これはビッグレッド復刻の第二弾かな? 第一弾はペンシルと、立派な箱とのセットで10万円だった。そちらは1990年限定1,000セットでの発売。
今回のモデルは天冠が丸みを帯び、ペン先のデザインも変わっているが、色のトーンは同じじゃ。 第二弾は限定1,100本ということらしい。1990年当時とくらべるとパーカーのブランドイメージは、萬年筆界では相対的に低下しているので、1,000→1,100本という程度の伸びになっていたのだろう。
米国ではどうだかわからないが、英国でのパーカーの地位は非常に高いと聞いた(昨日)。パーカーの瓶インクはどこでも手にはいるが、ウォーターマンのインクですら、確実に手に入れるにはハロッズ・デパートまで行く必要があったとか・・・
拙者はデュオフォールドの現行品は、ニブのデザイン以外は非常に垢抜けていると考えている。設計も書き味も! 今回のニブは【86】。すなわちXXB【eXtra-eXtra Broad】。ペリカンでは3Bに相当する太さ表現じゃ。ただしペリカンが角研ぎであるのに対して、パーカーは丸研ぎ!このあたりがペリカン好きの依頼者には我慢できなかったと思われる。
画像を見ると、非常に魅力的な大玉だし、スリットもちゃんと開いているが、切り割りはペンポイントの頂点からではなく、ややズレたところから入っている。これは精神衛生上悪い・・・
依頼内容は【生贄】。すなわち焼くなり煮るなりして下さい!ということ。XXBでの生贄依頼はおいしい! こちらは調整前の横顔。依頼者の書き癖であれば、ペンポイントの、さほどおいしくない部分がが紙にあたる。これでは持ち前の【ぬるぬる感】で楽しめない。
そこでザックリと斜めに研磨して広大なスイートスポット地帯を作ることにする。気をつけるべきは、依頼者は昔と違って、たまにペンポイントが右にも倒れるようになった事。左傾斜から右傾斜への移行期かもしれないが、こういう時には許容範囲を大きく取った調整でないとすぐに書き味が劣化したと感じてします。 もうひとつ書き味に納得がいかない原因がこれ!左右のペンポイントに段差がある事。この段差はペン芯を外してニブだけにすれば無くなる事が多い。すなわちペン芯の形状と、ペン先内側のカーブがうまく合致していない!
これを合わせるのは設計図面がないと無理。あるべき論、何故そういう設計にしたかの思想がわからなければ形状変更は出来ない。
やむなくペン芯にセットした状態で段差調整を施した。これは時が経つと調整戻りが発生しやすいのであまりお奨めではない。今回は、頻繁に定例会に参加される会員からの要望なので問題なしとした。 【丸研ぎ】をペリカン似の【角研ぎ】に変えた。これなら頂点がないので、切り割りのズレが解消されたことになる。
また【角研ぎ】は、心理的に筆記角度を変動しながら書きにくいので、予期せぬ引っ掛かりに遭遇する確率も減る。そして何より美しい! こちらが調整後の横顔。メタボ腹状態だったペンポイントが、かなりスリムに削り込まれているのがわかろう。
この削り取られた部分が、依頼者が最も良く使う部分。ここの接紙面積が拡がることによって、単位面積あたりの筆圧が分散されてヌラヌラした書き味を体験出来るのじゃ!
最近、太字を削り込んで極細を作るような調整をよく見かける。昨日の裏定例会でも見かけた・・・あまりにかわいそうな状態になっている。太字は太字のまま、細字は細字のまま使って上げるのが、萬年筆に対する思いやり。
拙者も昔はいろいろ削りまくったが、最近では、少なくともペンポイントの大きさだけは削りすぎないように気をつけるようになった。やっと、調整名人が昔おっしゃっていたことが理解できるようになった。20年かかった・・・。削りすぎるのは【もったいない】。
【 今回執筆時間:7時間 】 画像準備1.5h 修理調整4h 記事執筆1.5h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間