2008年03月05日

水曜日の調整報告 【 Montblanc No.149 75周年記念 18K-EF 】

2008-03-05 01 今回の患者は、いままで調整依頼をうけた中で最も高価かもしれない。

 Montblanc No.14975周年記念 18K-EFで、全身ピンクゴールドで鍍金され、ホワイトスターはマザーオフパーじゃ。この天冠部分(ダイヤモンド付)と鍍金、そしてペン先の刻印以外は通常のNo.149と同様なので、隠れたオシャレ風で実に良い感じ。萬年筆自体が主張しないのでスーツの胸ポケットにさりげなく挿しても嫌みにならない。

2008-03-05 02 ペン先を見ると、マイスターシュテュック75周年記念であることがわかる。決してMontblanc社の創立75周年でも、No.149の75周年記念でもなく、【マイスターシュテュック】の75周年記念という事だろう。

 第一号のマイスターシュテュックは何だったのかな?調べればすぐわかるのだろうが、花粉症の薬で頭が朦朧としている上、少しだけ飲んだアルコールが追い打ちをかけて・・・調べる気力がわかない・・・誰が調べてくらは〜〜ぃ・・・

2008-03-05 03 横から見た姿は現行品のNo.149とまったく同じ。拙者の好みからすれば、ペン芯の位置が前すぎるのだが、現行品はペン芯にストッパーがあり、ペン先の位置が固定されるようになっている。こういう場合は、敢えて位置変更しないようにしている。

 メーカーは世界中の気候や暮らし方(砂漠の炎天下で手紙を書く?)を研究した上で、最もトラブルが少ないと考えられる位置にペン先とペン芯をセットしているのであろう。国内で、しかも室内で使うのであれば、ペン芯はもう少し後退していても問題はないのになぁ・・・

2008-03-05 04 上から2枚目の画像(首軸にセットした状態)ではペン先のスリットが詰まっていたが、この写真では多少開いている。これは前回と同様に、スキャナーの蓋の重さでスリットが開いた状態になったから。どの程度力がかかればスリットが開くかの実験。

 スキャナーの蓋が与える圧力はごくわずか。すなわち多少でも筆圧をかければインクはドクドク出る設計になっている。ただし、書き出し筆圧が限りなくゼロに近い人にとっては掠れる可能性があるのじゃ。

2008-03-05 05 こちらは裏側。エボナイト製ペン芯ではないせいもあるが、全く汚れていない。

 裏側全体がザラザラに仕上げられているのは、インクの保持能力を上げる工夫かな?ペンクリを経由した物ではたまに見かけるが、メーカー出荷段階でも滑面仕上げにしていないとは!

 通常、こういうざらついた表面には、鍍金セットあたりでは上手く鍍金が出来ないもの。ところがさすがMontblanc!裏側にも完璧なピンクゴールド鍍金がかけられている。本当はロジウム鍍金の方がインクフローは良いらしいが、見映えを重視したのであろう。コレ大賛成!破綻のあるデザインの物には愛着がわかないのでな。

2008-03-05 06 この画像は貴重!ピストン機構を胴軸に固定する内部部品。上が通常品で、下が今回の限定品。なんとこの部品の全身にピンクゴールドの鍍金がかかっている?あるいは赤っぽい色の真鍮で作った?

 いずれにしても、このこだわり方はすごい!外装だけでごまかしている限定品が多い中、絶対にユーザに見られることのない部分にまで手を抜かないこだわり!良いなぁ・・・どうせなら全製品に適用して欲しいものじゃ!

2008-03-05 072008-03-05 08 こちらはスリット調整後のペン先。今回の撮影では軽い紙を被せてスキャンした。従ってスキャナーの蓋の重みでスリットが開いているわけではない。

 依頼者からは、可能な限り【ドバドバのインクフローにして!】と依頼されていた。いくらがんばってもEFでのドバドバは無理!可能な限り【インクがにゅるにゅる】出てくるように仕上げてみた。


2008-03-05 09 こちらがペン先を首軸にセットした状態。通常なら調整はここで95%は終了しているのだが、今回はここからが勝負!

 依頼者は左書きじゃ。拙者も箸と筆記以外は左利きだが、筆記は右。従って調整結果を試すにはかなり時間がかかる。

 EFならこのあたりが限度かな?というレベルにはなった。依頼者はこれで満足したかに見えたが、拙者が最後にポロっとしゃべった言葉に反応した。

 【一回もインクを入れていないが、同じモデルでOBB付きを持ってる・・・


 後日【いつの日にか、お嬢様をいただきにまいります】というようなお手紙が舞い込んだ・・・



【 今回執筆時間:5.0時間 】 画像準備1.5h 調整2.0h 執筆1.5h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間
 
    

【これまでの調整記事】

2008-03-03 Montblanc No.342 14C-F 満身創痍 
2008-03-01 Pelikan 140 緑縞 14C-M ペン芯調整:苦闘3時間 
2008-02-27 Montblanc No.142 14C-M 壮絶なる死闘
2008-02-25 Pelikan 1931 ホワイトゴールド スイートスポット 2点 
2008-02-23 '80年代後半 Montblanc 14K-M 再鍍金    
2008-02-20 Pelikan 100N 14C-KF あやしいペンポイント 
2008-02-18 プラチナ Sterling Silver 地獄からの復活 
2008-02-16 Montblanc N0.142 14C-O はたして直るか?  
2008-02-13 Pelilam M250 バーガンディー 切り割りからドクドク  
2008-02-11 Montblanc No.149 14C-M 掠れる・・・実は大変 
2008-02-09 Pelikan M320 オレンジ 14C-M 呼吸困難 
2008-02-06 Montblanc No.144G 14C-M ペンポイント凸凹
2008-02-04 Pelikan 140 14C-M ペン先交換 → BB 
2008-02-02 Montblanc No.149 合体して開高健 
2008-01-30 Sheaffer 1000 黒縞 吸入機構完全取替 
2008-01-28 Montblanc 50年代 No.144 14C-F どん底
2008-01-26 Pelikan M320 緑 14C-M 背開き 
2008-01-23 Montblanc No.242 なんとか一人前に・・・ 
2008-01-21 Montblanc モーツァルト生誕250周年 時々切れる・・・
2008-01-19 Montblanc No.146 14K-BB 不思議とひっかかる 
2008-01-16 Montblanc チャールズ・ディケンズ 18K-M の呼吸困難
2008-01-14 Montblanc No.342緑 14C-B改造がひっかかる 
2008-01-12 Sheaffer Crest 14K-F 赤インクが接着剤    
2008-01-09 Omas Gentleman 14K-F キャップが・・・
2008-01-07 Shesffer Snorke 14K-F 吸入機構動かず 
2008-01-05 Montblanc No.149 14C-B 書き味に品がない! 
2008-01-02 丸善 ATHENA 萬年筆 14K-F 復活!
2007-12-31 Montblanc No.1464 18K-M ペン先から落下!

2007-12-29 Montblanc No.342 14C-M ペン芯を太らせる 
2007-12-26 Pelikan 500NN 暗緑縞 14C-EF ペン先グラグラ!
2007-12-24 Montblanc Monte Rosa 14C-M ペン芯めくれ!   
2007-12-22 Montblanc '50年代 No.144G 14K-M ボロボロ 
2007-12-19   Montblanc No.146 14K-F 細字スタブに・・・ 
2007-12-15   Nagasawa 125周年記念 14K-MF カリカリ直して!  
2007-12-12   Montblanc '80年代 No.146 14K-F ペン先ズレ
2007-12-10   Sheaffer Imperial Silver 14K-F ペン先曲がり
2007-12-05   Montblanc '70年代 No.149 14C-M がさつな書き味
2007-12-03   Montblanc L139G 14C-KM 健康診断
2007-12-01   Montblanc '50年代 No.146 14C-M 死地からの復帰
2007-11-28   Montblanc No.142 14C-F 相対評価の果てに・・・
2007-11-26   Montblanc No.147 14K-OM 羊の皮をかぶった山羊
2007-11-24   WAGNER 2007 18C-B 王子からの依頼
2007-11-21   Montblanc No.254 14C-EF ペン先曲がりと・・・
2007-11-19   Parker 75 14K-63 女王様の憂鬱
2007-11-17   Montblanc No.146 14C-OBB 筆記角度30度の世界
2007-11-14   Aurora エウロパ 18K-F 持久力向上 
2007-11-12   Montblanc No.342 G 14C-KF インクが出ない! 
2007-11-10   Pelikan 400NN 緑縞 14C-OM カモノハシ化 
2007-11-07   Stipula ピノキオ 赤軸 18K-M インク切れ解消
2007-11-05   Montblanc No.146 18C-F 書き味品位向上
2007-10-31   Waterman セレニテ 18C-M ペン先曲がり
   
2007-10-29   Pelikan 400NN 緑縞 14C-M ピストン/フロー改善
2007-10-24   Stipula ピノキオ 青軸 14K-M 字幅改善
2007-10-22   Montblanc No.252 14C-F フロー改善
2007-10-20   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF ヌラヌラ化
2007-10-17   Osmia 64 → Matador Click ペン先移植
2007-10-15   Matador 996 ピストン修理に松脂利用実験
2007-10-13   Montblanc No.34 14C-M グレー軸   
2007-10-10   Pelikan 140 赤軸 & Gel Medium 
2007-10-08   Montblanc モンテローザ ピストン交換 
2007-10-06   Parker バキューマティック ペン先曲がり 
2007-10-03   Montblanc No.1466 14K-M いぶし銀
2007-10-01   Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(9) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
koukiしゃん

MeisterStuckの最初期・・・まさにこれでしょうな。勘定が合う!

Posted by pelikan_1931 at 2008年03月06日 18:51
怠猫 しゃん

だんだんと危険な兆候が出ておるようじゃな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年03月06日 18:50
オヴリーク2104しゃん

にゅるにゅる、お楽しみのようで安心いたした。
Posted by pelikan_1931 at 2008年03月06日 18:49
二右衛門半しゃん

持ってはおるのじゃが、数回しかキャップをあけた事がない・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年03月06日 18:48
連続書き込みすみません。

MeisterStuckの最初期っておそらくこれでないでしょうか?


http://www.fountainpen.de/old-20er-45er-meisterstueck.htm
Posted by kouki at 2008年03月05日 23:17
まだまだ手がとどかない…(もちろんですが)
ただそうやって細かいところまでこだわっている様子のはすばらしい!
分解した画像をみているだけでおなかいっぱいです

あーモンブランいいなぁ。
モンブラン信者になる予感が最近しています。
自分、次は146行きます♪(買えるめどは立ちませんが
どっかに落ちてないかな〜
Posted by kouki at 2008年03月05日 23:08
お師匠様、こんばんは。

>【一回もインクを入れていないが、同じモデルでOBB付きを持ってる・・・】

いいなぁ

ふと...
ちび猫:「一生、大切にします!」
お師匠様:「だめじゃ!おぬしは,愛人が多すぎる。」
ちび猫:「そんなことはありませぬ...」

ぱらぱら♪@紙をめくる音

お師匠様:「ほれ、独逸が3人。大和撫子も1人。来月はもう一人囲う気じゃろ」
ちび猫:「ぎくっ!」
お師匠様:「ふふふ〜ん♪(^^)」

↑こんなおバカな話を思いつきました。

なんか竹取物語の様相を呈してきました...
(派生系として“ニブ取物語”というのもありますが...)
Posted by 怠猫 at 2008年03月05日 22:17
師匠 今晩は、
調整ありがとうございました。
“にゅるにゅる”大いに堪能させていただいております!!

お嬢様の件、、オブリークに思いっきり反応してしまいました。
いゃ~、前後をわきまえずと申しましょうか、、、。
Posted by オヴリーク2104 at 2008年03月05日 21:13
えええぇーぇーぇー!
そういうものを持っておられるのですかぁーぁーぁー。
いいですね〜♪
Posted by 二右衛門半 at 2008年03月05日 07:28