
今回は万年筆売り場の店員さんの接客テクニックを一挙に披露。もっとも今から20年前のテクニックなので、現代にはマッチしないものも多いが・・・
【次のようなチャンスを逃さず、自信を持って積極的にアプローチしましょう】とある。
1:1つの商品を長く見ている時
2:商品から顔を上げて目が合った時
というのはわかるが、
3:一瞬足を止めた時 ・・・ というのはどうかなぁ?
おやっと思って一瞬足を止めた時に、声をかけられたら、拙者ならそのまま足早に立ち去ってしまう。
通常は、一瞬足を止めて、おずおずとショーウィンドウに近寄り、商品を凝視して、数本に絞り込んでから顔を上げ、店員さんを呼ぶ。
そのどこで声をかければ一番商談成功率が高いかいうのが、このEncyclopediaに書くべき事。
拙者なら【商品から顔を上げて目が合った時】に声をかければ、ほぼ100%お買い上げいただく自信はある。しかし、それは受身の姿勢。もうすこし売上を上げるなら、【1つの商品を長く見ている時】に声をかけるべきであろう。
ただ闇雲に声をかけてはいけない。相手が心の準備が出来ていないときに声をかけると逃げ出してしまう。少なくとも拙者なら逃げ出す。
アメ横でも、ショーウィンドウを覗いた瞬間に【何かお探しですか・・云々】と声をかけてくる店があるが、拙者はその瞬間に逃げ出してしまう。
それについては中段に付近に書いてある。【相手が Yes / No で答えられる質問】をしなければならないのじゃ。
いずれにせよ、どういう人ならどのタイミングで声をかけるかは、なかなかマニュアルにしにくいであろう。そういう意味もあって、正しいかどうかはともかくとして、多くの販売員の意見を紹介している。これらはマニュアル作成者が頭で考えた物ではなく、現場の販売員の体験談なので、わかりやすい。
【たとえ素通りのお客様であれ、売り場の前を通るかた全員にいらっしゃいませです】というのはどうかと思う。売りつけられそうな雰囲気がしてイヤじゃな。
拙者は万年筆の陳列としては【金ペン堂】が秀逸だと思う。それぞれの万年筆に短いメッセージが書かれている。あれにはそそられる。ネットショップなどでは常識だが、実物が目の前にあり、それにメッセージが添えられていると思わず見入ってしまう。そういう努力を百貨店でもすべきであろうな。
万年筆をデパートに買いに来るお客様は、たいてい商品知識が少ない。従ってまずは目的別に絞り込んでくれるナビゲーションが必要となる。声をかけてから店員さんにナビをやらせようとしたのが、このEncyclopedia の時代。
いまなら売り場の入口にナビゲーションボードを出して、ある程度お客様にメドを立ててもらってから該当のカウンターに来ていただくようにすれば、かなり高い確率でお買い上げいただけるであろう。
店作りに関しては、長崎の【マツヤ万年筆病院】が最高。間口が広く、オシャレな眼鏡店のような雰囲気で、非常に入りやすい。欲を言えば入口が2ヶ所あると、さらに入りやすいであろう。
ここでのお買い上げ確率は100%に近いのではないかな?接客テクニック、商品知識、親しみやすい人柄、買わない限り店から出られないような徹底したチームプレイ(波状攻撃)、そして何よりすべてが完璧に調整された萬年筆であること。まさに日本最強の万年筆屋だと思う。
このテクニック集の中で【なるほどな・・・】と感心したのは、【まずは1本目をお客様に手にとってもらうこと】という事じゃ。たしかに一本握ると感想が出る。不満点を解消するような万年筆を次々にだされてくると、引くに引けなくなってしまう。長い間店員さんとおしゃべりするほど買わないで帰りづらくなる。いい手じゃな。
店作りのコツは、入りやすが、手ぶらで去りにくい雰囲気にする事じゃ。入りやすい店は蒲田のACT含め数は多い。ただ、手ぶらで出にくい店という観点では、長崎の【マツヤ万年筆病院】が日本一だと思う。つい、必要のない物まで買ってしまう。
こちらは、パーカー商品の奨め方のテクニックが書かれている。かなり微笑ましい部分もある。
【国産に比べて、何故高いのですか?】という質問に対して、【やはり品質が断然違います・・・】というくだりは、いただけないな。
ここでいう品質は、故障がない・・・などという【あたりまえ品質】ではなく、商品の魅力を示す【魅力的品質】の事を示しているのだが、一般の人が聞くと間違った解釈をしてしまうかも知れない。
ペン先も大きいし・・・というのはデュオフォールドには当てはまるが、プリミアには当てはまらない。このあたりは記述した人の思いこみなので、校正の段階で直して上げる必要があったであろうな。
拙者がこういうEncyclopediaを作るとすれば、【まずは店頭にある万年筆を他社も含めてすべて試し書きさせてもらいなさい。そこで自社製品の特長、他社商品の特長を十分理解した上で、各社の店員さんと助け合いながらお客様に最もふさわしい万年筆をお選びましょう】・・・と書きたいなぁ。
実際にそうやっていた売り場もあった。拙者が銀座三越でセーラーのProfit 80を2セット購入したのは、パイロット担当の方からだったし、三越限定のペリカンを購入したのはプラチナ担当の方からだった。そういうところが好きで、アメ横の存在も価格差も十分承知の上で、銀座三越でばかり万年筆を購入していた時代もあった。
各社のトップ販売員は、実は他社の万年筆も相当売っているのではないかな?彼女らに共通して言えるのは、商品知識、裏情報に強いこと、お客様の顔を絶対に忘れないこと・・・などといった共通点がある。そこまで踏み込んで書けていたら、このEncyclopediaは名著になっていたであろう。
【過去のシリーズ記事】
Parker Encyclopedia その12
Parker Encyclopedia その11
Parker Encyclopedia その10
Parker Encyclopedia その9
Parker Encyclopedia その8
Parker Encyclopedia その7
Parker Encyclopedia その6
Parker Encyclopedia その5
Parker Encyclopedia その4
Parker Encyclopedia その3
Parker Encyclopedia その2
Parker Encyclopedia その1

