2008年02月11日

月曜日の調整報告 【 Montblanc No.149 14C-M 掠れる・・・実は大変 】

2008-02-11 01 今回の依頼品はMontblancのNo.149の現行モデル・・・に装飾をほどこしたもの。一世を風靡した蒔絵シールの発展型かな?

 数年前に蒔絵シール(本来は携帯装飾用)が登場した時は、競って軸に貼ったものじゃ。特に風神・雷神が人気!暗いところで見せると、かなりの萬年筆ヲタクでも両手を添えて持ち、息をのむほど・・・精巧に出来ていた。

2008-02-11 02 それにくらべるとこちらはチャームのようで、女学生好み!それをNo.149のキャップに貼る【おじさん】というのはイケテル

 貼り方がくどくないのも良い。拙者がやったらキャップをチャームで埋め尽くしてしまったことであろう・・・最悪なセンスなのでな。

 症状は本人曰く縦が掠れるインクフローが悪い書き味に気品がない】ということ。

 【書き味の品格
】を言い出したのは、この依頼者が最初ではないかな?この後で、拙者が【上品な書き味スイートスポットから生まれる書き味】と定義したのじゃ。すなわちこの依頼者こそが【書き味の品格】の提唱者・・・かも?

2008-02-11 03 このNo.149のペン先には調整が施されている。おそらくは依頼者自身が調整したのであろうが、なかなか上手!面取りの仕方などうまいものじゃ。

 それでも書き味に納得がいかないのはインクフローが悪いから。書き味向上に効果があるのは;

1.左右の段差調整(書き癖に合わせて段差を付けること)
2.インクフローの向上(インク量を増やして筆圧を下げさせること)
3.研ぎ(筆記角度に合わせてペンポイントを研ぐこと)

の順! 

 研ぐまでもなく書き味向上は出来る。拙者は見映え重視なので【左右の段差調整】はやらないが、持ち方の特殊な人には最も効果がある。今後の研究課題じゃな。


 依頼品のペン先は多少お辞儀が強く、ペン先のスリットが詰まりすぎている。こういう場合はペン先を抜いてお辞儀やスリット間隔を調整する必要がある。

 ということで、専用工具でピストン機構を後ろから外したら・・・

2008-02-11 04 弁の部分が外れてピストン機構だけが後ろに抜けた弁がピストン内に残ったわけじゃ。左画像の右下の白い弁が上のピストン内に残って取れなくなってしまった。こういう事故は初めて!

 ペンクリ会場では手の施しようが無いので自宅に持ち帰ってピストンを歯科器具で引っ張り出した。

2008-02-11 052008-02-11 06 ペン芯は樹脂製なので、エボ焼けは無い。しかしかなりのインクカスが付着している。
 またペンポイントは背開きで、ペンポイントの下側が衝突している。

 通常はペン先がお辞儀していると腹開きになる。ところがお辞儀していても背開きというのを、少ないお辞儀で腹開き気味に変えるのは結構時間がかかる。幸いにして18金ペン先で、鍛錬を施していない現行品は比較的変形させるのが容易。これが1970年代のペン先だったら・・・とぞっとした。

 ペン先調整をする人間にとっては現行ペン先は楽!少し力をかけるだけで容易に思い通りに形を変えてくれる。調整する立場から言えば、頑固なVintage ニブよりも現行品の方がはるかに素直でカワイイ!メーカーも加工のしやすさを考えて素材を変えていったのじゃろう。


2008-02-11 072008-02-11 08 こちらが清掃し、形を整えてスリットを若干拡げた状態のペン先の表裏。

 いつ
見ても首軸内部が長いNo.149のペン先には感心してしまう。調整がズレにくいという面ではNo.1の萬年筆じゃ。さすがは萬年筆の王者を自認するだけの事はある。

2008-02-11 09 上が元々ついていた弁であるが、非常に外れやすい。樹脂のストッパーが滑りやすくなっていたので、下のNo.146(についていた)弁と交換した。

 1970年代以降のNo.149とNo.146は胴軸内径は同じで、尻軸を除くピストン部分は共有出来る(太さを揃える金の輪は必要だが)。従って時代の違うNo.146の弁をNo.149に
流用することも出来る。下のタイプの方が外れにくい構造になっているのでこちらを採用することにした。

2008-02-11 10 こちらが18K-Bのペン先を首軸にセットした状態。惚れ惚れするほど美しい!

 上から三番目の画像と同じペン先とは思えないじゃろう?書き味はともかく、美しく仕上がった時は満足感が高い。今回はひさかたぶりの大成功じゃ!


【 今回執筆時間:5.0時間 】 画像準備1.5h 調整2.0h 執筆1.5h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間 
 


【これまでの調整記事】

2008-02-09 Pelikan M320 オレンジ 14C-M 呼吸困難 
2008-02-06 Montblanc No.144G 14C-M ペンポイント凸凹
2008-02-04 Pelikan 140 14C-M ペン先交換 → BB 
2008-02-02 Montblanc No.149 合体して開高健 
2008-01-30 Sheaffer 1000 黒縞 吸入機構完全取替 
2008-01-28 Montblanc 50年代 No.144 14C-F どん底
2008-01-26 Pelikan M320 緑 14C-M 背開き 
2008-01-23 Montblanc No.242 なんとか一人前に・・・ 
2008-01-21 Montblanc モーツァルト生誕250周年 時々切れる・・・
2008-01-19 Montblanc No.146 14K-BB 不思議とひっかかる 
2008-01-16 Montblanc チャールズ・ディケンズ 18K-M の呼吸困難
2008-01-14 Montblanc No.342緑 14C-B改造がひっかかる 
2008-01-12 Sheaffer Crest 14K-F 赤インクが接着剤    
2008-01-09 Omas Gentleman 14K-F キャップが・・・
2008-01-07 Shesffer Snorke 14K-F 吸入機構動かず 
2008-01-05 Montblanc No.149 14C-B 書き味に品がない! 
2008-01-02 丸善 ATHENA 萬年筆 14K-F 復活!
2007-12-31 Montblanc No.1464 18K-M ペン先から落下!

2007-12-29 Montblanc No.342 14C-M ペン芯を太らせる 
2007-12-26 Pelikan 500NN 暗緑縞 14C-EF ペン先グラグラ!
2007-12-24 Montblanc Monte Rosa 14C-M ペン芯めくれ!   
2007-12-22 Montblanc '50年代 No.144G 14K-M ボロボロ 
2007-12-19   Montblanc No.146 14K-F 細字スタブに・・・ 
2007-12-15   Nagasawa 125周年記念 14K-MF カリカリ直して!  
2007-12-12   Montblanc '80年代 No.146 14K-F ペン先ズレ
2007-12-10   Sheaffer Imperial Silver 14K-F ペン先曲がり
2007-12-05   Montblanc '70年代 No.149 14C-M がさつな書き味
2007-12-03   Montblanc L139G 14C-KM 健康診断
2007-12-01   Montblanc '50年代 No.146 14C-M 死地からの復帰
2007-11-28   Montblanc No.142 14C-F 相対評価の果てに・・・
2007-11-26   Montblanc No.147 14K-OM 羊の皮をかぶった山羊
2007-11-24   WAGNER 2007 18C-B 王子からの依頼
2007-11-21   Montblanc No.254 14C-EF ペン先曲がりと・・・
2007-11-19   Parker 75 14K-63 女王様の憂鬱
2007-11-17   Montblanc No.146 14C-OBB 筆記角度30度の世界
2007-11-14   Aurora エウロパ 18K-F 持久力向上 
2007-11-12   Montblanc No.342 G 14C-KF インクが出ない! 
2007-11-10   Pelikan 400NN 緑縞 14C-OM カモノハシ化 
2007-11-07   Stipula ピノキオ 赤軸 18K-M インク切れ解消
2007-11-05   Montblanc No.146 18C-F 書き味品位向上
2007-10-31   Waterman セレニテ 18C-M ペン先曲がり
   
2007-10-29   Pelikan 400NN 緑縞 14C-M ピストン/フロー改善
2007-10-24   Stipula ピノキオ 青軸 14K-M 字幅改善
2007-10-22   Montblanc No.252 14C-F フロー改善
2007-10-20   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF ヌラヌラ化
2007-10-17   Osmia 64 → Matador Click ペン先移植
2007-10-15   Matador 996 ピストン修理に松脂利用実験
2007-10-13   Montblanc No.34 14C-M グレー軸   
2007-10-10   Pelikan 140 赤軸 & Gel Medium 
2007-10-08   Montblanc モンテローザ ピストン交換 
2007-10-06   Parker バキューマティック ペン先曲がり 
2007-10-03   Montblanc No.1466 14K-M いぶし銀
2007-10-01   Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 

Posted by pelikan_1931 at 11:00│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
venezia 2007 しゃん

60年代のNo.149以外は全てピストンは共有できる。どの時代の物でも使えるのが良い。

60年代のNo.149は軸が割れやすいのと、ピストンが硬くなって尻軸をねじ切ってしまうトラブルが多発するので、お奨めは出来ない。
Posted by pelikan_1931 at 2008年02月11日 23:17
魔神武ぅしゃん

分解道具は、venezia 2007しゃんが企画中。もう少し待たれよ。
Posted by pelikan_1931 at 2008年02月11日 23:13
下から二つ目の写真及び弁についての記述の確認ですが、146 と 149 の同軸寸法は同じでピストン機構は出来る所は共通化しているので、146 の弁を149 に使うことはできるが、(その逆も可ですよね。)下から二つ目の写真にあるように、146 オリジナルの弁は写真向かって左側の方が弁の径は大きく(そこでシールする。)、149 オリジナルは写真向かって右側の方が弁の径は大きくそこでシールするということで宜しいのでしょうか。但し、どちらの弁も、径が大きい方の方向は異なるがどちらのピストン機構にも使えるということですね。
Posted by venezia 2007 at 2008年02月11日 18:53
調整ありがとうございました。
人生二度目の素人調整お褒めいただきありがとうございます。
ちょいと自身がわきました

蒔絵シールは、かなり下品に貼ったのですが自然に取れた次第です。
いまや全部取れてしまいました。

浮気性でインクをころころと変えたいので、いづれ道具を自作し分解調整とはいかずともモンブラン・ペリカンの分解清掃をしたいと思います。
ご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
Posted by 魔神武ぅ at 2008年02月11日 13:59