2011年11月23日

水曜日の調整報告 【 Pelikan 400NN 14C-M ピストンの動きが難い! 】

2011-11-23 01今回の依頼品はPelikan 400NN。ペン先に対する調整要望は無かったが【生贄】扱いでの依頼。

とにかくピストンが動きにくい!というのが調整依頼理由。しかもご友人を通じての依頼なので、どの程度困っているのかは想像するしかない。

そこでピストンを動かして見たのだが・・・なるほど、こりゃ難いというか、ほとんど動かないほど硬くて動きにくい。おそらくはピストンの弁がめくれ上がってその隙間からインクが後ろへ回っているのであろう。すなわち、動きが難いのはめくれのせいに間違いない。

2011-11-23 022011-11-23 03この時代のPelikanのペン先はお辞儀が強いので常識的には腹開きになるのだが、実際にはお辞儀が足りなくて、ペンポイントが背開きになっている物も多い。

この萬年筆にも背開きの症状がある。先端部は腹はぶつかり合っているが、背中に隙間が出来ている状態。いわゆる背開き!もっとも背開きは必ず解消しなければならないものではない。事実、背開きであっても腹を調整するだけで問題が解消する事もある。

今回はペン先調整依頼が無かったので、根本的にまずい段差を直す事以外では、ペン先に手を加えるのは止めておいた。

2011-11-23 042011-11-23 05こちらが横顔。この時代のPelikanのペン先t比べるとお辞儀が少ない。これが背開きの一番の理由であろう。

これは多少のお辞儀調整が必要じゃ。この時代の400NNの底力を楽しんで貰うには、この調整は欠かせない。それによって切り割りの両側で引っ掛かりが発生する部分も出てくるので、ある程度の丸めは必要・・・・なんて考えていると、結局は全面調整になってしまうが、ここはぐっと我慢して、形状を合わせること+若干の調整に止めておいた。

2011-11-23 062011-11-23 07まずはピストンを抜くのが先決と、専用工具で引っぱったのだが抜けない!そこで胴軸を熱湯で暖めてから引っぱったのだが、尻軸が抜けただけで、ピストン弁が抜けない。

そこで鹿皮のかけらを胴軸内部にいれ、そこに先端部を平たくした五寸釘を入れ、トンカチでたたき出した。これも何回も叩いてやっと出た!

右側画像のように先端部の一部が見事にめくれ上がっており、これがスムーズなピストンの上下を妨げていたのと同時に、インクの抜け道を作っていたのじゃ。これは左画像の上側のスペア・ピストンと交換した。

2011-11-23 08軸は、内部だけではなく外部も、超電解水やロットリング洗浄液で洗浄した。また胴軸内部とピストン弁にはシリコングリースを塗ってから胴軸に押し込んだ。胴軸を清掃したことによって、胴軸の透明度が増し、ピストンの位置や、インクが後ろに回ろうとする状態が一目瞭然となる。

ただ綺麗になったので、従前は目立たなかった最初の所有者の銘が発見された。

2011-11-23 09ERIKA MEYER (エリカ・メイヤー)という名前が彫られている。字が揃っていないので、小さな半田ゴテの先端部のような、熱を使う工具で彫ったのかもしれない。

名入りの筆記具は、元の持ち主が何故手放すに至ったのかを想像しながらお酒を飲んだりする楽しみがある。本人が処分したのか、遺族が処分したのか・・・少なくとも書き味が悪くて処分したのでないことは間違いない。

2011-11-23 10こちらが微調整後のペン先。色の変化から、以前よりもお辞儀が強くなっているのが見て取れよう。これによって発売当時の書き味を取り戻したはずじゃ。それが好きか嫌いかはわからないが、【生贄】に対してどのような処置を図るかは任されている。

最近の【生贄調整】は冒険するためではなく、往年の姿を取り戻すために行われることが多くなったなぁ・・・


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1h 修理調整2h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間


Posted by pelikan_1931 at 12:45│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
ありがとうございます。来年こそは是非^^
Posted by ほねつぎや at 2011年11月26日 14:26
ほねつぎやさん

神戸、大阪での会合は、毎回土曜日です。どこかでおいでくださいね。
ちなみに、明日は岡山ですが(笑

現行品はともかく、Vintage萬年筆は、当時の人々が味わった書き味を再現するほうが良いのかな?と考えるようになってきました。
時代が楽しめれば、楽しみ方の次元が増えますからね。
Posted by pelikan_1931 at 2011年11月25日 15:11
はじめて書き込みさせていただきます。HNほねつぎやです。

このところ万年筆で書くことが多くなって、あれこれ試すうちに父親からペリカン#500を譲り受け、その書き味の素晴らしさに万年筆に嵌まりつつあり、ネットであれこれ検索するうちにこちらのブログを見つけ毎日のように拝見しています。

万年筆調整について書かれる内容、自身の専門の手技療法、柔整術のありかたに随分と参考になり、やはり一流の方は違うなあと感心させられています。自身でもブログで書かれているレベルでの施術が出来ればとの思いしています。

いつもは拝見するばかりなのですが「最近の【生贄調整】は冒険するためではなく、往年の姿を取り戻すために行われる」との言葉に、近頃、自身の施術でも患者の個別性を踏まえての、その人なりの正常な状態へ向けての施術の大事性を痛感しているだけに、我が意を得たりとの思いで書き込ませていただきました。

定例会にも一度参加したいと念願しているのですが、なかなかにスケジュールが合わずで、来年こそはと思っております。
Posted by ほねつぎや at 2011年11月24日 05:31