とにかくピストンが動きにくい!というのが調整依頼理由。しかもご友人を通じての依頼なので、どの程度困っているのかは想像するしかない。
そこでピストンを動かして見たのだが・・・なるほど、こりゃ難いというか、ほとんど動かないほど硬くて動きにくい。おそらくはピストンの弁がめくれ上がってその隙間からインクが後ろへ回っているのであろう。すなわち、動きが難いのはめくれのせいに間違いない。
この萬年筆にも背開きの症状がある。先端部は腹はぶつかり合っているが、背中に隙間が出来ている状態。いわゆる背開き!もっとも背開きは必ず解消しなければならないものではない。事実、背開きであっても腹を調整するだけで問題が解消する事もある。
今回はペン先調整依頼が無かったので、根本的にまずい段差を直す事以外では、ペン先に手を加えるのは止めておいた。
これは多少のお辞儀調整が必要じゃ。この時代の400NNの底力を楽しんで貰うには、この調整は欠かせない。それによって切り割りの両側で引っ掛かりが発生する部分も出てくるので、ある程度の丸めは必要・・・・なんて考えていると、結局は全面調整になってしまうが、ここはぐっと我慢して、形状を合わせること+若干の調整に止めておいた。
そこで鹿皮のかけらを胴軸内部にいれ、そこに先端部を平たくした五寸釘を入れ、トンカチでたたき出した。これも何回も叩いてやっと出た!
右側画像のように先端部の一部が見事にめくれ上がっており、これがスムーズなピストンの上下を妨げていたのと同時に、インクの抜け道を作っていたのじゃ。これは左画像の上側のスペア・ピストンと交換した。
ただ綺麗になったので、従前は目立たなかった最初の所有者の銘が発見された。
名入りの筆記具は、元の持ち主が何故手放すに至ったのかを想像しながらお酒を飲んだりする楽しみがある。本人が処分したのか、遺族が処分したのか・・・少なくとも書き味が悪くて処分したのでないことは間違いない。
最近の【生贄調整】は冒険するためではなく、往年の姿を取り戻すために行われることが多くなったなぁ・・・
【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1h 修理調整2h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間