久しぶりに18Cニブ付きのNo.146に出会った！18Kニブ付きは【伊東屋限定モデル】とか【丸善120周年記念】などで国内販売されていたので購入した記憶はあるのだが、18Cは海外から入手した人のを見せていただいただけ。けっこうレアなアイテムである。
18Kニブ付きのNo.146はフランス市場や高額モデル（ソリテールなど）では一般的だが、それ以外では見かけたことがない。今回は生贄対象ではあるが、ペンポイント近くのたわみが直ればHappy！ということでやってきた。
【たわみ】が意味する内容は不明だが、左画像のようにペン先先端部に【アタリ】が多数ある。この傷を消して欲しいということだろう。
また【右から左に書くときに時々ザラつきがあるのでとってほしい】とのコメントも書かれてあった。拙者の場合、右から左に線を書くのは英語サインの最後の最後の5�冂�度なので。どういうシチュエーションなのかが見当がつかないが・・・ま、生贄ですから！
横顔を見ると先端部の金の厚みがかなりあることがわかる。18Cとはいってもヘロヘロに柔らかいのではなく、ガッチリとしたMontblancらしい書き味に（元々は）なっていたはず。
依頼主はかなり萬年筆を寝かせて持ち、また手の感覚が非常に鋭敏（調整師の間では非情に鋭敏とも言われている
）。それを前提とすれば、現在の書き味は悪くはないが満足は出来ないレベル。インクフローは良いのだが、筆記時の感触が【米俵をズリズリと引きずる感じ】に近い。これを23�丱織ぅ笋離�ロスバイクで舗装道路を走るような感じにしてあげれば良いのだろうと判断した。依頼主は自転車愛好家でもあるので・・・
尻軸を外して後ろからたたき出したペン先。コストカット穴の無い18Cのペン先は流石に美しい！
最近のレーザー刻印とは違い、刻印それぞれのエッジが不鮮明なところが味があって好きだ。ひょっとするとプレスで押した刻印かもしれない。外してから多少スリットを拡げ、全体を徹底的に金磨き布で研磨した。
こちらはペン先先端部。【アタリ】がほとんど消えているのがわかろう。これは簡単で、まずは1200番程度の耐水ペーパーでゴリゴリと【アタリ】が見えなくなるまで削る。
そのあと2500番、5000番で追い研ぎをし、最後にゴムブロックの角を覆うようにセットした金磨き布の上にペン先を押しつけ、シャシャシャと50回ほど高速往復運動をすると傷は跡形も無く消えてしまう。
最後はペンポイントの研磨。まずはペン先先端部のお辞儀をやや緩めた。これはペン先画像の赤色化が調整前より弱くなっていることでわかる。以前はペン芯とペン先の間に隙間があるのを、ペン先をお辞儀させることによって解消していた。それをペン芯を反らすことによって解消し、お辞儀を弱めた。これによって多少書き出しのタッチがまろやかになる。
ペンポイントの研磨に関してはかなり時間をかけた。【ほれぼれするような美しいペンポイントの形状】では、依頼人の筆記感を希望どおりに仕上げることが出来ないので、かなり追い込んだ調整にしてある。
Stub系の調整ではないので拙者にとっては絶品の書き味とは呼べないが、超低筆圧で書き出し、たまにペンが右に倒れる癖のある依頼人が望む許容範囲にはなんとか入ったであろう。
低筆圧・低筆記角度で書き出す人にとっては実は太字は相当厳しい調整が必要。拙者もその一人だが、そういう人にはStub調の調整が向いていると思う。そしてM800くらいの軸長の方が取り回しも楽じゃ。
【 今回執筆時間：5時間 】 画像準備1h 修理調整3h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
2011年12月19日
月曜日の調整報告 【 1970年代 Montblanc No.146 18C-B 生贄 】
この記事へのコメント
Bromfieldさん
ペン芯の設計が変わるとアンマッチにある事があります。
No.149型ならばデュマからペン芯が大きく変わりました。
ペン芯の設計が変わるとアンマッチにある事があります。
No.149型ならばデュマからペン芯が大きく変わりました。
Posted by pelikan_1931 at 2011年12月21日 18:02
以前師匠に、１４６のニブと１４６８（ソリテール・シルバー）のニブの交換をお願いしましたが、その際ペン芯とニブをそのまま交換できないことがありました。これはペン芯の問題、ニブの曲率の問題と共に、１４Ｋと１８Ｋのニブの厚さの問題もあるのでしょうか。
金価格高騰のおり、コストカット孔のみならず、ニブの厚さまでも影響しているのかどうか、気になるところです。
金価格高騰のおり、コストカット孔のみならず、ニブの厚さまでも影響しているのかどうか、気になるところです。
Posted by Bromfield at 2011年12月20日 00:52
私の印象では18cの方がお辞儀の傾斜が強い気がします。
ただ、デッドストック物でも14c,14k,18cなどエボ芯がついた物はお辞儀の角度がばらついているので、経年劣化、あるいは職人達の個性でしょうか。
ただ、デッドストック物でも14c,14k,18cなどエボ芯がついた物はお辞儀の角度がばらついているので、経年劣化、あるいは職人達の個性でしょうか。
Posted by totota at 2011年12月19日 18:13
totota さん
通常はペン先先端部はとじた状態で出荷するのが基本のようです。我々はあまりの書き出し筆圧の低さで書き出し掠れを頻発するため、太字のペン先はスリットを開いています。
ただしこの処置を施すと以降のメーカー修理が有料になるという噂もあります。
18Cは素材が柔いので14金ほど弾力がつけられず、書き味は相対的に硬くなるというのが相場です。
お辞儀は弾力のためでは無く、おっしゃるとおり耐久性増加の策でしょうが、同じ時代の14金も同じようにお辞儀していませんか？
通常はペン先先端部はとじた状態で出荷するのが基本のようです。我々はあまりの書き出し筆圧の低さで書き出し掠れを頻発するため、太字のペン先はスリットを開いています。
ただしこの処置を施すと以降のメーカー修理が有料になるという噂もあります。
18Cは素材が柔いので14金ほど弾力がつけられず、書き味は相対的に硬くなるというのが相場です。
お辞儀は弾力のためでは無く、おっしゃるとおり耐久性増加の策でしょうが、同じ時代の14金も同じようにお辞儀していませんか？
Posted by pelikan_1931 at 2011年12月19日 11:47
IloveHappy さん
Vintageはともかく1960年以降の首軸ユニットを捻ってはずすのには大きなリスクがあります。インク漏れならともかく、首軸にクラックが入るリスクがあります。特に市販の接着剤やバスコークで止める場合。実験でしっかりとしたデータを持っていないと危険です。
No.147はカートリッジ式なので、ペン芯から細い管が伸びています。後ろ方たたいたら・・・（以下略 ）
No.146やNo.149のペン先の外し方については、ずいぶん前にフルハルターで、たたき出すのが一番安全と聞いて以来、愚直に教えを守っています。インク窓模様には無関係。
Vintageはともかく1960年以降の首軸ユニットを捻ってはずすのには大きなリスクがあります。インク漏れならともかく、首軸にクラックが入るリスクがあります。特に市販の接着剤やバスコークで止める場合。実験でしっかりとしたデータを持っていないと危険です。
No.147はカートリッジ式なので、ペン芯から細い管が伸びています。後ろ方たたいたら・・・（以下略 ）
No.146やNo.149のペン先の外し方については、ずいぶん前にフルハルターで、たたき出すのが一番安全と聞いて以来、愚直に教えを守っています。インク窓模様には無関係。
Posted by pelikan_1931 at 2011年12月19日 11:42
No.146 18Cを今まで3本見てきましたが、3本ともペン先、ペン芯がお辞儀し、スリットが閉じていました。
素材の柔いペン先を強筆圧で変形させないためでしょうか。
素材の柔いペン先を強筆圧で変形させないためでしょうか。
Posted by totota at 2011年12月19日 08:11
IloveHappyです。
モンブランマイスターシュテュック146の記事なので、以前から持っていた疑問について質問させていただきます。
マイスターシュテュック147のペン先の外し方ですが、師匠の過去の記事によると「引く抜くしかない」とあります。前から見ると現行146と同様、ややハの字になった位置に工具を引っ掛ける穴がありますが、147は回転させてペン芯が外せないということでしょうか？
また、本記事でペン先を「尻軸を外して後ろからたたき出した」とあります。149は前から外すとシールが取れてしまい、インク漏れが起きるとの記事があったことは記憶しますが、146も同様に後ろからたたき出した方が良いということでしょうか？ それとも本記事の個体である格子でないインク窓モデルについてのみの取り扱い方法でしょうか？ 解説をよろしくお願いします。
モンブランマイスターシュテュック146の記事なので、以前から持っていた疑問について質問させていただきます。
マイスターシュテュック147のペン先の外し方ですが、師匠の過去の記事によると「引く抜くしかない」とあります。前から見ると現行146と同様、ややハの字になった位置に工具を引っ掛ける穴がありますが、147は回転させてペン芯が外せないということでしょうか？
また、本記事でペン先を「尻軸を外して後ろからたたき出した」とあります。149は前から外すとシールが取れてしまい、インク漏れが起きるとの記事があったことは記憶しますが、146も同様に後ろからたたき出した方が良いということでしょうか？ それとも本記事の個体である格子でないインク窓モデルについてのみの取り扱い方法でしょうか？ 解説をよろしくお願いします。
Posted by IloveHappy at 2011年12月19日 07:45
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