2008年02月04日

月曜日の調整報告 【 Pelikan 140 14C-M ペン先交換 → BB 】

2008-02-04 01 今回は拙者の持ち物。Pelikan 140青軸で未使用に近い物。5〜6年前にeBayで入手した。

 青軸は
マザーオブパール軸やグレー軸と比べれば数は多いが、緑軸や赤軸よりは入手が難かしい。過去2本は請われてお嫁に行き、これが3度目の出会いだった。

2008-02-04 02 軸は綺麗なのだが、ペン先は平凡なM。もっと太いペン先の方が似合うなぁ・・・と眺める度に考えていたものじゃ。

 数ヶ月前、たまたまこの軸を眺めた後でeBayを散策していたら、黒軸でBBニブ付きのPelikan 140が出ていた。これだ!と思い、最終タイミングでドカン!とbidを入れたのだが、あっけないほど低い価格で落札できた。いわゆる拍子抜け・・・

2008-02-04 03 それがこちら! スリットはピッタリと閉じたままなので、このままでは書けないが、青軸に装填し直す際にペン先調整も施すことにした。

 なをペン先移植の際は、可能であればペン芯+ソケットも移植した方がよい。個体差がある可能性もあるので、現状の組み合わせで問題がなければ、そのまま移植すべきじゃ。往々にしてペン芯とペン先のカーブが合わない個体が存在するのでな。

2008-02-04 04 ソケットを外してペン先をくまなくチェックする。ソケットの下あたりに微量のエボ焼けと、インク滓が付着している。これは金磨き布でチョチョイのチョイと拭き取ればよい。

 金磨き布はそれほど粒子が細かくはないので、力いっぱい擦ると傷が目立つことがある。軽く素早い速度で擦るのが正しい利用法・・・かな?

2008-02-04 05 ペン先の裏側は直接エボナイト製ペン芯と接しているので、かなり凄いエボ焼け状態!これも金磨き布で擦って落とす。この場合はゴシゴシと力一杯擦ってもかまわない。傷など見えないし、そもそも鏡面仕上げをしていないので金磨き布による傷などつかないのじゃ。

2008-02-04 06 こちらが表側を鏡面仕上げにした上で、スリットを多少開いた状態。お辞儀のきついペン先=ペンポイントが左右強烈に密着しているのスリットを拡げるのはた困難を極める!力もいるし、コツもいる。

 スリットを開くにはニブのお辞儀度合いを減らせばよい。ところがそうするとペン芯とペン先が離れてインクが出なくなってしまう。しかもPelikanのペン芯は上に反らせ
ることが出来ない。それどころかペン芯の上部にもお辞儀カーブが・・・

 その状態で目的を果たすには、ある技を使うのだが、今回はそこまでやらなくてもスリットが比較的簡単に拡がった!ラッキー!

2008-02-04 07  やはりBBニブをつけると【男前】になる。この状態で100年間保存すれば、その時に手にしてくれた人は、昔の万年筆の書き味に感動するだろう。そして、その感動を、いまよりもはるかに簡単に皆に伝えてくれるだろう・・・そうやって万年筆ファンが増えていけば良いなぁ・・・

2008-02-04 08 ああ、なんという美しさ!既にケースにしまわれてしまったが、一ヶ月に一回くらいは眺めてため息をつきたいものじゃ。

 もちろん後世に残す為にいつ拙者が逝っても良いように完璧な調整を施してある。

2008-02-04 09 こちらが調整後の横顔。既に何回か述べたが、当時の独逸のBBはカリグラフィー用としか考えられないほど薄っぺらいペン先!

 かなりペンを立て、手首を捻りながら、装飾文字を書く人もいる。それ用の調整では寝かせて書く拙者には使えないので、寝かせ調整を施した。


2008-02-04 10こちらが拡大図!拙者の筆記角度ならふぅわっと紙に当たり、ヌルヌルとインクは出てくる。すこし筆圧をかけるとバカっとペン先が開き字巾が拡大する。

 Pelikan 140好きは、この字のメリハリが気に入っているらしい。拙者にもう少し筆圧があったら、もっとPelikan 140を楽しめるのになぁ・・・

 数あるPelikan製品の中で、強筆圧の人に向いているモデルは140のみ!幸いにして世界中にごまんと残っているので、BやBBに出会ったらとりあえず確保しておく事をお奨めする。


【 今回執筆時間:3.0時間 】 画像準備1.5h 調整0.5h 執筆1.0h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間 
 


【これまでの調整記事】

2008-02-02 Montblanc No.149 合体して開高健 
2008-01-30 Sheaffer 1000 黒縞 吸入機構完全取替 
2008-01-28 Montblanc 50年代 No.144 14C-F どん底
2008-01-26 Pelikan M320 緑 14C-M 背開き 
2008-01-23 Montblanc No.242 なんとか一人前に・・・ 
2008-01-21 Montblanc モーツァルト生誕250周年 時々切れる・・・
2008-01-19 Montblanc No.146 14K-BB 不思議とひっかかる
 
2008-01-16 Montblanc チャールズ・ディケンズ 18K-M の呼吸困難
2008-01-14 Montblanc No.342緑 14C-B改造がひっかかる 
2008-01-12 Sheaffer Crest 14K-F 赤インクが接着剤  
  
2008-01-09 Omas Gentleman 14K-F キャップが・・・
2008-01-07 Shesffer Snorke 14K-F 吸入機構動かず 
2008-01-05 Montblanc No.149 14C-B 書き味に品がない! 
2008-01-02 丸善 ATHENA 萬年筆 14K-F 復活!
2007-12-31 Montblanc No.1464 18K-M ペン先から落下!

2007-12-29 Montblanc No.342 14C-M ペン芯を太らせる 
2007-12-26 Pelikan 500NN 暗緑縞 14C-EF ペン先グラグラ!
2007-12-24 Montblanc Monte Rosa 14C-M ペン芯めくれ!   
2007-12-22 Montblanc '50年代 No.144G 14K-M ボロボロ 
2007-12-19   Montblanc No.146 14K-F 細字スタブに・・・ 
2007-12-15   Nagasawa 125周年記念 14K-MF カリカリ直して!  
2007-12-12   Montblanc '80年代 No.146 14K-F ペン先ズレ
2007-12-10   Sheaffer Imperial Silver 14K-F ペン先曲がり
2007-12-05   Montblanc '70年代 No.149 14C-M がさつな書き味
2007-12-03   Montblanc L139G 14C-KM 健康診断
2007-12-01   Montblanc '50年代 No.146 14C-M 死地からの復帰
2007-11-28   Montblanc No.142 14C-F 相対評価の果てに・・・
2007-11-26   Montblanc No.147 14K-OM 羊の皮をかぶった山羊
2007-11-24   WAGNER 2007 18C-B 王子からの依頼
2007-11-21   Montblanc No.254 14C-EF ペン先曲がりと・・・
2007-11-19   Parker 75 14K-63 女王様の憂鬱
2007-11-17   Montblanc No.146 14C-OBB 筆記角度30度の世界
2007-11-14   Aurora エウロパ 18K-F 持久力向上 
2007-11-12   Montblanc No.342 G 14C-KF インクが出ない! 
2007-11-10   Pelikan 400NN 緑縞 14C-OM カモノハシ化 
2007-11-07   Stipula ピノキオ 赤軸 18K-M インク切れ解消
2007-11-05   Montblanc No.146 18C-F 書き味品位向上
2007-10-31   Waterman セレニテ 18C-M ペン先曲がり
   
2007-10-29   Pelikan 400NN 緑縞 14C-M ピストン/フロー改善
2007-10-24   Stipula ピノキオ 青軸 14K-M 字幅改善
2007-10-22   Montblanc No.252 14C-F フロー改善
2007-10-20   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF ヌラヌラ化
2007-10-17   Osmia 64 → Matador Click ペン先移植
2007-10-15   Matador 996 ピストン修理に松脂利用実験
2007-10-13   Montblanc No.34 14C-M グレー軸   
2007-10-10   Pelikan 140 赤軸 & Gel Medium 
2007-10-08   Montblanc モンテローザ ピストン交換 
2007-10-06   Parker バキューマティック ペン先曲がり 
2007-10-03   Montblanc No.1466 14K-M いぶし銀
2007-10-01   Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 
2007-09-29   吸い込まれるような透明軸 Chronoswiss
2007-09-26   Montblanc 80年代 No.146 14K-EF 胴軸交換
2007-09-24   20年間酷使した Pelikan M800の復活 
2007-09-22   女王からの依頼 : ペン先の無いセルロイド軸 
2007-09-19   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF キャップ交換
2007-09-17   万年筆博士 水牛軸 14K-HM 曲げ戻し 
2007-09-15   Senator President 14C-B 交換後 
2007-09-12   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thin 
2007-09-10   Pelikan ナイアガラ 18C-B 交換後  
2007-09-08   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thick
2007-09-05   Montblanc 50年代No.144 14C-B 
2007-09-03   Montblanc 80年代No.146 14K-EF ペン先曲がり 
2007-09-01   Montblanc No.342 14C-KM 

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(9) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
ありがとう御座います、カメラもそうですが レストアすれば寿命が延びる固体もあります、万年筆も使い方・手入れで寿命が延びるのでしょうね〜!
今度当地(浜松方面)では、3月にペンクリがあります 初めてですが行って見たいと想いますよ・・・手入れするのは無いですが (^^♪
Posted by ライカ市とし at 2008年02月18日 20:17
ライカ市とし しゃん

軸を溶かすのは酸ではなく、溶剤ですな。

もっともよく溶かしてくれた、Parkerのペンマンインクはph7付近でした。すなわち、まったくの中性でした・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年02月18日 01:08
貴重なお時間にレスをありがとう御座います、やはりインクが原因でしたか・・・。先日デパートの売り場で聞いた話ですが、パイロット社ではパイロットの製品には「モンブランのインクを使用しないで欲しい」とか言ってるそうです、モンブランのインクは「酸性が強いとか」・・・。
モンブランのブルーブラックを入れて使ってたから「酸で穴?」と妙に納得でした(汗)
Posted by ライカ市とし at 2008年02月17日 23:17
ライカ市とし しゃん

Parker45か首軸がインクで溶けて穴が空くことがある。仕方ありませんな。
セーラーの限定品は、たいてい1911年の操業から数えての年数じゃ。す85周年なら1996年発売ということになる。
Posted by pelikan_1931 at 2008年02月17日 23:01
ありがとう御座います、キャップに「パーカー45 メイドインオーストラリア」と書いて有ります、ニブは金色サイズ不明クリップや全体はステンレス風・・・。若い時に(56歳)デパートで買いました。想い出一杯の万年筆ですが、インクを付けペンとしてしか使えないようですよ・・・。
その他、近年(?)に買った「セーラー85周年のシータ」は何の記念かは知りませんでした・・・m(__)m
Posted by ライカ市とし at 2008年02月17日 20:56
ライカ市とし しゃん

首に穴が空くとはおもしろい。どんなモデルだったのか気になりますな。
Posted by pelikan_1931 at 2008年02月17日 17:03
初めまして、ライカ市とし と言う変な名前でカメラや釣を楽しんでいます。
こちらで たくさん勉強して「万年筆の奥深さ」を認識いたしました。
昔のパーカーを洗浄したら、首軸に穴が開いてました(残念)
それからは色々欲しくなり新品等を購入したりと、ズッポリ万年筆にはまりそうです(笑い)今後とも勉強させてくださいませ〜。m(__)m
「ぺん!ぺん!〜」を取り寄せましたぁ〜素晴らしいですね〜!(^^♪
Posted by ライカ市とし at 2008年02月17日 09:37
venezia 2007 しゃん

No.25Xの太字も、Pelikanと同じくうすっぺらいニブじゃ。筆記角度合わせを慎重にやればそれほど難しくない。

No.256のEFやFを体験すると世界が変わるかも知れませんぞ・・・

Posted by pelikan_1931 at 2008年02月05日 06:51
この記事を読みながら、目の前には254のBBがあります。最近、太字の世界に嵌りつつあるも、まだまだその深みの更なる所に陥るまでには達していない私ですが、是非ともその世界を覗いてみたい気がします。次の生贄は決定です。師匠のお気に召すままに弄って頂き、別物に生まれ変わったそれを是非堪能してみたいと思います。よろしくお願いします。
Posted by venezia 2007 at 2008年02月04日 21:43