2007年10月24日

水曜日の調整報告 【 Stipula ピノキオ 青軸 14K-M 字幅改善 】

2007-10-24 01 今回の依頼品はスティピュラのピノキオ。なんとも奇抜な形状をしている。ところがこれが至極持ちやすい。キャップを後ろに挿した時のバランスも良いし、不思議とガタツキも大きくない。

 キャップを後ろに挿したときに出来るくぼんだ部分が、親指と人差し指の腹の部分に入って気持ちよい。ひょっとするとすばらしい万年筆だったかもしれないが、その奇抜な姿ゆえ敬遠されてほとんどの人が心地よさに気付いていなかった・・・拙者も含めて・・・

2007-10-24 02 クリップを表面から見た画像。鼻の部分がクリップになっているが、このクリップが・・・実に使いにくい。

 ペンをホールドする際に非常に苦労することになる。何か裏技があるのかな?

2007-10-24 03 ペン先はプラチナ?で鍍金された14金ニブ。当然のことながらペン先専門メーカーに製造委託したものだが、スティピュラ用のニブはなかなか良い。強さと弾力がうまくバランスした作りになっている。

 拙者は最初にエトルリアを使ったときからスティピュラのファンだったが、このピノキオの発売を知ってスティピュラに幻滅した・・・しかし実は良い万年筆だったと悟った。万年筆を見かけで判断してはいけないという教訓じゃな。

2007-10-24 04 依頼内容は、インクフローの改善と、縦横同じ太さの字が書けるようにとのこと。

 左の画像でペンポイント先端を見ると、まるでスタブのペン先のように腹にエッジが立っている。これはこれで拙者は好きな書き味じゃが、依頼者には合わない。多少腹を研磨する必要有りと見た。

2007-10-24 05 胴体を二分割するとコンバーターが内蔵されている。ペン先はペン芯とともに、ゴム板で挟んで前にまっすぐに引っ張れば抜ける。挿し込む位置は固定なので間違わないようにな。逆に差し込むと抜けなくなって大騒ぎになるので・・・

2007-10-24 06 これがスティピュラのペン芯。エトルリア発売の時点ではどうしようもない性能だった。拙者は当時のデルタのエボナイト製ペン芯と交換して使っていた。デルタのルグドナムがインクフローが良すぎて使い物にならず、エトルリアがインクフロー悪すぎて使い物にならず・・・ところがペン芯交換すると、いずれもが絶品!

 最近のスティピュラのペン芯はさすがに性能改善がなされているのであろうな。当時は何本も本国送りにしたものじゃ。

2007-10-24 07 こちらがインクフロー調整前のペン先。やはりスリットが詰まっている。これではいくら絶妙のタッチ感を持つスティピュラのペン先であっても、その能力を存分に出す事は出来ない。どうしてここまでスリットを詰めるのかな?インクが出ない万年筆では、ローラーボール以下の評価になってしまうだろうに・・・

2007-10-24 08 こちらがスリットをやや拡げ、ペンポイントの腹を研磨した状態のペン先。スリットの開きはハート穴の部分よりは狭い必要がある。

 ではハート穴の部分が狭いときは?そのときはハート穴の部分から研磨して、先端に行くほど狭いスリットにすると良い。弾力の大きいペン先なら、ポンプ運動でインクが押し出されるが、多少硬いペン先や筆圧が極度に低い人の場合にはポンプ運動が働かないので、スリットによる毛細管現象に期待するしかない。

2007-10-24 09  こちらが首軸に装着した状態のペン先。ペン芯に乗せると若干スリットが拡がる。これはペン芯が多少上に反っているから。

 この反りの状態を計算に入れた上で、スリット調整を出来るようになれば一人前。ペン先調整のほとんどはインクフロー調整で、そのほとんどがスリット調整。

 それ以外というのはペン芯の清掃、インク誘導液処理程度じゃ。多少指は痛くなるが、ペン先のスリット調整を覚えておくとストレス解消にはなる。インクの出ないペン先を持つと、吐き気がするのでな・・・


今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 調整1h 執筆1h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間
 


【これまでの調整記事】

2007-10-22   Montblanc No.252 14C-F フロー改善
2007-10-20   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF ヌラヌラ化
2007-10-17   Osmia 64 → Matador Click ペン先移植
2007-10-15   Matador 996 ピストン修理に松脂利用実験
2007-10-13   Montblanc No.34 14C-M グレー軸   
2007-10-10   Pelikan 140 赤軸 & Gel Medium 
2007-10-08   Montblanc モンテローザ ピストン交換 
2007-10-06   Parker バキューマティック ペン先曲がり 
2007-10-03   Montblanc No.1466 14K-M いぶし銀
2007-10-01   Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 
2007-09-29   吸い込まれるような透明軸 Chronoswiss
2007-09-26   Montblanc 80年代 No.146 14K-EF 胴軸交換
2007-09-24   20年間酷使した Pelikan M800の復活 
2007-09-22   女王からの依頼 : ペン先の無いセルロイド軸 
2007-09-19   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF キャップ交換
2007-09-17   万年筆博士 水牛軸 14K-HM 曲げ戻し 
2007-09-15   Senator President 14C-B 交換後 

2007-09-12   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thin 
2007-09-10   Pelikan ナイアガラ 18C-B 交換後  
2007-09-08   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thick
2007-09-05   Montblanc 50年代No.144 14C-B 
2007-09-03   Montblanc 80年代No.146 14K-EF ペン先曲がり 
2007-09-01   Montblanc No.342 14C-KM 

2007-08-29   Montblanc No.23246 ヘマタイト 18K-F 
2007-08-27   DELTA 20周年記念 18K-F
2007-08-25   Montblanc No.342 + No.252 そしてペン先曲がり
2007-08-22   Pelikan M1000 2.2B for 書家 
2007-08-20   Montblanc 60年代No.149 18C-M 尻軸不良
2007-08-18   Sheaffer Snorkel 金張 14K-EF
2007-08-15   Montblanc 60年代No.149 18C-OB  ハプニング! 
2007-08-13   Montblanc 70年代No.149 14C-EF → B
2007-08-11   Montblanc 70年代No.146 14C-EF from 岡山
2007-08-08   Montblanc 80年代No.146 14K-OB お好きに!
2007-08-06   Montblanc 50年代No.144-G 14C-EF
2007-08-04   Montblanc 50年代No.146 14C-M

2007-07-28   Platinum #3776 金魚 14K-太 
2007-07-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-EF ペン先交換
2007-07-23   Pelikan 100 14C-F 2本から一本を作る! 
2007-07-20   Pelikan M800用 14C O3B → 3B  & 鍍金
2007-07-18   Pelikan #520NN 14C-M
2007-07-16   コルクが劣化したMontblanc 50年代No.144 14C-M
2007-07-13   ペン先のひん曲がったPelikan M700 トレド 18C-BB
2007-07-11   ペン芯の折れたMontblanc 80年代 No.146 14C-EF
2007-07-09   Montblanc No.74 14C-F
2007-07-06   Pelikan 400 緑縞 14K-M
2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-01   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
 はい、ゴム板にはさんで左に回したら、ペリカン同様にソケットごと外れましたよ。まさか、ソケットになっているとは思っていなかったので、びっくりでした。

 ソケットはプラ製でしたよ。
Posted by しまみゅーら at 2007年10月25日 09:16
しまみゅーら しゃん

ソケットというのは、ペン芯とペン先を一体化する部品の事をいいますが、そのことですかな?
Posted by pelikan_1931 at 2007年10月25日 08:17
 私もこれのBを持っています。おっしゃるとおり手の水かきにキャップのアルミ部分がひんやり当たるのが気持ちいいのと、主軸が徐々に太くなっているので好みの太さのところで持てるのがいいな、と思います。クリップは使い物にならない上に、クリップ裏のゴム部品が取れそうなのと、そのゴムにキャップのアルミが反応して黒ずんでくるのが難点です…。

 それと、私のは頑張ってもペン先が抜けません(ソケットは抜けますが…)。もしかしたら、購入前に変に調整されてぬけなくなったのかもしれませんね。
Posted by しまみゅーら at 2007年10月24日 08:02