2008年04月24日

解説【萬年筆と科學】 その77 Swanの萬年筆工場

2008-04-24 01 渡部、和田の両氏は米国視察を終えて、5月10日にはロンドンに到着した。ここから英国の萬年筆工場の調査に入ったわけじゃ。

 最初はスワン萬年筆。当時日本にもスワン萬年筆があったが、英国のスワンとは何の関係もなかった。そこで英国のスワンを本スワンと呼んで区別していたらしい。

 英国のスワンはブランド名で、会社はMabie Todd & Co.,Ltd。和田氏は正確にメービー・トッド社と書いているが、通称ではマビー・トッドと国内では呼ばれていたふしもある。

 スワン萬年筆は生粋の英国生まれと渡部氏も考えていたようだが、実は米国生まれであった。1843年にニューヨークに設立されたメービー・トッドしゃが設立され、後の1880年にロンドンに支店が設けられたが
、ロンドンの方が興隆して本店を移したのだとか。後のParkerのような経緯となっていたのだな・・・

 当時のメービー・トッド社のブランドは、萬年筆がスワンとブラックバード、ペンシルがファインポイント、インキがスワンというものだった。

 ロンドンにある本工場は、敷地面積が984坪、全てが平屋の工場の坪数は448坪。すなわちパイロットの大塚工場の半分しかなかった。

 従業員は150人ほどで、非常に旧式な工場に見えたらしい。その他にもロンドンのインク工場、やリバプールにも萬年筆工場があったらしいが、時間の都合が付かず行けなかったらしい。

 信用調査の結果によれば、三工場の萬年筆生産量は月産62,000本、ペンシルは月産3,000本、インキは月産25,000ダースというところで、
当時最大手のパーカーの25%程度の生産量。

 渡部氏がメービー・トッド社に好感を持っているのは、創業以来90年以上、萬年筆、ペンシル、インキのビジネス一筋でやってきたことのようじゃ。


 ここまで各社の比較記事を読み進めてきて、この旅行中に渡部氏の中で大きな心の変化があったのではないかと感じた。

 萬年筆工場が旧式だとか、生産本数がどうだとか、規模が、売り上げが、資産が・・・という評価はしているが、製品の出来はどうか、書き味はどうか・・・というような事は一切語られていない。

 すなわち、技術者から経営者へ変わってしまっているのじゃ。萬年筆会社の評価は経営数字や生産本数ではなく、出来上がった萬年筆の書き味で語ってくれたらもっとおもしろかったのにな・・・


過去の【萬年筆と科學】に関する解説

解説【萬年筆と科學】 その76  
解説【萬年筆と科學】 その75  
解説【萬年筆と科學】 その74 
解説【萬年筆と科學】 その73   
解説【萬年筆と科學】 その72   
解説【萬年筆と科學】 その67  
解説【萬年筆と科學】 その58    

解説【萬年筆と科學】 その56 
解説【萬年筆と科學】 その54−3 
解説【萬年筆と科學】 その54−2 
解説【萬年筆と科學】 その54−1 
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Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 文献研究 
この記事へのコメント
stylustip しゃん

> 使い手の側は既にぼろぼろですから・・・

ボールペンはレフィルが変わったらアウト!一番寿命が短い。
萬年筆は内部機構が死ぬか、ペンポイントが摩耗したらアウト!
その点、ペンシルは芯が入手できる限り生き続けますので、寿命は長いですな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年04月24日 17:34
monolith6しゃん

昔は耳で外人から聞いたままを表現していたんでしょうな。
Posted by pelikan_1931 at 2008年04月24日 17:31
finepointは良くできたペンシルで、
手持ちの物は特別な手入れをしていませんが、
材質の組み合わせなどに注意が払われているからなのでしょう、
どれもキャップのゆるみや繰り出しの不具合もなく使えています。
私の1.5倍から2倍近くの年月を重ねていることを考えると、驚嘆です。
使い手の側は既にぼろぼろですから・・・
Posted by stylustip at 2008年04月24日 13:15
 渡部氏、ご立派です。ちゃんとメイビー・トッドと表音して書いておられるとは。これをマビー・トッドと表音するのはどうも耳障りで仕方ありませんでした。拍手!
Posted by monolith6 at 2008年04月24日 12:35