今回の依頼品は復刻Crestの赤軸。実は以前、胴軸から首軸をねじ込むユニット部分が外れて、瞬間接着剤で付け直してあげた事がある。Sheafferでは、金属用ではなく通常の接着剤を使っていた・・・ 勘弁して下さいよ!と言いたくなる。
ごく最近の物は知らないが、この時代のSheafferは極上のペン先に比して、胴体の作りに手抜きが多い。スノーケル時代の懲りすぎた機構も故障しやすいので問題だが、壊れたら接着剤で直すしかない作り方は大問題だと思う。
ペン先は極上!特に細字や極細は、多少調整すれば世界一の書き味ではないかなぁ。多少上に反ったニブのおかげか紙当たりも滑りも実に良い。いくら調整してもNo.149のEFでは太刀打ちできない。
同じようなラウンドニブでもデュポンのモンパルナスなどは非常に硬くなってしまうが、Crestでは先に行くにしたがって傾斜が急になる形状のおかげか、ハート穴から先は思ったより弾力がある。
症状はキャップを捻ると首軸の途中から抜けてしまうというもの。黒のプラスティック部分にネジユニットを接着剤で取り付け、反対側のネジで胴軸にねじ込むのだが、なんらかの理由で胴軸側が密着してしまい、捻った時に首軸側の接着剤を剥がしてしまったのじゃ。
胴軸側から覗いているのは、コンバーターの口。こういう症状は初めて見た!
熱湯に胴軸の口部分を浸して、多少膨張させてから捻ったら外れた!
よく見るとネジの部分に赤インクがこびりついている。このインクが接着剤の働きをして金属同士を接着させたわけじゃ。
実は水(水分)というのは、油断ならないもので、金属同士を水分を挟むように緩く合わせておくと、水分が乾いたときには、まるで接着剤でひっつけたようになる。ガラス板を合わせた場合も同じような事が発生する。
スノーケルの修理の回でも指摘したが、内部機構に金属を持つ萬年筆は、全て設計ミスじゃ! 萬年筆は水分の保存機構なので、金属機構は御法度!
今どき首軸のネジユニットと胴軸のネジ部分を両方金属で作る萬年筆はあるまい・・・と思っていたら、なんと【WAGNER 2007】のベースとなっているシルバーンは両方金属製だった!
ネジユニットをよく見ると、赤インクがこびりついている。どのメーカーであれ、赤インクは危険。
特に毒々しい色のインクほど金属を犯すリスクが高い。
金属だけではなく、アウロラの昔(オプティマ 75時代)のインク窓も白濁させる。
拙者はコンバーターに注射器でインクを入れて使っている。けっしてインク瓶から赤インクを直接吸わせるようなことはしない。
どうやらコンバーターからインクが漏れていたらしい。使っていたのは【ミニ檸檬】や【赤と黒】にも使えるモンテヴェルディのコンバーター。何故かSheafferでも使えるので、タルガスリム利用者には朗報だったが、Sheafferを意識して作ってあるわけではないので、くたびれると漏れてくる。
そこでSeafferの伝統的なコンバーターと換えておいた。これで漏れる確率はずっと小さくなる。
ネジ部分からインク滓を取り除くのは簡単ではない。カーボンインクならロットリング洗浄液で一発で綺麗になるが、こびりついた赤インクは、歯科用のメスで念入りに擦り落とす必要がある。ネジ山を痛めるので、金属磨き布などは御法度じゃ。
あとはネジユニットを首軸のプラスティックに接着するだけ。この部分は将来修理の際に開けられるように弱く接着するのがコツ。あまり強い接着剤を使わず、ボンドのサイレックスを塗って、半乾き状態まで待ってからねじ込めばよい。
拙者は復刻Crestの初期バージョンを持っているが、こちらはコストカットも無く、非常に精度が高い。あっというまにコストカット・バージョンに移ったので、見つけたら確保すべき。特徴は・・・クリップが左右にブレないこと。ほかにもあるが、それはヒミツ!・・・というか本物を見なければ思い出さない。さてどこへしまったかなぁ・・・
【 今回執筆時間:2.5時間 】 画像準備1.0h 調整0.5h 執筆1.0h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間