今回は【インキの色相の研究】じゃ。華麗なインクが大流行している現在でも興味深い内容が含まれているのでお楽しみ下され!
インキの色を云々する場合、紙に書いた瞬間の色の事を言うのか、紙にインキが定着した後の事を言うのかを明確にしておかなければならない。今回は書き始めの色、すなわち容器に入っていたインキが紙についた瞬間の色について議論している。
墨の文化で育った日本人は、当時から色の濃いインキが好みだったらしい。欧米では日本ほどインキの濃さを気にしなかったらしく、ウォーターマン・インキ、ステフェンス・インキとも、日本のインキに比べてみると甚だしく淡色であったとか。
ロビボンド比色計でインキの色を計ったところ、日本のインキが全て12度前後であるのに対して、欧米インキは7〜10度であったとか。
渡部氏は左の図を最初に持ち出して、太陽光線の説明をしている。
色合いが深いとか浅いとか良く言うが、これを科学的に説明すると、同じ黄色でも橙色に近づくだけ、つまり波長が長い方に近づくだけ黄色が深くなることとなり、反対に黄色が緑に近づくだけ、つまり波長が短い方に傾くだけ黄色が浅くなる事を意味するのだとか。他の色の深い浅いも同じ原理・・・
そして太陽光線中の7色を全部平均に反射するものは白く見え、全部吸収する物は黒く見え、ある色だけを選択吸収して他の色を通過または反射する場合は吸収された色が表れるのじゃ。
たとえば赤インキは赤色光の波長だけを通過させて残りの色を吸収する性質があるので、白い紙に赤インキで文字を書くと、赤インキを通過した赤色光は、すぐ後の白紙で反射されて、再び赤インキの層を通過して人間の眼に映じ、かくして赤色を感じることになるのだとか。中学校でこういう教え方をしていてくれたらもっとインキで遊べたのになぁ・・・
左は補色配列図(当時は余色配列図と呼んだ)じゃ。スペクトルにおける色の順序に沿って各色を円周上に配列した物だが、対角線上の両端が補色関係にあることを示している。
補色というのは、その両色を混合すれば白色となり、白色中から一方の補色を取り除けば、他の色が表れるという関係にある。
さらにこの図によって、混合色や色の飽和度が説明できる。たとえば橙と黄緑を混合すると黄色が得られ、しかもその飽和度は大であるが、赤と緑を混ぜて得られる黄色は、同じ黄色でも飽和度が小である・・・とか。これは実験してみたいものじゃ。
ちなみに、飽和度というのは色の鮮麗さの度合いで、飽和度が大であれば鮮麗さが高いという意味になる。
いろいろな色光を混合した時に、どんな混合色になるのかを一覧表に示したのが下の表。
すなわち、赤光と緑光を混合すれば淡紅になり、赤光と黄光とを混合すれば橙となると見ていけばよい。
もっともこの表は色光を混合した場合の混合色であって、絵の具を混合した場合の混合色とは必ずしも一致しないのは・・・小学校で習ったかな?
色光の場合は両色光が同時に目にはいるが、絵の具の混合の場合は絵の具同士で相手の反射光を吸収しあう作用が働く事を考えに入れなければならない。
たとえば青絵の具と黄絵の具を混ぜると緑になるという説明は以下の通り。
青絵の具は赤と黄を吸収し、緑、青、紫を反射する。
黄絵の具は青と紫を吸収し、緑、橙、黄を反射する。
従って両者を混ぜると。黄絵の具は青絵の具の反射する青と紫をを吸収し、青絵の具は黄絵の具の反射する黄を吸収し、結局いずれの絵の具にも吸収されないで共通に反射される緑だけが眼に強く映じることになる。
こういう科学的な説明をしてくれれば非常に興味を持てたのだが、当時は補色関係は図画工作の時間に説明を受けた。科学とは縁遠い説明だったように記憶している。
古山画伯の話を聞いていると、絵画の世界は完璧に科学!それが小さい頃からわかっていればもっと美術に興味を持てたのだが・・・
【過去の記事一覧】
解説【インキと科學】 その11
解説【インキと科學】 その10−2
解説【インキと科學】 その10−1
解説【インキと科學】 その9
解説【インキと科學】 その7−2
解説【インキと科學】 その7−1
解説【インキと科學】 その6−2
解説【インキと科學】 その6−1
解説【インキと科學】 その5
解説【インキと科學】 その4
解説【インキと科學】 その3−2
解説【インキと科學】 その3−1
解説【インキと科學】 その2−3
解説【インキと科學】 その2−2
解説【インキと科學】 その2−1
解説【インキと科學】 その1