何度遭遇してもPelikan #500には胸が痛む。拙者が初めて購入したPelikanは#600のEFだったが、この柔らかさに苦戦し、いくら調整しようとしても駄目で、最後は机に叩きつけてペン先を葬ったことがある。
その後、少し柔らかいのも書けるようになったころに#500の茶縞で14C-Mを購入したが、やはり柔らかさが肌に合わず、長い間死蔵していたものじゃ。いまでも柔らかいペン先は・・・大好きだが苦手。弄ぶには良いが、字を書くとすぐに疲れてしまう。ペン先はオリジナルの#400についているペン先に間違いはない。実際に書いてみなくても、刻印の深さと、形状でM250用とは区別できる。この#400や#600の柔らかいニブは1本は持っておいて損はない。
腰のない柔らかさという書き味を知って初めて、腰のある柔らかい書き味を評価できるのじゃ。
この固体も柔らかさは十分だが、スリットが詰まっている。筆圧を書ければすぐに開くので問題はないのだが、筆圧ゼロで書き始めようとすればスキップしてしまう。またこの状態ではすさまじくピーピーと鳴く。左から右へ高速で線を引く時にピーピーと鳴ってインクの飛沫をまき散らすのは大好きだが、通常筆記時にピーピー音だけ発するのは勘弁して貰いたい。
スリットを少し開き、表面を細かいペーパーで磨いて摩擦を少なくする必要があろう。こちらは横顔。依頼人の筆記角度では、この状態ではピーピー音が出るので、わからない程度に研磨し、音を消しておこう。
ほんの少しだけ削り、表面を細かいペーパーで擦ることによって、ヌメヌメとしたここち良い書き味に変化する。筆記速度を上げればお約束通り、ピーピーと鳴ってインクをまき散らしてくれる。これもまた一興!こちらはソケット毎外したペン先。今回はソケットを外さないことにした。すなわち元のままの状態。この状態が拙者がベストと考える一と一致していた。
柔らかいニブは薄く作られていることが多いので、ソケットだけではしまりが足らず、左右にぐらつく事がある。従って、必要なければソケットからの着脱を繰り返さない方が良い。こちらがスリットを少し拡げた状態。ほんの少しの細工だが、これで書き出し掠れの確率はずっと減る。
それにしてもこの時代のペン先は美しい。M800やM1000と比較しても圧倒的に気品があるボディシェイプじゃ。これがM250用の堅いニブになると、ずっと野暮ったい形状になる。よ〜く見比べて差がわかるようになったら、あとは#500と#600を買いあさるのみ。ただし70%以上は堅いペン先なので、見分ける力を身につけていないとガッカリすることになりますぞ!こちらがほんの少しだけペンポイントの斜面を筆記角度に合わせて舐めた状態。1200番の耐水ペーパーの上で、8の字旋回を左回り、右回りで各30回。その後∞旋回を左回り、右回りで各30回。その後にエッジ丸めと仕上げ研磨をやった。
仕上げが甘いとゆっくり書いてもピーピーと鳴く。高速筆記の時だけ鳴くように仕上げを調整するのがポイント。こればっかりは個人の好みがあるので、対面調整でないと無理・・・・今回は生贄なので、拙者の好きな状態に調整しておいた。
インクをつけて書いてみる。ああ、やっぱり気持ちよい!
【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間