2007年11月05日

月曜日の調整報告 【 Montblanc No.146 18C-F 書き味品位向上 】

2007-11-05 01 今回の依頼品はMontblanc No.146 の18Cペン先付き。ストライプのインク窓に18Cのペン先・・・どうも時代が良くわからない。アセンブルした物かな?

 依頼内容は【書き味の品格を上げて欲しい】とのこと。要するに高貴な風貌にもかかわらず、書き味が悪いのが我慢ならないようじゃ。

 とうとう書き味も【品格】で表現されるようになったが、これが非常にわかりやすい。【書き味が悪い】といわれてもどう悪いのか書いてみるまでわからないが、【書き味に品がない】と聞けば、おおよそ見当が付く。

2007-11-05 02 ペン先は中白で非常に端正。やはりペン先はシンプルな模様・刻印の方が品がある。それと18Kの刻印よりも、18Cの刻印の方が優しい感じがする。

 そういう意味では最高に美しいペン先!ただ・・・ペン先のスリットは詰まっている。これではインクフローは悪い。ゴリゴリと筆圧をかけないとインクは出てこない。筆圧がほぼゼロの依頼者は【下品な書き味】と感じるであろうな。

2007-11-05 03 こちらは横から見た画像。もう少しペン芯が後ろの方が上品に見える。ただし首軸とペン芯の関係は、このあたりがベスト。従ってごくわずかにペン先を前に出す事になる。

 Montblanc以外のメーカーは、首軸内部に入っているニブの部分が少ないので、ペン先を前に出すのはぐらつきの原因になる。よい子は真似をしないように・・・

2007-11-05 042007-11-05 05 こちらはソケットから外した状態のペン先の裏表。問題になるほど多くはないが、エボ焼けが多少ある。これは取り除いておいた方が良い。

 また書き味が下品と感じられた理由は、依頼者とまったく筆記角度が合わなかったから。依頼者はペンを筆記角度が30度に近いほど寝かせて書く。にもかかわらずこのペン先の研ぎは筆記角度60度程度を前提に研いである。従って研ぎが一番甘い【腹の後】で書いていたのじゃ。調整がほとんど施されていない部分なので【下品】と感じられるのは当たり前じゃな。

 20年ほど前に入手したデュポンのクラシックについていた【B】のポイントは表面がざらざらな【】だった。今なら舌なめずりして調整を楽しむのだが、当時はあまりにざらざらな書き味に閉口した。これがまさに【品の無い書き味】だった。ボディも品が無いのならバランスが取れていて気にならない。ボディが美
しいからこそ【品格】が問われてしまうのじゃ。

2007-11-05 062007-11-05 07 まずは品を上げるために綺麗に清掃した。そしてスリットを拡げ、筆記角度を依頼者に合わせた。

 それにしても【18C】という比較的大きな刻印は美しい!やはり中白に【K】は無粋じゃ。以前にも説明したが、スキマゲージを用いてスリットを拡げる際には、必ず裏側からコネる事。出ないとスリットの両側に金の盛り上がりが出来てしまう・・・


2007-11-05 082007-11-05 09 こちらが首軸への取り付けが終了したもの。上から二番目の画像と比べると、姿形も【品位】が上がったような気がしないかな?

 ごくわずかなスリットが低筆圧でもヌラヌラと書けるインクフローを提供してくれる。ペン先の研ぎは元々は鉈型。これを若干ではあるが長刀形に研いでおいた。書き味だけ追求するのなら、ペンをひっくり返しても書けるように研磨するが、それでは【品位】が落ちてしまう。高貴な萬年筆はひっくり返して書いたりしてはいけないのじゃ。


今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備1.5h 調整1.5h 執筆1.5h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間
 


【これまでの調整記事】

2007-10-31   Waterman セレニテ 18C-M ペン先曲がり   
2007-10-29   Pelikan 400NN 緑縞 14C-M ピストン/フロー改善
2007-10-24   Stipula ピノキオ 青軸 14K-M 字幅改善
2007-10-22   Montblanc No.252 14C-F フロー改善
2007-10-20   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF ヌラヌラ化
2007-10-17   Osmia 64 → Matador Click ペン先移植
2007-10-15   Matador 996 ピストン修理に松脂利用実験
2007-10-13   Montblanc No.34 14C-M グレー軸   
2007-10-10   Pelikan 140 赤軸 & Gel Medium 
2007-10-08   Montblanc モンテローザ ピストン交換 
2007-10-06   Parker バキューマティック ペン先曲がり 
2007-10-03   Montblanc No.1466 14K-M いぶし銀
2007-10-01   Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 
2007-09-29   吸い込まれるような透明軸 Chronoswiss
2007-09-26   Montblanc 80年代 No.146 14K-EF 胴軸交換
2007-09-24   20年間酷使した Pelikan M800の復活 
2007-09-22   女王からの依頼 : ペン先の無いセルロイド軸 
2007-09-19   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF キャップ交換
2007-09-17   万年筆博士 水牛軸 14K-HM 曲げ戻し 
2007-09-15   Senator President 14C-B 交換後 

2007-09-12   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thin 
2007-09-10   Pelikan ナイアガラ 18C-B 交換後  
2007-09-08   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thick
2007-09-05   Montblanc 50年代No.144 14C-B 
2007-09-03   Montblanc 80年代No.146 14K-EF ペン先曲がり 
2007-09-01   Montblanc No.342 14C-KM 

2007-08-29   Montblanc No.23246 ヘマタイト 18K-F 
2007-08-27   DELTA 20周年記念 18K-F
2007-08-25   Montblanc No.342 + No.252 そしてペン先曲がり
2007-08-22   Pelikan M1000 2.2B for 書家 
2007-08-20   Montblanc 60年代No.149 18C-M 尻軸不良
2007-08-18   Sheaffer Snorkel 金張 14K-EF
2007-08-15   Montblanc 60年代No.149 18C-OB  ハプニング! 
2007-08-13   Montblanc 70年代No.149 14C-EF → B
2007-08-11   Montblanc 70年代No.146 14C-EF from 岡山
2007-08-08   Montblanc 80年代No.146 14K-OB お好きに!
2007-08-06   Montblanc 50年代No.144-G 14C-EF
2007-08-04   Montblanc 50年代No.146 14C-M

2007-07-28   Platinum #3776 金魚 14K-太 
2007-07-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-EF ペン先交換
2007-07-23   Pelikan 100 14C-F 2本から一本を作る! 
2007-07-20   Pelikan M800用 14C O3B → 3B  & 鍍金
2007-07-18   Pelikan #520NN 14C-M
2007-07-16   コルクが劣化したMontblanc 50年代No.144 14C-M
2007-07-13   ペン先のひん曲がったPelikan M700 トレド 18C-BB
2007-07-11   ペン芯の折れたMontblanc 80年代 No.146 14C-EF
2007-07-09   Montblanc No.74 14C-F
2007-07-06   Pelikan 400 緑縞 14K-M
2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-01   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
monolith6しゃん

拙者も同じペン先を持っているが、それは森山さんが特別に独逸で鍍金してもらったものじゃ。

これはどうなのかな?
Posted by pelikan_1931 at 2007年11月09日 07:21
 大昔とごく最近のものは別として、146って、バイカラーになったものってあったんですか?18Cのものだけ?知りませんでした。
Posted by monolith6 at 2007年11月07日 15:24