2011年11月25日

金曜日の調整報告 【 Pelikan Hunting 18C-M (p.f.) ヌルヌル化 】

2011-11-25 01今回の依頼品は・・・【生贄】ではなく、書き味の微調整。ブツはPelikanのハンティング。実家にいるので詳しい資料が無いのだが、たしか1994年の限定品。トレド型の限定第1号だったはず。その前はGreen と Blueのスケルトン軸だったかな。

銀の彫刻の間に軸色と同じ緑の樹脂を入れているのだと思うが、シンナーなどで拭くと溶けてしまうという噂を聞いた。【ハンティングとオーストリア1000とコンチェルトは樹脂が溶ける】とか。どなたか被害にあったり、試されたら報告してくだされ。強く擦っただけでも、有名な【雑巾トレド】のようになるかもしれない。

2011-11-25 022011-11-25 03ニブと首軸との関係、ペン先とペン芯との関係などの位置関係はパーフェクト。これって拙者が位置調整したのかな?ここまで完璧な位置調整が出来る新人なら【調整師候補】としてスカウトしたい!

Pelikan M800は位置調整に手を抜かないことが一番大切。ニブの種類や、使い手の筆記角度に合わせて若干の位置調整も施すが、基本はこの位置が正しい。特に、限定品の場合は、書きやすさよりも美しさの優先順位を上げることにしている。それにしても【p.f.】ニブは美しい。

2011-11-25 042011-11-25 05横顔にも破綻は無い。筆記角度も依頼人にあっており、ペン先のずれも無い。最高の状態なのに微調整の依頼が舞い込んできた。

で、インクをつけて紙に書いてみたところ・・・かなり筆記音が高い。まったく引っかからないのに筆記音がシャリシャリシャリシャリとかなり大きく響く。書きあがった字には表情があって実にいいのだが、仕事で使うには、音が大きすぎるなと思ってペンポイントをボーグルーペで拡大してみると・・・

2011-11-25 06こんな感じに見えた。表面がかなり粗い耐水ペーパーで荒らしてある。おそらくは1200番程度だと思われる。通常は1200番は仕上げには使わない。

320番でスイートスポットを削り込んだ後、ペンポイントの形を整える際に使うが、仕上げは2500番か5000番にする。細字なら10000番か15000番を使うこともある。

いわゆるペンポイント表面がザラザラの状況。面白い字はかけるが気持ちよくない・・・と、依頼者は感じたのだろう。それにしても、この表面をざらつかせるのは悪くない!Bに施せば摩擦が大きすぎ、かなりインクフローを潤沢にしないと厳しいだろうが、Mには面白い。この感触を覚えておかねば・・・と30分ほど筆記してから表面研磨を行った。

2011-11-25 07まずは、2500番の耐水ペーパーで表面を丸め、次に秘密のペーパーの上で、8の字旋回を左回りの8、右回りの8、右回りの∞、左回りの∞を各100回ずつ行う。次にインクをつけて字を書いてみる。そこで違和感のあった部分に15000番のラッピングフィルムを添えて引っかかりを確認する(確認するだけで削ってはいけない)。その引っ掛かりを除くように5000番の耐水ペーパーで少し研磨しては、ラッピングフィルムで確認する・・・という行為を繰り返す。

その後、10000番のラッピングフィルムの上にインクをたらし、それを使って書きながら表面のスムージングをやる。最後に金磨き布の上で、8の字旋回を各10回ずつ軽く行う(これはスムーズ化ではなく荒らし)。超電解水をふきつけてから、スリット内を15000番のラッピングフィルムでスリスリとやってゴミを落としてからルーペで確認する。そうすると、このように綺麗な表面となる。

2011-11-25 082011-11-25 09書き出しでスキップするようなら、5000番や2500番の上で、書き出し方向にだけ、シュリっと一回擦ればスキップは解消する。(研磨がちゃんと出来ていればだが)

ねっとりとしたインクをつけて布でぬぐい、相馬屋の原稿用紙の上にペン先を降ろす。その瞬間、現実世界から解き放たれ、精神の世界に召されたような感覚に陥る。ああ、これが本来の【p.f.】ニブ、特にMの感触だよなぁ・・・との想いに浸れる瞬間!

はっきり言って【調整を施した18C-Mのp.f.刻印付き】は実用には向いていない。強いて言えばトリップ用かな?いわゆるヤクなので近づかないほうがいい・・・仕事の生産性が極端に落ちる。


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間


Posted by pelikan_1931 at 08:30│Comments(8) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
たでくふむしむし会さん
やはり拙者の手を経由したものでしたか!
除光液・・・次のターゲットは何にするかな?
Posted by pelikan_1931 at 2011年11月30日 14:46
師匠、ハンティングの調整ありがとうございました。ザラつきが無くなり気持ちよく書けるようになりました。
ところで、このペンは1年ほど前みずうみのほとりから小生の手許にやってきて、段差調整を師匠にお願いしたものです。ペン先の位置のみでそれがわかるとは、スゴい!!
世間では、除光液だのいぶしだのおぞましいことが喧伝されているようですが、私の萬年筆ではご勘弁を。ハンティングははげるのにコンチェルトには効かない?じゃ、トレドでは??文系人間の私にはわからないことだらけです。
Posted by たでくふむしむし会 at 2011年11月28日 13:38
明日、持ち主が岡山大会に現れるので、除光液買ってきておくかな?
Posted by pelikan_1931 at 2011年11月25日 22:58
ペコさん
いいえ、いいえ。どういたしまして。
エニィタイム! ドント・メンション・イットゥ!
なんだかプロトタイプのハンティングみたいでいい感じですよね。
Posted by kugel_149 at 2011年11月25日 22:17
師匠、kugel_149さん、こんばんは。
私のはkugel_149さんの真似です。
以前にどこかでお書きになっていたのを読んでご本人にお訊ねしたのです。(その節はありがとうございました)
彫刻がシルバーになるだけでキャップや尻軸のグリーンまで渋く上品に見えます。
師匠、盛り上がったところに塗るのは面白い案ですが実用にしたらすぐに剥がれてしまいますし、何より酸化した銀で手が汚れてしまいますよぉ。
Posted by ペコ at 2011年11月25日 22:12
購入して使い始めてしばらくして、
執筆した後に、親指と人差し指のそれぞれ先端が、
なんとなくベトベトしたような感覚を覚えました。
銀に緑色の塗料を塗った部分が、
指紋で削ったのでなく、溶け始めたようになっていました。
ルーペで見ると、ブツブツができ始めていました。
加速度的にベトベトし始めて、ついには、緑色の塗料の下に
銀色の下地が見えてきました。

ペコさんと同じように除光液で
簡単に緑色の塗料を払拭することができました。

ライカM6の赤いライカマークの赤い部分を落とした時の
薬品(なんだったか忘れた)を使おうとも考えましたが、
インク窓に付着したら悲しい結果がもたらされるような気がして、
除光液どまりにしときました。
ドングリの葉っぱの一部分にうっすらと緑が残っていたり、
鹿の角や猟犬のお目目に緑が残っていたりするんですが、
それはそれでなかなかいいなと、愛用しています。

ちなみに、コンチェルトでは、その症状は起きませんでした。
Posted by kugel_149 at 2011年11月25日 20:18
ペコさん

ということは、図柄全体が純銀のハンティングですか!いいですな。
盛り上がったところにだけ、いぶし液を筆で塗るのも面白そうですが、器用な人でないと無理かなぁ・・・
Posted by pelikan_1931 at 2011年11月25日 15:14
こんにちは。
私の所有するハンティングですが、どうも樹脂の色が生々しくて気持ちに馴染まなかったので…マニュキュア除光液でやっちゃいました。
尻軸を抜いた状態で、なるべくインク窓を侵さないように除光液を浸した脱脂綿で少しづつ処理しました。思ったより簡単に溶けました。
その後シルバー部分をいぶし液で仕上げ、レリーフのコントラストを強くしました。
こちらの方が渋くて好みです。
Posted by ペコ at 2011年11月25日 13:25