
このM800には最新の18C-3Bニブがついていた。ペン先の子ペリカンが一匹のものだったが、まるまると太った大きな玉だったこともあって、ペン先ユニットだけがお嫁に行った。そこで手持ちの3Bニブを引っ張り出して装着してみた。


それにスリットがガチガチに詰まっていて、インクフローはともかく、書き出しで掠れることは間違いない。でもStubっぽくてなかなか良い形状をしている。


以前、森山さんに【ペンポイントが薄くなりましたが、森山スペシャルに支障はありませんか】とうかがった事があるが、【まったく影響ないよ】とのことだった。やはり森山スペシャルは腹の研ぎに秘密があるんだな・・・と気付いた瞬間だった。もう10年以上前の話だが・・・

ということは、どこかの段階でペン先を曲げる調整もどきが行われたことを意味している。出荷段階でここまで段差があるのを放置するほどPelikanの品質管理は甘くない・・・と信じたい。
いずれにせよ段差解消やスリット拡大は、Pelikanのペン先の場合は非常に簡単。復元力が弱いのでグっと力を入れれば曲がってその状態で留る。まるで粘土細工のように簡単で、生産性も高い!

という未来が明確に描けるペン先になってしまった。これでは、またすぐにお嫁に行ってしまう。困った・・・・


斜面は多少ハイレグに削り、ペンポイントは小さく研磨した上で、細字が書けるように微調整をした。前回紹介したM805の極細調整は首軸先端部のリングを握って小さな字を書くのにに適した調整だったが、今回は普通に書いてもある程度のインクフローが得られる調整と言うことに主眼をおいた。
そこでペンポイントの背中を削る工程をスキップし、腹だけを徹底的に研磨して細字を作り上げた。従って通常握る位置であっても、インクは必要十分なだけ出るし、書き味も悪くない。
この【悪くないが絶品でもない】という状態が良いのじゃ!絶品になると飽きてしまう。ただ気をつけなければならないのは、手が万年筆になじんでいくこと。
万年筆が手になじんでくる・・・と思われている現象は【持ち手の方が万年筆になじんでくる=書き方が変わる】とも言える。特に同じ万年筆だけを朝から晩まで高筆圧で書き続けるひとの場合以外は、たいていコレじゃ。一ヶ月でペンポイントが書き手になじんで研磨されたりはしない。書き手がおいしいところを探して書いているうちに、万年筆にならされるのじゃ。
要するに調整のフィニッシュにはそれほどエネルギーを使わなくてもいいということ。
まずい!昨晩調整した万年筆に、すでに手がなじみ始めている・・・
【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間