2007年10月10日

水曜日の調整報告 【 Pelikan 140 赤軸 & Gel Medium 】

2007-10-10 01 今回の依頼品はPelikan 140の赤軸。拙者が以前に海外オークション荒らしをしていたころにはめちゃめちゃ高かった。グレーは一回しか見たことはないが、緑も高かったなぁ。そういえば青軸はまだ持っているかもしれない。

 独逸国内では緑縞しか当初は売られていなかったので、赤軸は輸出専用?そのせいか独逸のBidderに競り負けた事が度々あった。Pelikan 140独特の書き味に嵌るとほかの萬年筆を使う気にならないらしい。拙者の知人でもPelikan 140ばかり100本以上保持している人もいる。

 彼曰く、【ほかの萬年筆もたまに買うが、それは改めてPelikan 140
のすばらしさを再認識するため】とか。

 筆圧が極端に強く、字の太さに強弱を付けたい人には最高の萬年筆じゃ。Pelikan 400NNがスマートな30才前後の青年なら、Pelikan 140は16才くらいのじゃじゃ馬。赤軸のPelikan 140なら、まさに赤毛のチリチリ髪でソバカスのかわいい【じゃじゃ馬娘】を想像してしまう。


2007-10-10 02 依頼品は【じゃじゃ馬娘】の最たるもので、左のようにキャップを後ろに挿した時に空回りしてしまう。まったく軸にフィットしない!これは拙者が最も忌み嫌う状態だが、依頼者にとっても同様らしい。これを何とかして欲しいというのが依頼内容。

2007-10-10 03 拙者も100本以上のPelikan 140に触ってきたが、キャップがまったく固定できないという個体に初めて遭遇した。

 樹脂の痩せというよりも、キャップと軸とが別々の萬年筆から集めた【二個イチ】ではないかな?いくらなんでもこの状態ではPelikanの品質チェックにひっかかって出荷は出来なかっただろう。

 そこで stylustip しゃんに紹介いただいた、ゲルメディウム【Gel Medium】を試してみることにした。

 絵の具に混ぜてツヤをコントロールする物らしいが、ぐらぐらキャップの内側にごく少量つければグラグラがぴたりと止まる!というもの。

 多少練習しないと、多く付けすぎてキャップネジにこびりついたり・・・ということが起こるが、水性なので乾燥するまでは小さな歯ブラシに歯磨きを付けてゴシゴシこすればすぐに取れるので問題ない。

 軸側に塗った方が簡単で効果も大きいのだが、見映え第一主義の拙者には、そんな事は出来ないので、満足のいくまで何度も繰り返した。

 結果、完璧にキャップのぐらつきは止まった!この状態が永遠に続くとは思わないが、ゆるくなったらまた塗ればよい。綿棒の先に少しだけつけて、キャップ無いのねじ切りの手前を軽くなぞって乾かせば完成!

 ゲルメディウム萬年筆愛好家の必需品じゃな。ほかにも色々と用途を見つけたのだが、それについてはまた機会を改めて紹介しよう。


2007-10-10 04 ペン先とペン芯の位置は左の図のようにした。プロの中にはペンポイントとペン芯を近づけようとする人も多い。一見理にかなってそうだが、実際にはペン芯とペンポイントを離していてもインク切れする事はないし、第一離していたほうがペン先を上から見たときにストレスがない。ペン先からペン芯がチラチラと見え隠れしている状態ほど不細工な物はない。股引が足首から見えているような感じすらする・・・

2007-10-10 05 ペンポイントの調整は、多少筆圧をかけて書いたときに最も良い感じにするのがPelikan 140の調整のコツ。筆圧をかけない状態での気持ちよさは、何度か調整をやれば身につくが、強筆圧用の調整には熟練が必要じゃ。

 この個体はEFのペン先なのであまり無理は出来ないが、BやBBならばおもしろい書き味に出来る。


2007-10-10 06 普通に書くにはMがベスト。おもしろみを出すにはBかBB。どちらも強筆圧で書いたときにおもしろくなる。EFの場合には筆圧をかけすぎれば紙を削ってしまう。

 あくまでも多少筆圧を強くする程度で楽しんで欲しい。


今回執筆時間:4時間 】 画像準備1h 調整2h 執筆1h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間


【これまでの調整記事】

2007-10-08   Montblanc モンテローザ ピストン交換 
2007-10-06   Parker バキューマティック ペン先曲がり 
2007-10-03   Montblanc No.1466 14K-M いぶし銀
2007-10-01   Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 
2007-09-29   吸い込まれるような透明軸 Chronoswiss
2007-09-26   Montblanc 80年代 No.146 14K-EF 胴軸交換
2007-09-24   20年間酷使した Pelikan M800の復活 
2007-09-22   女王からの依頼 : ペン先の無いセルロイド軸 
2007-09-19   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF キャップ交換

2007-09-17   万年筆博士 水牛軸 14K-HM 曲げ戻し 
2007-09-15   Senator President 14C-B 交換後 

2007-09-12   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thin 
2007-09-10   Pelikan ナイアガラ 18C-B 交換後  
2007-09-08   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thick
2007-09-05   Montblanc 50年代No.144 14C-B 
2007-09-03   Montblanc 80年代No.146 14K-EF ペン先曲がり 
2007-09-01   Montblanc No.342 14C-KM 

2007-08-29   Montblanc No.23246 ヘマタイト 18K-F 
2007-08-27   DELTA 20周年記念 18K-F
2007-08-25   Montblanc No.342 + No.252 そしてペン先曲がり
2007-08-22   Pelikan M1000 2.2B for 書家 
2007-08-20   Montblanc 60年代No.149 18C-M 尻軸不良
2007-08-18   Sheaffer Snorkel 金張 14K-EF
2007-08-15   Montblanc 60年代No.149 18C-OB  ハプニング! 
2007-08-13   Montblanc 70年代No.149 14C-EF → B
2007-08-11   Montblanc 70年代No.146 14C-EF from 岡山
2007-08-08   Montblanc 80年代No.146 14K-OB お好きに!
2007-08-06   Montblanc 50年代No.144-G 14C-EF
2007-08-04   Montblanc 50年代No.146 14C-M

2007-07-28   Platinum #3776 金魚 14K-太 
2007-07-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-EF ペン先交換
2007-07-23   Pelikan 100 14C-F 2本から一本を作る! 
2007-07-20   Pelikan M800用 14C O3B → 3B  & 鍍金
2007-07-18   Pelikan #520NN 14C-M
2007-07-16   コルクが劣化したMontblanc 50年代No.144 14C-M
2007-07-13   ペン先のひん曲がったPelikan M700 トレド 18C-BB
2007-07-11   ペン芯の折れたMontblanc 80年代 No.146 14C-EF
2007-07-09   Montblanc No.74 14C-F
2007-07-06   Pelikan 400 緑縞 14K-M
2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-01   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B
2007-05-30   Pelikan 400 灰茶 14C-F 
2007-05-28   Montblanc No.1468 18K-OBB
2007-05-25   無理難題! Montblanc 80年代 No.149 14C-F
2007-05-23   松江から来た松江から来たMontblanc No.144 14K-M 赤軸 
2007-05-21   松江から来たMontblanc 70年代 No.1266 18C-F 
2007-05-18   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 14C-EF
2007-05-16   松江から来たMontblanc 70年代 No.149 18C-F 
2007-05-14   Montblanc No.1468 デスクセット 14K-BB
2007-05-11   持ち主のわからない中屋の黒軸 14K-中
2007-05-09   Pelikan ダイダラス・イカルス 18C-M
2007-05-07   Montblanc Montblanc 80年代 No.149 14C-M 開高健モデル

Posted by pelikan_1931 at 08:30│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
しまみゅーらしゃん

同じですな。幸運を!
Posted by pelikan_1931 at 2007年10月17日 06:40
pelikan_1931さん
 おおー、ホンマですか!見つけて、オーダーしてみようかな!と、思います。

 余談ですが、ネット上で、プラスチックのボトルに入った「ロットリングクリーナー」なるものを発見しました。
これは、pelikan_1931さんがお持ちの袋入りロットリング洗浄液と同じものと考えてよいでしょうかね?
画材系(漫画ですが)ショップだったので、もしそのショップでゲルメディウムを見つけたら一緒に注文してみようっと。
Posted by しまみゅーら at 2007年10月16日 22:57
しまみゅーらしゃん

M600にも、MontblancのNo.146ベースの金属軸、作曲家シリーズにも高価絶大です。

ただし数ヶ月で劣化しますので、繰り返し塗る必要があります。

拙者は通販で入手しました。検索するとけっこう出てきます。
Posted by pelikan_1931 at 2007年10月15日 08:00
 このゲルメディウムなんですが、pelikan_1931さんの忌み嫌う、キャップのささらないM600なんかにも、塗ったら効果がありますかね?自分の持っているのの中にも、キャップが尻軸にささらないで気持ち悪いのがあるので、見つけたら試してみようかな、と思っております。
Posted by しまみゅーら at 2007年10月14日 13:57