2011年11月16日

水曜日の調整報告 【 Faber-Castell 伯爵コレクション ペルナンブコ 18C-EF 書きづらい 】

2011-11-16 01今回の依頼品はFaber-Castellの現法品。伯爵コレクションのペルナンブコ軸じゃ。どこにも不具合は無いのだが、【ペン先スムーズだか書きづらい】という評価。その書きづらさの理由として【ペンポイントが円盤形】だと判断されているらしい。

その言葉を聞いた段階で調整方針は決まる物なのだが、今回は迷った。たしかに円盤形ニブなのだが、その状態が極めて良いのじゃ。今までに遭遇した円盤型ニブの最高峰と呼んでもいいくらいの書き味。普通の人なら大満足間違いなし!

2011-11-16 022011-11-16 03こちらが真上から見たペン先画像。まったく破綻の無い端正な姿。これまでFaber-Castellは【Pen of the year】シリーズ以外の萬年筆は購入したことがなかった。多少馬鹿にしていたところもあったが、今回ニブの状況を見て、それが大きな間違いだとわかった。

たしかに円盤形のペンポイント!ただしスリットも含めてちゃんと調整されている。海外から新品未使用品を取り寄せたらしい。購入したのは2007年の9月。

2011-11-16 042011-11-16 05こちらは横顔。ペン先とペン芯との密着状態も良く、過度なお辞儀や反りは皆無。ペンポイントは確かに円盤形なのだが、横から見るとそれはわからない。

もしこの姿がBや、せいぜいMくらいなら手を下すことは無かったであろう。ただ敵はEFニブであるということ。EFであるが故に書き出しのピントが合わない・・・という不満があるのかもしれない。こういっちゃ何だが、この書き味に文句をつけられるほど手が贅沢になっている人は、萬年筆研究会【WAGNER】でもそう多くはいないはずじゃ。

2011-11-16 06こちらの画像が円盤研ぎを正面から見た画像。この段階ではまったくの手を下していない。

まさに円盤研ぎの教科書のような端正な研ぎじゃ!ここまで形状が綺麗なら書き味が悪かろうはずは無いのだが、それでも依頼人は・・・書きにくいとおっしゃる。

インクをつけて書いてみる。どの角度であっても引っ掛かりはない。インクフローにも問題は無い。ただ・・・書き味の特徴も無い。まるでParker 51のように、破綻の無い書き味が延々と続く感じじゃ。やはり何か特徴を出さないと長い間愛でていただくわけにはいかないなぁ。

そこでこれを角研ぎに変えることにした!

2011-11-16 072011-11-16 08まずはペン芯の確認。通路は1本溝だが、先端部は3本溝と成っている。このペン芯をよく見ると乾燥したティッシュが大量に絡まっている。要注意じゃ。インクをぬぐったばかりのペン先をティッシュで拭けば、右側画像と同じようにティッシュの繊維がペン芯の溝にまで絡みつく事がある。長い期間放置しているとインクが出なくなってしまうこともある。拭うのは布で行った方がよい。そういう意味で、おしぼり喫茶での試し書きは理にかなっている!

2011-11-16 092011-11-16 10こちらは調整後のペン先。円盤形ニブと、それ以外では調整の方向性がまったく違っている。今回は、まずは背中側のペンポイントのデッパリを全て削り取った。

次に腹側を落とし、ペンポイント先端部を落として直方体のようなペンポイントを作り、そこから削りだしていく方式を採用している。非常に時間がかかり面倒だが、仕上がりに破綻が無いので、最近頻繁に使う技法じゃ。

書いてみると、これが同じ萬年筆か!と思うほど書き味が変わっている!しかし何分にもEFなのでにゅるにゅるとインクが出て、まろやかな書き味・・・とはいかない。そういう要望を見越して、背中側で書くと、極細、インクフロー悪し・・・というEFらしい書き味が楽しめ、表では良好なインクフローと書き始め時点でのピントのズレが無い(ストレスの無い)書き味となった。大成功じゃ!


【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
追加:

書くの忘れました。

ペン先をぬぐうのに布を使うこと、早速始めます!
ティッシュの繊維がまとわりついていたのを知って、ティッシュはもう使いません。
Posted by yamamoto at 2011年11月17日 17:56
Pelikan_1931さん

調整ありがとうございます。

このペン先は入手以来まったく未調整のままだったんですが、完ぺきなペンポイントだったとは。。。

書きづらいと感じていたのは、ペン先うんぬんではなく細軸+トップヘヴィの形状が単に手に合わないせいかもと思いながらも、調整依頼してみてよくなればダメモトと思ってお願いした次第です。

7月にやはりに調整をお願いしたWaterman No.5が角研ぎしてもらって、前よりすごくよくなったんですが、このFaber-Castellも同じ調整をしたのでしょうか?先端を直方体のように落としたとあるので。同じだったらこれもいい感じになってるかな。結果に期待します。
Posted by yamamoto at 2011年11月17日 17:25