2008年01月30日

水曜日の調整報告 【 Sheaffer 1000 黒縞 吸入機構完全取替 】

2008-01-30 01

 今回の依頼品は、WAGNER会員の持ち物ではない。会員の方が友人から依頼を受けて持ち込んだ物じゃ。

 それにしても凄い!これほどあちこち傷んだ万年筆にはなかなか出会えない。そうとう長期間放置されていたものであろう。そして、放置された原因は、硬い書き味。おそらくはもっと書き味の良い萬年筆を入手した結果、使われなくなって机上に置き忘れられていたはず。不幸中の幸いはインクが入らなかったので、インクによる痛みが少ないことじゃ。

 軸は非常に綺麗で、Sheafferの面目躍如!という感じ。この軸模様は以前捜しに捜して入手できなかった記憶がある。それがある時ひょっこりと目の前に表れる。

2008-01-30 02 ペン先は綺麗なバイカラーだが、金ペンではなくスチールペン。もっともこれが製造された時期のSheafferのペン先はどれも硬く、金ペンとスチールぺンで違うのは耐久性くらい。

 かなり耐久性で金ペンに差をつけられているスチールペンがこれほど綺麗な状態で残っているとは奇跡に近い。それともペン先に14Kと彫ってないだけで、実は金ペンだったのかな?

2008-01-30 03 不具合はいっぱいあるが、まずはインクを吸入しない事。中を開ければあたりまえで、サックが裂けている。

 インクをたっぷり入れたまま劣化すると、ゴムサックが胴軸にこびりつくように硬化するのだが、ちゃんとサックの形を残したままじゃ。あまり使われなかったのかも知れない。

 サックが曲がったのは首軸を真っ直ぐ押し込むところを捻りながら押し込んだから・・・。それでインクを吸わなくなったので劣化が抑えられたのだろう。不幸中の幸い!

2008-01-30 04 ただし水分は胴軸内部に残るので、レバーによって押さえられる内部部品は錆び付いて弾力を失っている。これではインクを吸わないので、代替品を準備する必要がある。

 市場の大きなUSAでは、ちゃんと修理する道具や部品も普通に売られている。特にParkerやSheafferの部品は充実している。

2008-01-30 06 左がJ-BarとしてUSAで販売されている物。丸い方を奥にして、レバーフィラーのレバーで少し厚い金具の部分を押せるような位置にして、胴軸内に突っ込めば終わり。一端押し込むと、抜き出すときに軸内部に傷がつく。真剣勝負で一回で成功させなければならない。相当バネが強いのでオリジナルよりも心地良い操作感じゃ。

2008-01-30 05 こちらが綺麗に磨いたペン先。14Kとは書かれていないが、非常に綺麗!Sheafferは特殊な合金のペン先も作っていたので、そちらかもしれない。

 ガチガチに硬いが書き味はSheafferらしい力強さ。これはMくらいだが、SheafferらしさはXFやFの方が上。スノーケル用のFやXFのラウンドニブは一度使うと嵌りますぞ!

2008-01-30 07 こちらは新しいインクサックを、サックセメントで取り付けた状態。一度サックを胴軸内に押し込んで、どこまで入るかを確かめてから、首軸が胴軸に入る長さを差し引いた部分でサックを切断し、サックセメントで止めるのじゃ。数分で乾くので、水で吸入実験をし、問題なければ同軸に真っ直ぐ差し込む。この段階ではまだ、ペン先やペン芯をとりつけないでおく。

 胴軸に首軸が入ったら、ペン先を挿す部分から竹ヒゴなどを押し込んで、胴軸内のサックの形状を整える。こうすればヨレる事もない。

2008-01-30 08 こちらがスリットを拡げてインクが出る状態にしたペン先。実に書きやすくなったのだが、それ以上に、この造形の美しさに感動してしまう。

 当時USAで流行していた【流線型】を表現したモニュメントのよう。まるで先端部に向かってインクが高速で流れていきそうな錯覚さえ覚えてしまう。

 今でこそデザインといえば【伊太利亜】と言われるが、この当時の万年筆では米国製が圧倒的にかっこよく、伊太利亜などは古くさいデザインだった。まさに米国黄金期の作品。

2008-01-30 09 横顔も良い!まるでジョーズが中途半端に口を開けたようなデザインのペン芯は素敵!

 このあたりは米国製戦闘機グラマンに描かれていたイラスト?に似ていて懐かしい。少年漫画で憧れたものじゃ。

 この多少反った形状が、ガチガチに硬いペン先に不思議なソフト感を与えている。Sheafferに嵌る人はこれにやられる・・・

2008-01-30 10 拡大してみると、まるで長刀の切っ先のよう。ただしセーラーの長刀と違ってペンポイント部分は短いので、日本字では味が出ない。あくまでも英語の筆記体を超高速で書く場合にストレスも引っ掛かりもない書き味を堪能できる。

 この安価モデルでもこれほどすばらしいので、ラウンドニブの14金ペン先のFならば、夢のような書き味を堪能できる。一度は試してもらいたいものじゃ。

 ただし修理できる自信がなければ、安易に海外から購入するのは止めた方がよい。非常に劣化しやすい設計なので、部品を持ってないと再生できない!

 WAGNERに持ち込めばすぐに完璧になるはずだが・・・


【 今回執筆時間:5.5時間 】 画像準備2.0h 調整2.0h 執筆1.5h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間 
 
 


【これまでの調整記事】

2008-01-28 Montblanc 50年代 No.144 14C-F どん底
2008-01-26 Pelikan M320 緑 14C-M 背開き 
2008-01-23 Montblanc No.242 なんとか一人前に・・・ 
2008-01-21 Montblanc モーツァルト生誕250周年 時々切れる・・・
2008-01-19 Montblanc No.146 14K-BB 不思議とひっかかる
 
2008-01-16 Montblanc チャールズ・ディケンズ 18K-M の呼吸困難
2008-01-14 Montblanc No.342緑 14C-B改造がひっかかる 
2008-01-12 Sheaffer Crest 14K-F 赤インクが接着剤  
  
2008-01-09 Omas Gentleman 14K-F キャップが・・・
2008-01-07 Shesffer Snorke 14K-F 吸入機構動かず 
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2007-12-12   Montblanc '80年代 No.146 14K-F ペン先ズレ
2007-12-10   Sheaffer Imperial Silver 14K-F ペン先曲がり
2007-12-05   Montblanc '70年代 No.149 14C-M がさつな書き味
2007-12-03   Montblanc L139G 14C-KM 健康診断
2007-12-01   Montblanc '50年代 No.146 14C-M 死地からの復帰
2007-11-28   Montblanc No.142 14C-F 相対評価の果てに・・・
2007-11-26   Montblanc No.147 14K-OM 羊の皮をかぶった山羊
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2007-11-21   Montblanc No.254 14C-EF ペン先曲がりと・・・
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2007-09-19   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF キャップ交換
2007-09-17   万年筆博士 水牛軸 14K-HM 曲げ戻し 
2007-09-15   Senator President 14C-B 交換後 
2007-09-12   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thin 
2007-09-10   Pelikan ナイアガラ 18C-B 交換後  
2007-09-08   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thick
2007-09-05   Montblanc 50年代No.144 14C-B 
2007-09-03   Montblanc 80年代No.146 14K-EF ペン先曲がり 
2007-09-01   Montblanc No.342 14C-KM 


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
次元しゃん

まずは定例会に来ていただかないとな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年01月31日 19:17
今晩は、次元です。先日は質問させていただいたシェーファーの万年筆に対してお返事いただきましてありがとうございます。万年筆の調整のことなど色々勉強してみたりしたので、WAGNERさんへ修理をお願いできたら幸いです。お願いできますでしょうか?
Posted by 次元 at 2008年01月30日 23:54
ユウしゃん

外はMintで中は・・・崩壊していた・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年01月30日 22:26
これはとてもキレイな状態のバランスですね。
Mint状態といってもいいのではないでしょうか?
Posted by ユウ at 2008年01月30日 14:15