
お正月に実施した何本もの修理を通じて、内部に金属機構を使った万年筆はすべて設計ミスだと断言できる。
拙者は金輪際テレスコープ吸入式とスノーケルやタッチダウンの万年筆は買わないだろう。それほど衝撃を受けた!

拙者もスノーケルは50本以上修理しているが、これほど状態が悪いのは初めて!相当錆びているぞぅ〜!と期待しながら何とか分解してみた。この分解に至った段階で、既に1時間が経過していた・・・



よくネジが外れたものだ・・・と感心!こういう外観の場合、ほどんどこのネジも腐っているが、今回は生き残っていた。非常にラッキー!

いくら磨いても下の状態にするのは無理。既に死んでいる・・・そこでバネを新しい物と取り替えることにした。これも簡単ではなく、バネは強く捻ったり、反対にねじったりして、それぞれの個体が最もスムーズに動くように微調整が必要なのじゃ。ペン先調整に近い技が要求される。実に奥が深い。
Sheafferのタッチダウン方式やスノーケル方式は、内部機構に大量のアルミ合金を使う。ところがこれらアルミ合金とインクとを隔てているのは一枚のゴムチューブ。もしこのゴムチューブが腐ってインクが胴軸内に出てきたら・・・ありとあらゆる金属部品が錆びてしまう設計じゃ。これを設計ミスと言わすして何と呼ぼう!


やってみると驚くほど簡単に抜ける。この四角形の首軸への差し込み口だが、ちゃんと位置が決まっている。ある一ヵ所しかスムーズに首軸に差し込めなくなっているので、要注意!

裏の汚れはエボ焼けではない。単なる汚れ。ただし長い間に表面にこびりついてしまっており、そう簡単には剥がれない。金磨き布で丹念に擦って落とすしかない。

サックセメントは1分ほどで乾くが、念のため5分間は水を吸わせないように!


おかげさまでこのタイプのスノーケルの修理はエキスパートになれそうじゃ!
実は一番時間がかかったのはこれから先・・・

一番イライラするのは胴軸内のOリングの交換。細かいピンセットでつまんで交換するのだが、5秒で出来ることもあれば、今回のように2時間格闘したこともある。
いずれにせよ、インクと薄いゴム一枚隔てた位置に大量の金属部品を使うことの愚かさをつくづくと感じた修理経験だった。
スノーケル機構の先端での失明事故があってスノーケルの製造を中止たと伝えられているが、もし中止していなかったらライフタイム保証をぶちあげていたSheafferはスノーケルの修理費用で倒産していたであろう。
下手な設計は会社を滅ぼしかねない。もし現代にスノーケル機構を復活させるのであれば、すべてを樹脂で実現する必要がある。もっとも非常に複雑な機構の割に吸入できるインク量はごくわずかなで魅力は少ないかも知れない・・・
【 今回執筆時間:11.0時間 】 画像準備3.5h 調整6.0h 執筆1.5h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間