症状は書き始めで、ペンをひっくり返してペン先とペン芯を密着させないとインクが出ないととか。これはPelikan 140でありがち。ペン先とペン芯が離れているために起こる現象じゃ!
具体的には左の図のようになっている。ペン先とペン芯の間に隙間があるために、インクがペン芯先端までこない。しかもペン先が肉厚でしならないため、筆圧をかけるとペン先全体がペン芯から離れようとしてしまう。従って少なくとも筆圧をかけない状態ではペン先とペン芯が密着している必要がある。書き出しでインクが出れば、ポンプ運動の影響で多少ペン先とペン芯が離れてもインクは押し出されてくるからな。

答えは、スキャナーのカバーの重み。左側の画像ではエラを開く方向に重量がかかり、右側ではお辞儀させるように重量がかかるから。通常は紙を乗せてスキャンするのだが、今回はカバーをおろして変化を試してみた。
こちらが清掃後の姿。見違えるように綺麗になったのがわかろう。汚れもインクフローの悪化に重大な影響を及ぼすので、定期的に清掃することが望ましい。清掃が終わったからといって、ペン先とペン芯の密着が出来るわけではない。Pelikan 140のように、元々ペン先がお辞儀しているペン先の場合、それ以上はお辞儀させられない。
従ってペン先とペン芯の間に隙間がある場合、密着させる為にはペン芯を削るしかないのじゃ。この個体はペン先とペン芯をそれぞれ別の個体から持ってきて合体させたのだろう。出荷時からこれほど離れることはないし、筆圧で離れるほどヤワなペン先でもない。
そこからペン芯を少しずつ削っては合わせ、削っては合わせ・・・を延々3時間ほど実施してようやくある程度の成果が出た。それにしても思ったより時間がかかった。Montblancのペン芯であれば高温のお湯に入れればアメのように曲がってくれるが、Pelikanのペン芯は熱湯に入れようともびくともしない。これがPelikanのVintageがいま一歩好きになれない一番の理由。
壊れにくい設計も重要だが、調整しやすい事も大事。個々の部品の精度は完璧だが、他の部品の不具合を、別の部品の調整で補完出来ないところが弱点!
必要なのは個の最適ではなく、全体最適なのじゃ。
何の圧力もかかっていない状態で、ごくわずかにペン先のスリットが開いている。この状態が萬年筆にとって最適。少なくとも低い筆圧で書き出す人には、この状態でないと紙にインクがつかない。ペン先をこの状態にするのは、それほど難しくない。ただしペン芯に乗せたときに、この状態を保つようにペン芯を削るのには時間がかかる。ものすごく疲れる作業じゃ。

こちらが完成した状態の横顔。ペン先も多少お辞儀を強めてある。そのお辞儀の状態に合わせてペン芯を削ったのじゃ。ペンポイントの研磨にはそれほど時間をかけていない。依頼者の筆圧から考えれば、引っ掛かりが気になる確率は低いと読んだ。
将来、筆圧や筆記角度が変わって調整が必要になるころには、WAGNERには調整しがゾロゾロ出現しているはず。ひょっとすると依頼者本人が、その技を身につけているかも知れない。
【 今回執筆時間:9.0時間 】 画像準備2.0h 調整5.5h 執筆1.5h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間