今回は現行品のセーラー・キングプロフィット。拙者が使ったことのある世界中の現行品の中で、最高のキャップの開閉感を持つ萬年筆じゃ。エボナイト製軸では感触はマイルドになってしまうが、樹脂軸の開閉感は実にすばらしい。往年のPlikan【400NNや140】のクリック感のある開閉感を越えていると言って良い。
スコーンと軽く締まるのではなく、昔のカメラの巻上レバーのような感触で締まっていく。スムーズ感が無いと感じる人もいるようだが、拙者は【最高】と評価している。
今回は不具合ではない。利用者は十分に満足して使っているのだが、フト疑問が出てきたようじゃ。この萬年筆の書き味は、これが最高なのか、まだ改善する余地があるのか？
そこで【さらに良く出来るようでしたらお願いします】ということでお預かりした。どんな萬年筆でも【現行からちょこっと改善】するくらいなら、大抵は出来るものじゃ。
キングプロフィットのペン先は、21金製の本体に24金を鍍金してある。この鍍金が極めて剥がれやすい。軸全体の見映えは24金の方が良いのだが、剥がれやすい鍍金は困りもの。拙者はむしろ鍍金しない方が良いのではと考えるがな・・・
ペン先は【M】。拙者は新旧のキングプロフィットは何本も使ったが【M】は初めて！今までは全て【B】だった。
【M】も実によい！書き味だけ比べたらキングプロフィットはMontblanc No.149を凌駕したと言っても過言ではない。
こちらは横顔。キングプロフィットはペン芯に乗せるペン先の位置が固定される。また通常のプロフィット（大型ニブシリーズ）と違ってペン芯を首軸に挿し込む位置が固定していない。どこから挿してもピッタリと止まる。これは重宝！位置固定だと何度か抜き差ししていると、何となくスコスコ感が出てしまうような気がするのでな・・・ペンポイントを拡大してみると、依頼者の書き癖に対して、ホンの少しエッジが立っている。これを舐める程度でかなり筆記感が良くなると思われる。ただし、微調整の効果が永遠に続くわけではない。
そのうち摩擦でペン先が摩耗したり、書き癖が変わったり、椅子の高さが変わったりすれば、多少違和感が出てくることがある。
そういう時に微調整の技を持っていれば心にゆとりがあるので、無駄な調整をしなくて済む。技を持ってないと不安感が倍増し、いじり壊してしまう。やはり微調整できるくらいの技は習得しておく必要がある。簡単じゃよ！
こちらがペン芯から引き抜いたペン先の全体像。特徴は首軸にはいっている根元の部分が長いこと。これはNo.149と同じアプローチ！首軸内が長いほどペン先の安定感が増す！コストカット穴が無いのも嬉しいではないか！それにしても美しい姿じゃ！
こちらが調整後の姿。元々非常に柔らかいペン先なので、書き出しの掠れさえなければ気持ちよく書ける。そこで、スリットの開き具合を微調整した。また多少ひっかかりがあったので、依頼者の筆記角度に合わせてペンポイントの研磨を若干・・・ 最後に最近使い出した仕上げ用のペーパーでゴシゴシ！これを入手してから金磨き布でのバフ掛けは不要になった。WAGNER会場に来られれば紹介しよう。
【 今回執筆時間：4時間 】 画像準備1h 修理調整1.5h 記事執筆1.5h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
