N御大より、昨年の【萬年筆に触れる会@笛吹】におけるお宝発見の顛末が送られてきたので、多少の加筆修正を加えて報告しよう。
なを、人名には仮名を使っている部分もあります。
2010年7月3日(土)に、第1回の【萬年筆に触れる会@笛吹】が、その年に完成したばかりの喫茶キヴィスで開催された。開催日前日の7月2日に、毎日新聞が大きなスペースで会合を取り上げてくれていたおかげで、それを目にした甲州市塩山の談話室【コロボックル】のS橋理事長がご自宅に保存されている萬年筆がどのような物か判明させたいと会場に持参された。
最初に拙者のところに持ってこられたのだが、蒔絵にもインキ止めにも知識のが無いので、清掃するぐらいしか出来ない。どうやらパイロットのようなのでN御大に見てもらう事にしたが、当日は展示、ミニペントレ、お子様に対する勉強会の講師等、それまでで一番多忙な一日だったせいもあって、存分なお話しが出来なかったらしい。
帰宅後どうしても萬年筆と付属の資料が気になったN御大は、S橋理事長にお電話し、7月27日に奥様と米国から遊びに来ていた2人のお孫さんとともに塩山にS橋理事長を訪ねて行った。そこで再度萬年筆と資料をじっくりと見せていただいたのだが・・・それは萬年筆コレクターなら涎が垂れそうなストーリーの萬年筆であった。
商船学校時代、S橋理事長の尊祖父であるS橋柳橘氏は、パイロットの創業者である並木良輔氏の先輩であり、商船学校の教授の職をなげうって萬年筆作りに転身した並木氏の(精神的)応援者でもあった。そこでS橋柳橘氏56歳の時、並木氏は蒔絵の大型萬年筆を贈った。
その萬年筆は当時の最高級品 大型50号 ドーム型 並木監 静寫 とある。
胴軸に 鳥獣戯画からの蛙の蒔絵。
静の銘には、静香と静璋のお二人がいるが、落款からみると、勝田誠三(静璋)と考えられる。
鞘には・・・
飛び出して 蛙(かえる)も今日で 五十六
大口あいて 虫けらを吸う 蛙柳生
と短歌が金文字で描かれている。恐ろしいまでのお宝!
N御大も、個人的には譲っていただきたいとは思いはしたようだが、このレベルの萬年筆は、一個人が所有すべきでない、このペンに相応しいところ(たとえば国立歴史民族博物館レベル)で展示すべきと考えを変え、何度かS橋理事長と電話のやりとりを経て、2011年6月23日に新宿でお会いした。
S橋理事長は現物を持参されN御大の意図をご理解いただいて、N御大への貸し出しを了承してくださった。本当はこのペンの寄託者(S橋氏)の名を表記し、展示する条件で譲っていただいたほうがうれしという思いをN御大はお持ちのようだ。管理責任を考えればその方が気が楽であろう。
蒔絵のわからない拙者から見れば、文字が蒔絵で書かれた地味な萬年筆・・・というくらいにしか思われなかったが、添付されていた本を拝見して驚愕した。萬年筆とは、本体だけではなく、それにまつわるエピソードが証明されるとがぜんおもしろくなっていくものだなと痛感した!
今回の事にはご縁の不思議さを感じる。地方開催の希望があればコメント書いてね!という拙者の呼びかけに唯一答えてくれたのが、キヴィスの方。それを毎日新聞が取り上げてくれたことで、S橋理事長の目にとまり、その回にたまたまパイロットに詳しいN御大が参加されていた。そのどれかが欠けていても今回の大発掘は無かった。何年か後、このことはきっと大きな評価を得、多くの方々の目を楽しませることと思う。
今週の土曜日は第2回の【萬年筆に触れる会@笛吹】じゃ。そこでも何か発掘されるかもしれない!こぞってご参加を!