2008年04月17日

解説【萬年筆と科學】 その76 Watermanの萬年筆工場

2008-04-17 01 今回はウォーターマンの工場の視察。文章を読むと渡部氏の精神が非常に高揚しているのがわかる。ずっと目標にしてきた会社の主要工場ということで、いよいよやって来たぞ!と意気込んでいたのであろう。甲子園に初出場した野球部の監督の心境かも知れない。

 【車がウォーターマンの工場の前に止まった時には、さすがに胸のおどる思いがしました】・・・この一言が渡部氏の心境をうまく良い表している。

 左上の写真は、工場を飛行機から見た姿、下は正面の道路を隔てて見た姿で、下の手書き図面は構内配置図じゃ。

 それにしても驚くほど大きな工場じゃな。ここは工場だけで、本社機能はニューヨークにあったとか。ちなみに、この工場はニューヨークから30キロほど離れていた。所在地はニューーク


2008-04-17 02 この見取り図によれば、敷地面積は5,940坪、工場建坪1,161坪、ボイラー室建坪162坪で、建坪合計1,322坪。そして延坪数では、工場(五階建て)5,805坪ある。パイロット工場の総延坪数の4倍

 渡部、和田の両氏は、工場の表玄関の受付にいって、工場見学したいと申し出たが、本社の許可が無ければ見せられないとキッパリと断られたらしい。何社も調査していたので、度胸がすわり、正面突破をこころみたらしいが、両氏の予想どおりの反応しか返ってこなかったようじゃ。

 当時のウォーターマン社の子会社の一つに、Ailin-lambert Co., Inc. があったと書かれている。通称:エイキンランバートというのは、てっきり萬年筆製造会社だと思っていたが、1889年創立、1906年にウォーターマン社に合併された会社で、この時点では販売会社であり、製造には関係せず、商品はウォーターマン社から供給されていたらしい。ブランドとして残っていたかどうかは不明だが、Ailin-lambert
の萬年筆は使ったことがないこともあり、急に興味が湧いてきた。

2008-04-17 032008-04-17 04 左はこの当時の米国における各社の状況をまとめたものである。非常に貴重な資料!

 現在では、項目名は左側と上側に記述するが、この表では右側と上側に項目名があるので、非常に見にくい。

 当時の米国での総生産本数は1,600万本程度で、日本の約4倍。

 考えていたよりも日本の生産本数が多いような気がする。あるいは、渡部氏が想定した、【無名萬年筆メーカーの製造本数が全体の40%】がもう少し多いのではないかな?

 それにしてもこの時点で、パーカーがウォーターマンの製造本数を超えていたのは、渡部氏にとってもショックだったようだ。

 それから70年経過して、この表ではParker、Waterman、Sheafferしか存続しておらず、さらにParkerとWatermanが同じ資本、SheafferはBic傘下
。独自資本で経営されているのは、実はパイロットだったりする。そのパイロットも企業防衛策をとることがHPに掲載されている。社長メッセージとして。ガンバレ!パイロット!と応援したくなる。なんせこのところ業績はすごく良いからな・・・



Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(6) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 文献研究 
この記事へのコメント
怠猫 しゃん

全盛期のパーカーは、米国なら51、日本なら75でしょうな。
Sheafferなら、書き味は文句なくスノーケルの巻きペンの細字。
Posted by pelikan_1931 at 2008年04月18日 07:32
Bromfield しゃん

復活コンクリンにはViscontiが作ったものがありましたな。
全てそうかどうかは知りませんが、なかなか良い作りです。
Posted by pelikan_1931 at 2008年04月18日 07:30
二右衛門半しゃん

ことしは何になるのかな?アングラでは噂が飛び交っているが・・・さて?
Posted by pelikan_1931 at 2008年04月18日 07:28
パーカーが全米トップでしたか。
ちび猫の生息時代は、万年筆と言えば“モンブラン”が浮かびます。
全盛期のパーカー・シェーファーは知りません。(涙)
最近、65周年モデルを前足にしてからパイロットが好きです。
いわゆる“温故知新”。#845がすごく気になります。
Posted by 怠猫 at 2008年04月17日 23:37
コンクリンのペンをペンショーでよく見かけたので、本文で現在も存続している会社に列挙されていないのを不思議に思い調べてみると、私の見た万年筆は2000年に復活した会社のものだったことも知りました。

アメリカのペン・ショーの主役は、Parker、Waterman、Sheafferでした。ところが前2社はヨーロッパに本拠を移し、Sheafferもフォート・マディソンの工場は閉鎖。フラッグシップのValorはイタリア製。Legacy Heritageのニブはアメリカ製でも、最終組み立てはチェコで行われているとのこと。良い万年筆ならば、どこで生産されても良いと思うのですが、アメリカ製の万年筆がだんだん少なくなるのは、少し寂しい感じもします。

九州の宇佐で生産された鉛筆にMade in USAと表示したところ、飛ぶように売れたとのことを聞いたことがあります。真偽のほどは別として、舶来品、アメリカ製筆記具の黄金期を彷彿とさせます。今は昔の話ですね。

Posted by Bromfield at 2008年04月17日 11:55
今年はパイロットの周年記念の発売年、どんなすばらしいものが出るのか楽しみですね。
パイロットの周年記念って、ちょっと珍しいのを1本しか持ってないですけど・・・

Aikin-lambertは、持っていないなぁ・・・
クロスが製作したMPにもしかしたらその名前が入っていたのがあったような気もするが。。。
Posted by 二右衛門半 at 2008年04月17日 07:35