第八章は、頁数が多い割につかみ所が無く、現在においてはあまり役に立ちそうもないので割愛し、第九章の解説をする。
まず最初に渡部氏は【インキは水商売。さぞやぼろいでしょう!】とよく聞くがとんでもない事だと反論している。2〜3の薬品を水に溶かしていい加減に色素を混ぜ合わせれば簡単に出来るもので、番茶を立てるよりもたやすい と考えている人もあると・・・反論と言うよりも嘲笑に近いかな?
昔から茶人達が茶質を吟味したり、釜に苦労したり、水質に注意したりしている事を述べ、かれらの苦労はインキ製造にもあてはまると結んでいる。
お茶とインキ・・・それは縁遠いように思えて、素を辿ればいずれもタンニン類を主成分とする物で、血は水よりも濃し!というわけじゃ。
左は昭和7年の春、日本で最初の女性農学博士の学位を得た辻村みちよ女史の言葉じゃ。
辻村博士の論文の一つに【緑茶ヨリ分離シタル茶タンニン(Tea Tannin)ニ就テ】というものがあり、それは世界的な発見であったとのことだが、それについて述べている。
紅茶が赤くなる原因が最後に書かれているが、こういう実例があると非常にわかりやすい。
渡部氏も、【そういえば沸かしたてのお茶の色は薄緑色ですが、湯冷めする頃には色が赤ばんで来るのも茶タンニンが酸化したために相違ありません】と書いている。ある事象が証明されると、それを他の事象に当てはめて理解できる能力が科学者の素養であると聞いたことがあるが、まさに!という感じ。
さらに続けて、【医薬を服用する前後にお茶を飲むなといわれているのは、お茶の中のタンニンが医薬中の鉄分と作用してお腹の中にインキが出来て、薬の効能を消殺するからとのことです】と冗談とも本気とも言えない挿話も・・・
もちろん薬の中に鉄分が無ければ問題ない!
拙者は薬をお茶で飲むな!とは聞いたことがあるが、薬を飲む前後にお茶を飲むな・・・というのは初耳。しかしその方が理屈には合っている。また一つ、利口になった!
【過去の記事一覧】
解説【インキと科學】 その7−2
解説【インキと科學】 その7−1
解説【インキと科學】 その6−2
解説【インキと科學】 その6−1
解説【インキと科學】 その5
解説【インキと科學】 その4
解説【インキと科學】 その3−2
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解説【インキと科學】 その2−3
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解説【インキと科學】 その2−1
解説【インキと科學】 その1