今回の依頼品はOMAS ミロードの青軸。伊太利亜人が作り上げる青色は何故こんなに魅力的なのか不思議!
鮮やかな青も魅力的だが、こういうくすんだ青にはよりいっそう心惹かれる。黒を描かしたら日本の方が優れているが、青は伊太利亜に負ける。赤はインドネシアもなかなか優れている・・・
今回は、あまりのインクフローの悪さに【生贄】として提供された。一人で楽しむにはもったいないので、拙者が形状を整えた後で、別の調整師にも楽しんでもらおうかな・・・
こちらがペン先ユニットと首軸の分解図。昔はティッシュなどでは水を拭わなかった。やるとこうなる。しかし今は平気。
アスクルのエアーダスターでシュッっとやれば一発でティッシュのカスは飛ぶ。ただしフロンの10%程度の影響度とはいえ、【地球温暖化ガス:HFC-152a】が含まれているので、必要以上に使用しないようにとの注意書きがある。
ペン芯はエボナイト製。カートリッジ式専用であるため、ペン芯からカートリッジの中まで空気を通す管が必要となる。またこの管を通ってインクもペン芯まで運ばれるので非常に重要!
この管もエボナイトで出来ていると思われる。空気とインクを上手く入れ替えるには非常に精密な機構が必要だと思うのだが、「それがエボナイトで達成できるのかいな?と多少疑問・・・
こちらはカートリッジを背中合わせに入れて、胴軸にネジ込む仕組み。Montblanc No.147もコレに似ていた。
カートリッジはインク吸入時に手を汚さないので、汚染度の高いインクを使う場合には重宝する。パイロットの新作インクなどはカートリッジで販売して欲しい。
手が真っ青になって何で洗っても落ちない強烈な汚染度を見せつけられると、とても吸入式で使う気にはなれない。萬年筆には無害だが、吸入後、首軸を拭う際に手が汚れるリスクが高い!
あのインクを入れてある萬年筆は、拙者のペンクリでは調整を受け付けない ので、ちゃんとインクを抜いて、水で完璧に洗浄してから持ってくるのじゃぞ。
ちなみに拙者はあのインクは全て捨てた!瓶の設計は秀逸なので別のインクを入れて重宝している。
ペン先はまったく汚れていない。エボ焼けもない。購入してからほとんど使ってないと思われる。
それにしてもペンポイントの取り付け方が素人くさいな。こんなに先端を溶かさなくても良さそうな物なのに・・・
ペンポイントの取り付け部は柔らかいので、戻りも大きい。拡大図で見ると、スリットが取り付け部で密着している。これでは先端までインクは来ない!
これが工場の検品ではじけるものなのか、その後に戻りが発生したのかはわからない。少なくとも品質管理担当は、萬年筆を本当にわかっていない人がやっているとしか思われない。
ルイ・ヴィトングループへ吸収された後、徐々に有能なペン先技術者がはじき出された、あるいは、飛び出したのかも知れない。75周年記念モデルのころのペン先は秀逸だったのにな・・・
ペン先は自製だと聞いたが、専門家がいないのであれば外部のペン先製造専門会社に製造委託した方が品質は上がるはず。
最近のMontblancのペン先の出来が良いのは、最終の研ぎまで含めて外注化したのでは?と邪推しているくらいじゃ・・・
こちらがスリットを拡げ、ペン先にスイートスポットを作った状態じゃ。この時点で既にヌルヌルとインクは出てくる。ただし、ペン先の地金は厚いので、ペロペロに柔らかいわけではない。
筆圧をかけなくてもインクは【ちょいぬら】程度で出てくるので、不満はないはず。ただし本当に柔らかな書き味を得るには、斜面を削ること、裏を削ることが必要になってくる。
今のままでは、筆記には支障ないが、筆記を楽しむにはおもしろみがない。貞淑な妻よりもクサンティッペ方が魅力的じゃ! さて、依頼者はクサンティッペを望むかな?
【 今回執筆時間:10.0時間 】 画像準備6.5h 調整2.0h 執筆1.5h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間