【Pelikan Red Book】 その2
ペリカンといえば、ギュンター・ヴァーグナーが有名だが、会社を作ったのは、化学者であったカール・ホルネマン。1838年のことじゃ。
左の写真によれば、カール・ホルネマンが生まれたのは1811年3月29日で、亡くなったのは1896年12月13日。左の写真の時には59歳ということになる。今の拙者とそれほど違わない年齢なのだが・・・なんとなく彼の方が老けている。
会社の設立が1938年で、彼が27歳の時。ギュンター・ヴァーグナーが会社を大きくするまで、あまり儲かっていなかったらしいので、苦労が彼を年齢以上に老けさせたのかも知れない。
しかし賢そうな前頭部。小さい頃から、こういう額の広い頭に憧れていた。有能な経営者にもこういう額の人が多い。スヌーキーな人で、こういう額の人に会った事はない。
拙者の父は【人格は額に出る】と言っていた。このカール・ホルネマンの額を見る度に、父を思い出す。いずれも、お金には縁がなかったが、尊敬すべき人物じゃ。
こちらはペリカンの工場内部の写真。何かを作っているというよりも、出荷の為の準備をしているのかも知れない。手前左側の四角い棚は、出荷先別に仕切られているのでは?となんとなく考えてみた。
時間がゆっくりと流れているような雰囲気が実に良い!最近の、人が少ない自動生産工場や、移動するライン上の車体に小走りに走りながら部品を取り付けるような慌ただしい光景はどうしても好きになれない。
生産性を向上し、物を安く作って安く売る・・・これが無駄の根源では?と考えてしまう。萬年筆一本の値段が30万円なら、一本の萬年筆をローンで購入し、長く使い続けるという選択肢もあった。究極のエコは、買わないこと、簡単には買えない価格設定にする事じゃな。

左は1894年のポスター。左側の小さな男の子の足の位置がおかしい。これでは机の中から足が出ているとしか考えられない。
萬年筆の発売は1929年であるから、この時代の主力商品だったインクを訴求するポスターだったはず。だが、インクがこぼれたり、小さな子供の顔についたりしているポスターに何の意味が込められているのかが不明・・・
防腐剤としての石炭酸が入っているインクを誤って飲んだりしたら、大変な事になるかも知れないのになぁ。前回紹介したポスターも含め、Pelikanのポスターには意図不明なものが多いなぁ・・・
このポスターの左下のは工場の絵が2枚入っている。おそらくはインクを作っている工場を描いたものであろう。一つはハノーヴァの本社工場であろうが、もう一つはどこかな?
いずれにせよ、性能をうたう米国製ポスターとは一線を画している。これのあたりに興味が出てくると、紙物に嵌るのだろうな。ポスターのコレクションはまさに比較文化論じゃな。
----------------------------------------------- 以下は独逸語に堪能な 1447しゃんのコメントの転載じゃ!
こんにちは。仙台でお世話になった新会員の1447番です。
師匠のこの文献研究コーナーをじつは大変楽しみにしています。
ホルネマンは、キャプションによれば1864年からハノーファー市の市議会議員、のちにはプロイセンの国会議員にもなっているんですねえ。ハノーファー王国は1866年にプロイセンに敗れて併合されてますし、1870年頃と言えばドイツ帝国成立直前の変動期で、経営者としても政治家としても苦労した年月が額に出てるんでしょうか。それにしても、落ち着いた良い表情です。
工場の写真には「工場内で絵の具箱を詰めているところ」とあります。ですから、生産現場ではなく、たしかに出荷準備。女性ばかりなのはそのせいですね。右前にある大量の細長い包みが絵の具なんでしょうか。水彩絵の具? それともインク瓶? 絵の具のチューブって、いつからあるんでしょうか。
次の商品ポスターですが、ポスターの見出しと右上後ろの白い布に書かれた言葉を続けて読むと、「ギュンター・ヴァーグナーのインクで、パパも事務所で書いてます」となります。事務職のパパは職場で、子供たちは家庭で、みんなヴァーグナーのインクを使って文字を書いている(遊んでいる)。キャプションにも示唆されているように、うちの商品は市民生活に溶け込んでます! ってのが売りのポスター。性能をうたう米国製ポスターとは一線を画す、とはまさにその通りと思います。
それにしてもママはどこにいるんだろ。工場で絵の具詰め?
Posted by pelikan_1931 at 05:30│
Comments(10)│
mixiチェック
│
文献研究
みどりひげ しゃん
設定からして自宅の机のはずですので、引き出しは無くても不思議はありませんな。
ツバメしゃん
いつでも参加下され。大歓迎です。
1477しゃん
ありがとしゃん。今後もよろしく願いします。
本文に転載させていただきやす!
こうのすけ しゃん
今後は、1477 しゃんが、独逸語の翻訳もしてくれるので、さらに興味深いコーナーになるであろう。
紙様 しゃん
先日は、どーむ氏がおせわになったようで。
古の写真はスローシャッターで撮るために、こういう写真は写される人が動きを止め、また、ライティングをしっかりとして10秒ぐらい息を止めて露出したものと思われます。なんせ被写界深度を深く取るために絞りをF48〜64くらいにしたかもしれませんからな。
カメラの位置の左側から強烈なライトもあてています。
だからこそ、一瞬を切り取ったなかにも、穏やかな時間の流れがうつりこむのかもしれません。
男の子は高椅子に深くきっちりと座っている。
この机には引き出しがなく、ただの上板だけであるが、机自体の強度を確保するため裏板がある。
男の子の大腿前面が机の上板すれすれにあるくらい高い椅子に座らされ、勝手にうろうろしたり椅子の上に立ったりしないように椅子を机に深く挿入されているため、男の子の膝は机の裏板近くに隠れ、まるで下肢が机から生えたように見えている。
昔漱石の「吾輩は猫である」の中に出てくる「猫じゃ猫じゃを踊る猫の絵葉書」というのを「サライ」でみたが、インクをテーブルにこぼしたり顔につけたりしている猫も描かれていた。インクをこぼしたり顔につけたりの子供は定番のお約束であったのかも知れませんね。
はじめまして、最近ブログを拝見させて頂いており、
いずれ研究会にお邪魔させて頂きたいとワクワクしております。
このポスター、私はすごく気に入りました。とくに一番ちっちゃい
子の左手や顔についたインクは出色だと思います。右の
長女がキチンとした身繕いで大人のようにペンを扱ってる姿との
対照も面白いです。
ジャポニズムといえば、先日洋食屋で隣のテーブルにいた
中年カップルと老母の三人連れ、パリからの旅行者で、
この鶴のように痩せた80は過ぎてるだろうお婆さんが
若い頃、アンリ・リビエールという版画家と親しくしていたそうで、
彼から譲り受けた広重や彼自身の版画を美術館に寄贈したのが
日本で展覧会をしてるので、それを見に来日にしたとのことでした。
こんにちは。仙台でお世話になった新会員の1447番です。
師匠のこの文献研究コーナーをじつは大変楽しみにしています。
ホルネマンは、キャプションによれば1864年からハノーファー市の市議会議員、のちにはプロイセンの国会議員にもなっているんですねえ。ハノーファー王国は1866年にプロイセンに敗れて併合されてますし、1870年頃と言えばドイツ帝国成立直前の変動期で、経営者としても政治家としても苦労した年月が額に出てるんでしょうか。それにしても、落ち着いた良い表情です。
工場の写真には「工場内で絵の具箱を詰めているところ」とあります。ですから、生産現場ではなく、たしかに出荷準備。女性ばかりなのはそのせいですね。右前にある大量の細長い包みが絵の具なんでしょうか。水彩絵の具? それともインク瓶? 絵の具のチューブって、いつからあるんでしょうか。
次の商品ポスターですが、ポスターの見出しと右上後ろの白い布に書かれた言葉を続けて読むと、「ギュンター・ヴァーグナーのインクで、パパも事務所で書いてます」となります。事務職のパパは職場で、子供たちは家庭で、みんなヴァーグナーのインクを使って文字を書いている(遊んでいる)。キャプションにも示唆されているように、うちの商品は市民生活に溶け込んでます! ってのが売りのポスター。性能をうたう米国製ポスターとは一線を画す、とはまさにその通りと思います。
それにしてもママはどこにいるんだろ。工場で絵の具詰め?
師匠のプログは大変勉強になります。ペリカンの解説、私見に対しては興味をそそられます。益々のご活躍楽しみにしております。
実に 良い味わいの写真とポスターです。
映画のワンシーンを切り取ったかのような佇まい・・
長いスカートの女性工員、階段を下る男性社員、
丸い列柱、吊り下げ式の笠と電球・・・
流れているる時間が 違いますね。
前回の「着物で水彩」のポスターは
「ジャポニズム」「日本趣味」の影響で
「アールヌーボー」のこの時代に 欧州で流行しました。
ゴッホが 広重の浮世絵をコピーしているのと 同じ。
建築家のマッキントッシュやフランク・ロイドライトも
「日本」のデザインを取り入れています。
ライトは 浮世絵の収集家でも ある。
師匠のこの文献研究コーナーをじつは大変楽しみにしています。
ホルネマンは、キャプションによれば1864年からハノーファー市の市議会議員、のちにはプロイセンの国会議員にもなっているんですねえ。ハノーファー王国は1866年にプロイセンに敗れて併合されてますし、1870年頃と言えばドイツ帝国成立直前の変動期で、経営者としても政治家としても苦労した年月が額に出てるんでしょうか。それにしても、落ち着いた良い表情です。
工場の写真には「工場内で絵の具箱を詰めているところ」とあります。ですから、生産現場ではなく、たしかに出荷準備。女性ばかりなのはそのせいですね。右前にある大量の細長い包みが絵の具なんでしょうか。水彩絵の具? それともインク瓶? 絵の具のチューブって、いつからあるんでしょうか。
次の商品ポスターですが、ポスターの見出しと右上後ろの白い布に書かれた言葉を続けて読むと、「ギュンター・ヴァーグナーのインクで、パパも事務所で書いてます」となります。事務職のパパは職場で、子供たちは家庭で、みんなヴァーグナーのインクを使って文字を書いている(遊んでいる)。キャプションにも示唆されているように、うちの商品は市民生活に溶け込んでます! ってのが売りのポスター。性能をうたう米国製ポスターとは一線を画す、とはまさにその通りと思います。
それにしてもママはどこにいるんだろ。工場で絵の具詰め?