最近のWAGNER ペンクリに持ち込まれる萬年筆は以前と【持ち込まれる事情】が異なってきている。
ずっと前は通常のペンクリに持ち込まれるのと同じような症状のものをWAGNER会員が持ち込んでいた。すなわち会員にとってはペンクリがいつでもうけられる利便性が魅力だったと思う。
昨今では調整講座の影響もあり、ペン先のスリットを拡げたり、ペンポイントを多少研磨する程度の調整は自分でやる人も増えた。過去3ヶ月くらいの調整ログを分析してみると、以下のようなものが多い。
1:ペンクリや販売店で調整してもらったが、しっくりしなくなったので持ち込んだ
2:ペンクリやメーカーに持ち込んだが、直らないと言われたがあきらめきれずに持ち込んだ
3:メーカーに持ち込んで、どこも悪くないと言われたが納得できなくて持ち込んだ
1:の場合は書き癖が変わったか、使っていてペン先がズレたか、インクを変えたらフローが悪くなったなどの、利用者側の原因が99%。従って堂々とペンクリなり販売店なりに持ち込んで、しっくりしなくなったので!と言えばすむ話。なにも先生方のケチをつけるようで申し訳ないと感じることはない。原因は利用者なのだから!
こういう萬年筆の調整は非常に簡単。元々がちゃんと研磨されているので、こちらは数分間微調整するだけでよい。簡単な作業じゃ。それによってWAGNERの調整師の方が腕が良いと考えてはいけない。萬年筆は微調整しながら使う物。その作業は基本が出来ていれば、誰がやっても成功するのじゃ。重要なのは、最初の大手術!これが成功していれば微調整は楽!
2:こそがWAGNERペンクリの妙味!たいていの場合、Vintageの萬年筆が対象になる。メーカーのペンクリに、他社メーカーのVintageの部品があるわけはないし、そんなことをしている時間もない。8時間で100人の面倒をみる必要があるからな・・・
また海外メーカーの日本の代理店にも部品など無い。彼らは断るか、異様に高い修理費用を提示してあきらめてもらうしかないのじゃ。
その点、WAGNERでは無い部品は似たものから削り出したり、壊れた萬年筆の部品箱から同等品を見つけたり出来る。すなわち、仕組みを知っている萬年筆の場合は直せるのじゃ。ただしマイナーメーカーの萬年筆はどうしようもない。そういう時には献体を依頼して、将来のために分解調査する!
3:非常に残念であるが、海外メーカーの代理店では良くあるケース。早い話が症状を分析する能力がないのじゃ。
最も重要なのは、依頼人が言っている症状を再現させること。再現すれば修理は知恵比べ!経験豊富なら修理できる確率は高い!
こういう案件は萬年筆修理の看板を掲げている店なら出来る可能性は高い。ただし、日本に輸入されていなかった萬年筆に関してはWAGNERに持ち込んだ方が直る確率は高い。萬年筆愛好家250人以上が世界中から入手した珍品?萬年筆を修理しているので、ノウハウはたまっている。国産に関してはまずはメーカーへの持込みが良かろうがな・・・
メーカーのペンクリでは8時間で100本を対象とする。WAGNERでは5時間で20本が限度。調整師5人がフル稼働してもメーカーペンクリの1人分にしか相当しない。
持ち込まれる萬年筆の仕上がりに期待するレベルは、おそらくはメーカーペンクリよりも高い。1:のケースなら調整はすぐに終わる。ところが最近は2:や3:のケースが多いので、個体あたりに必要な時間も長い!
メーカーペンクリが一本平均5分に対して、WAGNERでは平均15分。一本に1時間かかるような場合も少なくない・・・
またプロでは無いので、集中力と体力が続かない。10時から始めて14時くらいで集中力が途切れてくる。どうがんばっても5時間がいいところ。途中で空き時間が出来れば別だが、基本的には昼食抜きでやっているのでな・・・
また、折りたたみの椅子に5時間座って調整していると腰に負担がかかる。椅子がちゃんとした物なら問題ないが、折りたたみ椅子は辛い!拙者は本日腰の鈍痛に悩まされている。
ペンクリの先生方の悩みも腰痛と聞く。デパートや販売店でペンクリを設ける場合、先生方用の椅子は最高級の物を準備してあげて下され!先生方に長い間ペンクリをやっていただくためにもな・・・
女王様の決断
ところで、昨日、【モモレンジャー】が誕生した!ダメ出しの女王様が、自分の萬年筆は自分で調整することを宣言された?これは朗報じゃ!
ただし自分の萬年筆しか調整されないとか!それで調整師の称号を与えて良いのか?と考える方もいようが、それは間違い。今までの調整師の負担減によって、WAGNER全体としての調整生産性は飛躍的に向上する。まさに個の最適ではなく全体最適をねらった女王様の決断!拍手・・・・・・・・!