その79の1回目は、フランスとベルギーの萬年筆事情。両国には熱烈なPilotファンの代理店があり、その縁で訪問したと思われる。
拙者はまったく誤解して、渡部氏の外遊を船旅と考えていた。しかし今回【6月10日に飛行機でロンドンを発ちパリに着き、古風なエドワーズ七世ホテルに宿をとりました】と書いてあるのを見つけた!
日本から米国への旅が飛行機であったかどうかはわからないが、少なくとも英国からフランスへの旅は、飛行機であったようじゃな!
パリにはダンヒルの支店があり、そこにはパイロット贔屓のコート氏が支店長をしていたとか。渡部氏にとってはコート氏とは7年ぶりの再会であった!
ダンヒルのルードラペー街の小売部を訪問すると、驚くほどのパイロットの進出ぶりに渡部氏は目頭が熱くなるのを覚えたとか。そして、そうした誇らしげな場面に出会う毎に【良い萬年筆を作らねばならぬ、魂を打ち込んで作らねばならぬという考えが腹の底からこみ上げてきます】。これが技術者魂じゃ。
当時のパリには文具店が308店、筆記用インキ業者が16軒、萬年筆専門業者が47軒あった。しかし、萬年筆はほとんどが米国製または英国製(カナダ製)であり、萬年筆生産国としては問題にするに値しないとの評価を下した。
当時パリで販売されていた萬年筆のブランドは、Bayard(仏)、Edacoto(仏)、Unic(仏)、そしてジフ・ウォーターマン萬年筆があった。長年疑問に思っていたのだが、このジフ・ウォーターマンというのは、ダンヒル・ナミキと同じように、ジフ商会がウォーターマンの代理店をやっているからだとか。
なを渡部氏がジフ・ウォーターマン製萬年筆の販売現場でおもしろい物をみつけている。曰く【定価50フランの萬年筆とは別に、インキを入れた硝子筒が10個入り一缶で3.75フラン。萬年筆のインキを使い終わると新しい硝子筒といれかえてやる仕掛けの物です】とある。いわゆるカートリッジであるが、この時、渡部氏はとおり一遍の反応しかしていない。
5万円の萬年筆に対して、10本入りカートリッジが3,750円するようなものだから、高くて日本では売れないな・・・と考えたのかもしれない。
それから5日後の6月15日には渡部氏はベルギーの首都ブラッセルに到着!ここでも大のパイロットファンのナショナル・パブリシティ商会の若旦那サンスキー氏と会っている。
この店ではダンヒル・ナミキを大々的に展示しており、パーカーやウォーターマンはショーウィンドウの隅っこに並べられていたとかで、さらに気を良くした様子がわかる。渡部氏もわかりやすい性格のようじゃ。
ベルギーで販売されていた萬年筆には以下のようなものがあった。
Belmondo萬年筆:英国製安物。軸はガラリス製(日本の安物萬年筆用)
Helios萬年筆:独逸製安物。軸はガラリス製。製造は独逸のOsmia萬年筆
Regency萬年筆:軸はガラリス製。これもOsmiaによる製造
Osmia萬年筆:高価モデルは黒セルロイド軸。Osmia社は元々Parkerが独逸に工場を建てて進出をはかったものの、独逸の国策で米国資本では工場経営が禁止されたので、やむなく独逸人の経営になおしたといういわく付きの萬年筆工場で、HeliosやRegencyではインク吸入機構もパーカーそっくりのスタッドフィラーになっていたとか・・・
Pelikan萬年筆:ペン先バリエーションにEF,F,M,B,BB,O,OB,OBB,K,Dの10種類あった。
その他ParkerやWaterman、Eversharpなどもあったが、全てカナダ製だったとか。ただしチルトン萬年筆だけは米国製が売られていた・・・よくわからんな
欧州における萬年筆の相場は、日本の5倍、インキは2倍というところらしい。
過去の【萬年筆と科學】に関する解説
解説【萬年筆と科學】 その78−3
解説【萬年筆と科學】 その78−2
解説【萬年筆と科學】 その78−1
解説【萬年筆と科學】 その77
解説【萬年筆と科學】 その76
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