このクリップのかわいさは触った人にしか理解できまいな。拙者はフィラデルフィアのアンティーク・萬年筆ショップで購入した。寂れた商店街の崩れそうなビルの二階・・・おじいさんは咳払いだけ、おばあさんはやたら商売上手という店で出会った!
なんという名前か?と聞いたら甲高い声で【タッカウェイ】とタを強調した発音で教えてくれた。それからしばらく拙者のタッカウェイあさりが始まったのじゃ。少なくとも萬年筆50本、ペンシル30本は購入した。
教訓としては、プランジャー方式のタッカウェイは弁が壊れると直らないので絶対に買わないこと!買うなら今回と同じくタッチダウン方式にしなされ。

今回の患者のペン先をよく見ると、曲がっている!ペン先先端部分が少し右にカーブしている。どうやら左側がカーブし、それに押されて右側も曲がっているように見える。こういう修理は対面ペンクリで数分でやる物ではない。金を曲げると必ず調整戻りがある。それを微調整してからでないと持主には返せない。
曲がりを直すのは、過去に何度かやっているように、ゴムブロックに隙間ゲージを貼り付け、その上にペン先を乗せて削った竹製の割り箸の先でしごいて曲げを矯正するのじゃ。勘だけでやっているが、失敗したことはない。きっと大した技術ではないと思われる。

こちらは横顔。あまりにも紙にひっかっかるとの事だったが、先端と腹のエッジが立っている。相当強い筆圧で長く愛用していたのであろう。ここまで削れているのは珍しい。ペンポイントが非常に硬い時代のSheafferでは、そう簡単にペンポイントは摩耗しないはずなのだが・・・ひょっとするとトレーシングペーパーの上で慣らし書きを繰り返したか、紙ヤスリの上で書いたのかもしれない。

まずは曲がりを直し、次にスリットを拡げる。拡げるに当たっては、ペンポイント先端を平たく研ぎ、少しでも紙へのタッチが柔らかくなるように工夫する。上に反ったニブを腹開き気味に調整するのにはかなり技と力がいる。曲がりを直した上で腹開き・・・聞いただけでは途方にくれるが、実際に手を使ってチョチョイとやれば何とかなる。調整は理屈ではなく、実践じゃ!

こちらが横顔。調整前と比べると、ペンポイントの傾斜が変わっているのがわかろう。先端部が削られ、若干短くなり、それに従って直線だった斜面が少し丸みを帯びている・・・これこそが今回の調整の妙味じゃ。拙者は修理はきちんと段取りをしてから実施する。しかしペン先調整はその時その時の気分で味付けを変える。
まあ周囲から見られているペンクリの場合は、どうやれば派手に見えるか、どうやれば驚かせるか・・・などパフォーマンスも考慮している。
従って地味な修理や調整は自宅でやる事が多い。調整戻り対策も含めて・・・
今回の患者は、会場でも直せたのだが、たまたま調整道具を持っていなかった。そこで自宅調整となったわけだが・・・結果は大正解だった!
ここまでタッカウェイの書き味が良くなるとは驚き!見くびれませんぞ!
【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1.5h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間