こちらに2本のNo.149がある。今回の依頼主は、2本の萬年筆から一本の完璧な【開高健モデル】萬年筆を作り上げようとしている。
別に不具合があるわけではなく、この2本も純正であり、かつ、全ての部品の時代も合っている。しかし満足できていないようじゃ。
依頼主が欲しいのは、【開高健】が使っていたのと同じ部品の組み合わせになっているNo.149!
誤解している人が多いが、No.149は画一的に部品構成を変えているわけではない。従って無数の移行期モデルというものが存在する。
どれが純正で、どれが移行期モデルかすら明確ではない。少なくともMontblancが公式に見解を出しているわけではない。
【開高健モデル】を定義出来るのは言い出しっぺのkugel_149しゃんだけ!
そこで依頼者はkugel_149しゃんに鑑定を依頼した。15分くらいかけて慎重に鑑定したkugel_149しゃんは、この二本の部品から一本の完璧な開高健モデルを作り上げることが出来ると明言した。
そこで拙者がくみ上げることになったのじゃ。
ニブはどちらも開高健タイプに間違いはない。
首軸は下側が開高健タイプ。ペン芯は上側が開高健タイプということらしい。
ペン芯については知っていたが、首軸先端の盛り上がりの頂上が尖り気味か、平坦気味か・・・という差があるとは知らなかった!ちなみに下が平坦気味。
ペン先のバイカラー鍍金のやり方、スロープの傾斜角度は全て同じだが、下の細字の方が形状が美しいのでこちらを選択して取り付けることにした。
【開高健】氏が愛用していたのは、PLAYBOY誌の写真を見る限りでは【丸研ぎのM】と思われる。拙者が経験した中では【角研ぎのM】が最も流麗な書き味を提供してくれる。もし見つければ【開高健】氏以上に【開高健モデル】の書き味を堪能できるであろう。
【開高健モデル】のピストンは下のタイプ。金属製ピストンガイドであり、重心が後ろ寄りにある。ペンを寝かせて書く人は、こちらの方がバランスが良いと感じるはずじゃ。立てて書く人にとっては尻軸が重いのは取り回しが重くて耐えられないと感じるかも知れない。
こちらが完成した【開高健モデル】。開高健氏は、たまたまこのモデルを選んだのであろうが、非常に美しい組み合わせじゃ。
PLAYBOY誌によれば、モンブランの萬年筆にパーカーのインクを入れて使うのが、当時の作家の間で流行していたらしい。パーカーのクインクの速乾性が評価されてのことであったろう。
開高健氏はパイロットのブルーブラックを使っていたらしいが、筆跡を見るとインクが山盛りに出ていたとは思われない。筆圧でインクを出すタイプだったのではないかな?
筆圧で出したインクは、字巾は太くてもインクの出る量は少ない。従ってクインクでなくとも乾きが速かったのかも知れない。
また細字でインクフローが良いペンで書いた方が乾きが遅い。盛り上がったインクは、細字の場合、空気に触れる表面積が小さいのでなかなか乾かない。一方極太なら表面積が大きいので蒸発も速く、乾きやすいのじゃ。
この組み合わせが、正しい【開高健モデル】。特に首軸先端の形状は並べて比較しないとよくわかるまいな。上から三個目の画像で良く違いを認識して欲しい。
拙者も今回初めて正しい【開高健モデル】を知ることが出来た。今後はペン先だけをさす場合には【開高健モデルタイプのペン先】と呼ぶ事にしよう!
【 今回執筆時間:6.5時間 】 画像準備3.5h 調整1.0h 執筆2.0h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間