-OB  ハプニング! 
2007-08-13   Montblanc 70年代No.149 14C-EF → B
2007-08-11   Montblanc 70年代No.146 14C-EF from 岡山
2007-08-08   Montblanc 80年代No.146 14K-OB お好きに!
2007-08-06   Montblanc 50年代No.144-G 14C-EF
2007-08-04   Montblanc 50年代No.146 14C-M

2007-07-28   Platinum #3776 金魚 14K-太 
2007-07-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-EF ペン先交換
2007-07-23   Pelikan 100 14C-F 2本から一本を作る! 
2007-07-20   Pelikan M800用 14C O3B → 3B  & 鍍金
2007-07-18   Pelikan #520NN 14C-M
2007-07-16   コルクが劣化したMontblanc 50年代No.144 14C-M
2007-07-13   ペン先のひん曲がったPelikan M700 トレド 18C-BB
2007-07-11   ペン芯の折れたMontblanc 80年代 No.146 14C-EF
2007-07-09   Montblanc No.74 14C-F
2007-07-06   Pelikan 400 緑縞 14K-M
2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-01   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
2007-05-30   Pelikan 400 灰茶 14C-F 
2007-05-28   Montblanc No.1468 18K-OBB
2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル

Posted by pelikan_1931 at 17:17│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
やっぱり他の方も小さいニブの方が書きやすいんだ・・。
セーラーミニの書き味がお気に入りなんですがペン先は凄く小さい・・。
Posted by 二右衛門半 at 2007年10月08日 22:06
venezia 2007 しゃん

萬年筆の重量や重心位置、太さなどが微妙に影響しているようじゃ。
拙者の好きな萬年筆はさまざま。
Omasの557系はキャップを挿して長いところが気に入っているが
M1000にキャップを挿すと書きにくい。M800にキャップを挿すと最高。
No.142、No,144、No.146、No.149の順で好き
Vintage Pelikanは520NNの重さがよい・・・とう、脈絡がない。

しかしWAGNER 2007 【シルバーン】の重量バランスは最高じゃな。期待以上!
Posted by pelikan_1931 at 2007年10月08日 20:21
師匠、ペンの大きさの好みに関しては全く同感です。私は自分の手は大きい方だと思うのですが、どうしても大きさはペリカンなら400、50年代のモンブランなら一桁の数字が2、どんなに大きくても4でないと落ち着きません。いつも大きなペンを勧められるのですが、どうもペンの大きさの選択は必ずしも手の大きさに直接は関係なく、個人の好みに寄る事が多いような気がします。
Posted by venezia 2007 at 2007年10月08日 20:09