
その言葉を聞いた段階で調整方針は決まる物なのだが、今回は迷った。たしかに円盤形ニブなのだが、その状態が極めて良いのじゃ。今までに遭遇した円盤型ニブの最高峰と呼んでもいいくらいの書き味。普通の人なら大満足間違いなし!


たしかに円盤形のペンポイント!ただしスリットも含めてちゃんと調整されている。海外から新品未使用品を取り寄せたらしい。購入したのは2007年の9月。


もしこの姿がBや、せいぜいMくらいなら手を下すことは無かったであろう。ただ敵はEFニブであるということ。EFであるが故に書き出しのピントが合わない・・・という不満があるのかもしれない。こういっちゃ何だが、この書き味に文句をつけられるほど手が贅沢になっている人は、萬年筆研究会【WAGNER】でもそう多くはいないはずじゃ。

まさに円盤研ぎの教科書のような端正な研ぎじゃ!ここまで形状が綺麗なら書き味が悪かろうはずは無いのだが、それでも依頼人は・・・書きにくいとおっしゃる。
インクをつけて書いてみる。どの角度であっても引っ掛かりはない。インクフローにも問題は無い。ただ・・・書き味の特徴も無い。まるでParker 51のように、破綻の無い書き味が延々と続く感じじゃ。やはり何か特徴を出さないと長い間愛でていただくわけにはいかないなぁ。
そこでこれを角研ぎに変えることにした!




次に腹側を落とし、ペンポイント先端部を落として直方体のようなペンポイントを作り、そこから削りだしていく方式を採用している。非常に時間がかかり面倒だが、仕上がりに破綻が無いので、最近頻繁に使う技法じゃ。
書いてみると、これが同じ萬年筆か!と思うほど書き味が変わっている!しかし何分にもEFなのでにゅるにゅるとインクが出て、まろやかな書き味・・・とはいかない。そういう要望を見越して、背中側で書くと、極細、インクフロー悪し・・・というEFらしい書き味が楽しめ、表では良好なインクフローと書き始め時点でのピントのズレが無い(ストレスの無い)書き味となった。大成功じゃ!
【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間