この変色しきったペン先はどうだろう!エボ焼け大好きの拙者でも多少退いてしまう。
しかし、どう使ったらここまで変色させられるのかは、大いに興味がある。表も裏もガビガビに変色している。これは有名な【ドボドボイジャー】に装着されていたペン先!ペントレの後の二次会で画伯から手渡された。
Viscontiの初期のパワーフィラーだが、中のゴムパッキンが腐食してボロボロになり、インキ止めが効かなくなっている。
従ってインクを入れても、ペンを振ればジュッジュッと音を立ててインクが飛び散る。画伯も過去に何度もそういう目に遭っている。
にもかかわらず何故【ドボドボイジャー】を使うのか?と問われた画伯は・・・【いやぁ、出来の悪い子ほどかわいいとうか、気になって・・・。それにインクフローが良いから書き味もいいんだよねぇ・・・】と答えていた。わからないでもない。
しかし、プランジャーとして機能しない萬年筆を持ち歩き、インク漏れ被害を頻発するのは忍びない。直すのは不可能なので、ここはとどめを差すしかなかろう。筆記具として使え無くすればあきらめもつくであろう。そしてペン先だけはさらに書き味良くしておく。
当然、ペン軸の移植を考えるであろう。それが狙いじゃ。
まずはペン先だが、絶妙のフローが出るように調整した。またペン先の裏表とも汚れを除去して新品と変わらぬ状態にした。
この14K金一色時代のペン先は非常に書きやすい。例外が無いではないが、美しいペン先は書きやすい!柔らかくなくても書きごこちが良いペン先の代表といえよう。
この軸であるが、まず、プランジャーの棒がカクカクと引っ掛かりながら下がる状態。とても実用にならないほど吸入が難しい。
そこで時計用のシリコングリースを金属製の可動部分に塗ったらウソのようにスムーズになった。さすが時計用シリコングリース!潤滑剤としては最高じゃ!
こちらが清掃が終了した全体図。しかし単に清掃しただけなので、このまま使えば【ドボドボイジャー】に戻るだけ。使えなくしなければ意味がない。【ペン先は良いけど、インクが出ないので軸はあきらめるか・・・】と思ってくれないともくろみは失敗。
まずはペン先を首軸にセットした状態。ペン芯はViscontiのエボナイト製ペン芯を使っている。不思議と曲面がNo.146と同じ!
スリットはペン芯の上で、限度まで開いている。Mとしてはこれだけ開いていれば問題はない。
それにしても綺麗な軸じゃ。Viscontiの初期のセルロイド製軸は痩せない。十分枯らしてから素材として使ったのであろう。イタリアのセルロイド軸といえば、オマスを筆頭に痩せるリスクが高いが、Viscontiの初期物は痩せないなぁ・・・最近のは持ってないのでわからないが・・・
こちらはペン先の横顔。元々調整は狂っていないので手を加える部分は少ない。キャンバスの上でゴリゴリと文字か絵を描いていたので、ペンポイントの表面が多少荒れている。それを舐める程度でよい。
そしてインクを出なくする手段はこれからが本番。会員からいただいたマニキュアをペン芯の空気取り入れ口に流し込むのじゃ。こうすればインクと交換用の空気がペン先のハート穴からしか入らないので、インクフローは極端に悪くなり、同時に【ドボドボイジャー】状態も回避される・・・はず。
しかしそれでは絵画には使えないので、優秀なペン先は、キャンバス以外の場で使ってもらえるだろう。
このような優秀な素材のペン先を壊れた【ドボドボイジャー】の筐体で酷使するのは忍びないのでな・・・さて画伯の反応は?
【 今回執筆時間:5.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整2.5h 記事執筆1.5h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間