2012年01月04日

水曜日の調整報告 【 Mabie Todd Swan 14C-M インク途切れ・・・ 】

2012-01-04 01前回に引き続き、左利き&押し書き&細字調整依頼のもの。前回はPelikanであったが、今回はペン先の柔らかさで有名なMabie Todd Swan。拙者も一時Swanに嵌まったことがあり、総計で100本くらいは入手した。結局Vintageは手に合わないと悟り、現在ではSwanはおろか、1982年以前に製造された万年筆は2〜3本しか持っていない(はず)。

インクがすぐ途切れるということだが考えられる理由は3つで、インクサックが腐っているか、ペン先とペン芯の間に隙間があるか、空気穴が詰まっているかじゃ。

2012-01-04 022012-01-04 03ペン先が変形しているのも直して欲しいとのことだが、確かにかなり傷が付いている。またペンポイントはガサガサに肌荒れしている。これは自然とそうなったのではなく、安いヤットコで強引にペン先を曲げたから。力を入れてペン先の金属部分を摘むとどうしても傷が付いてしまう。それを補修するのはサンドペーパーで磨いて、金磨き布で擦れば良いのだが、そこまでやっていない。

さらに気になるのがスリットがO脚気味になっていること。これもインク切れが発生しやすい原因の一つではあるが、さほど深刻ではない。美的にはペン芯が上から見えているのがなんとも不細工。こちらはペン芯を削って上から見えないようにしたい。

2012-01-04 042012-01-04 05横顔を見ると、アチャー!ペン先とペン芯はペン芯先端部で密着はしているが、そこに至る部分が大きく離れている。これではインクがボタ落ちしたり、インクが途切れたりするわな・・・。しかもお辞儀が大きいので、前回のコメントにあったように、押し書きする際に、ビビリが発生する。そもそも細字好きの依頼者の趣味には合わない。

かなり横幅が大きな球なので細字化には横を削る必要がある。ただこの時代のペンポイントは硬くそう簡単には摩耗しない。またペン先が柔らかいので、リューターで作業するのは危険。時間をかけてペーパーで磨くしかない。

そこで発砲スチロールの円柱に耐水ペーパーを巻き付けたもので、少しずつ削っていった。

2012-01-04 06サックは大丈夫かな?と引っぱり出してみたら・・・大丈夫ではなかった。内部で捩れ、捩れた部分が腐ってほとんどインクを吸わない状態になっていた。計測してみると、胴軸の後端まで届くほど長いインクサック。この時代の貧弱なペン芯では、これだけのインク容量を保持してボタ落ちを防ぐ能力は無い。もう少し短いインクサックにするべきであろう。

2012-01-04 07また胸に挿しての運搬は論外。あくまでもデスクに置いているのを利用というのがよかろう。ペンケースに入れておいても振動でインク漏れすることあり。要注意!特にキャスター付きのバッグに入れると被害甚大になる恐れ有り!いずれにせよレバーフィラー式を使う場合、サックは消耗品。交換は簡単なのでサックとサックセメントは手元に用意すべし。

2012-01-04 082012-01-04 09こちらが細字化と傷おとしを施したペン先。側面はかなり削り込んだ。また上側のペンポイントは細美研ぎ風に研磨した。これは細字化のため。元のペン先のお辞儀の状態でこの処置を施せば、先端部が紙に埋まるように押されるので言語道断だが、前回の調整師のアドバイスのように、ペン先のお辞儀を弱くしたので、細美研ぎ風にしても大丈夫。

ペン先の表面は320番の耐水ペーパーを皮切りに、1200番、2500番と磨いていき、最後は金磨き布に擦りつけてピカピカにした。よく見るとハート穴から裂け目が入っている。これもこの時代のペン先にありがちだが、柔らかさが増すとかえって珍重されることもある。今回も実害は全くなさそう。

2012-01-04 102012-01-04 11こちらが調整前後の横顔の変化。ペン先のお辞儀を緩め、その曲面に合わせてペン芯を曲げた。これによってボタ落ちやインク切れの確率は減ったはず。またお辞儀を緩めたことと、ペンポイントの表面を可能な限り鏡面化したことによって、滑りが良くなり、ビビリは減った。

細字化については、これだけ柔らかいペン先の場合、ペンポイントの幅を狭めても筆圧で横に簡単に開き、字幅は太くなる。そこで細美研ぎ化によって左手押し書きの縦線の幅を狭めた。先端部はギリギリ紙の繊維にひっかからない角度になっている。押し書きの場合、縦線の幅はペンポイントの厚みなので、Italic化が適しているように思いがちだが、Itaicを押し書きでは使えない。あくまでも引き書き用の調整なのじゃ。

実際に左手で筆記してみたが、なんとか引っ掛かりもなく、そこそこのインクフローで筆記できる。まあまあ成功かな?


【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1h 修理調整2h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間



Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整