解説【インキと科學】 その13
今回は【コールタール】。染料の基本はコールタールだったというのは面白い!それでは内容を要約してみよう。
ブルーブラックインキにおける青色染料の役割は、書いた直後の一時的着色剤であるに過ぎないので重きを置く必要はないように思えるがそうではない。
染料がインキに及ぼす影響は;
・自然沈殿に対する影響度
・インキの粘度に及ぼす影響
・インキの表面張力に及ぼす影響
など、インキ性能の根幹に関わる部分も多い。
しかるにインキ製造の実体は、色合いさえ似ていれば万事事足れりと考えているインキ技師が多く、染料が安物へ安物へと手を出して恥じるところがない。むしろ安物を使いこなす事は技術者の腕前として誇るような困った状態もある。
染料について蘊蓄を話すと甚だ難しくなってしまうので、まずは当時の染料がどんな物であったかを要約すると以下のようになる。
1933年当時の染料は、ほとんどはコールタールから精製されていた。それまでの70〜80年の間に染料技術は著しく進歩した。発端は・・・
1856年に英国人パーキン氏(Sir W.H. Parkin)が若干18才にしてコールタールから解熱剤キニーネを合成しようとしていて、まったく見当違いのモーヴという紫染料を作ってしまった。
続いて1866年に独逸のグレーベ氏(Graebe)及びリーベルマン氏(Liebermann)によってアリザリン(茜草染料)がコールタールから人造された。
これらがそれまでの自然染料を人造染料に置き換える発端になった大発見であった。
さらに1880年にはアスピリンの製造で有名な独逸のバイエル氏(Baeyer)によりコールタールから人造藍染料の合成法が発見された。
その後は年と共に人造染料の発見が増し、大正のはじめには1,000種類、大正13年ごろには1,230種類に増加し、1933年では13,000種類以上に上っていた。
拙者は農村地帯で育ったので、コールタールといえば、用水路から田に水を汲み上げる機械に塗られていた物しか知らない。
コールタールを塗ればサビが防止できるということで、定期的に各農家はその機械にコールタールを塗って天日で乾かしていたはず。
まだ乾かないうちに触ると黒いドロドロの液が指について石鹸で洗ってもなかなか落ちないので困った記憶がある。
当時の農家での主役は発動機であり、水汲み上げ機械のポンプを回すにも、耕耘機のエンジンとしても利用されていた。子供の力ではなかなか始動させられなかったためか、それを2〜3回で始動させられる大人を尊敬したものじゃ。
拙者の家はサラリーマンだったので、当然発動機は無かったので、近所の家に自転車で遊びに行っては飽きもせず発動機を眺めていた。
あの単気筒の音が実に好きだった。中学校にあがるころには、電気モーターになってしまっていたが、思春期にも発動機の音を聞いていたら・・・ハーレー乗りになっていたかも知れない・・・それほど単気筒の発する音が好きだったのじゃ。
ともあれ刷毛で真っ黒いドロドロした液体をポンプに塗っていう様子は、漁村で網を繕っているのと同様に、当時の一般的な風景であった・・・
現在でもコールタールは農村で使われているのかなぁ?少なくとも拙者の実家付近で見かけることは無いが、これは帰省の時期が毎年決まっているからもしれない。
コールタール情報募集! 最新の情報を教えて下され。
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Posted by pelikan_1931 at 07:30│
Comments(15)│
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│
文献研究
実家に帰省した折、納屋を漁っていましたが…コールタールのコの字もありませんでした。
その代わり、てっきり処分したと思ってた発動機が出てきましたよ。
『スズエ』と言うメーカー製でフライホイール剥き出しの、【灯油】発動機です。
中学生の頃まで、祖父が精米機用に使ってた奴です。
今考えると、灯油燃料のエンジンは、もう日常の機械じゃありませんよね。
コレ、復活出来るかなあ…
きくぞうしゃん
あのねっちょり付着するコールタールの感覚は、犬のウ○チを踏んだ時よりイヤだった記憶が蘇りました。洗ってもなんともならない・・・悔しさ。
怠猫しゃん
ハーレーで送り迎えがあれば、誰も悪さしないでしょうな。
Mont Peli しゃん
コールタール、クレオソートなどは不思議と魅力的な物質じゃった。特にクレオソートは何十本も古いのが転がっていたので遊んでいたが・・・
しまみゅーらしゃん
コールタールは熱でベトつくので、手で触る機会が多い物には塗っていなかったはずじゃ。
ひょっとすると水田かな?であれば水を汲み上げることはないかもしれない。
コールタールは、防腐剤として板塀に塗ったりしました。電柱にも使いました。
最近では、発ガン物質と言うことで毛嫌いされ、公共事業では使われません。またコールタールから作られるクレオソートも防腐剤として木材に加圧注入されていましたが、使われなくなりました。
木材の防腐剤として、硫酸銅も使われましたが、木材を廃棄するときに手間がかかるため、建築物構造材などよほど腐朽が怖いもの以外はあまり使わないのではないでしょうか。
ただ、屋根の防水シートや、コンクリート擁壁の間に挟まるシートなどには使われているかもしれません。
でも、夏の暑い日にサンダルからはみ出した踵に、ねっちょりと着いたコールタール、忘れることが出来ません。
ちび猫のころは、(いまでも???)
電柱に塗られておりました。
伯父上の物置小屋のトタン屋根にも塗られていたような...
>発動機の音を聞いていたら・・・ハーレー乗りになっていたかも
父猫のお友達には“鉄馬”乗りがたくさんおりました。
ちび猫のころは、週末“鉄馬”乗りの方々に遊んでいただきました。
いやぁあの音は癒されますね〜♪
でも友達が革ジャン着たコワモテ熊さんばっかりって・・・(^^;
いちど、後ろに乗せられて登校したら、注目の的でした(^^;
コールタールは、発癌性物質なので最近は使われなくなりましたね。
煮詰めて蒸留したクレオソートは今でも木材の防腐用に結構使われて
いるようですが。
サッカリン、チクロ等に含まれる発癌性物質や、赤チンキの水銀の
毒性などが問題になり、長い間お世話になったものが次々姿を消して
いきますが、次のステップでは私を含めて愛用者の方が姿を消すこと
になるのでしょうか。
農村の近況、というわけではありませんが、私は農家の出であるためよく畑にも田んぼにも行きましたが、コールタールを塗った農機は見たことがありません。電柱ならありますが…。
ポンプ自体、実家の田んぼでは使っていませんでした。実家周辺の水田は、用水路の水が豊富だったこともあり(春には雪解け水であふれんばかり)、ポンプの必要がなかったんですね。
井戸水を汲むポンプにも、コールタールは塗ってなかったなぁ。
Fineman しゃん
懐かしい画像ありがとしゃん。あるいみ機関車よりも人間らしい気がする。
二右衛門半しゃん
拙者は屋根や塀の話は知らなかったな・・・
摩擦係数が大きいので雪の多い地域では無理でしょうな。
Mont Peli しゃん
その事件、拙者もうっすらと記憶しております。
皮膚呼吸の大切さを教えてくれたのは、【007 ゴールドフィンガー】だった。
おはようございます。記事の主題からズレますが。
こちら山陰安来にもあるのですが
その昔働く動力機械として各地で活躍した発動機を
再整備してエンジンをかけてポンポン鳴る音や振動を楽しむ
『発動機愛好会』が全国にあるようです。一例↓
http://www5a.biglobe.ne.jp/~kenichis/sight6-050306-hatsudoki.htm
http://blogs.yahoo.co.jp/vrc89/53249561.html
屋根の上とか塀に塗る塗料という程度ですね。
日に当たると柔らかくなって内部に食い込むといわれているとか。
小生の記憶では、子供の頃に当時盛んだった仮装盆踊り大会で
黒人に扮するため体中にコールタールを塗りたくった人が死亡
するという痛ましい事故があり、新聞種になっていました。
当時、コールタールは身近なところにあって簡単に入手できま
したから。