2012年02月01日

たこ吉スペシャル研ぎの名称決定!

調整師にはモロゾフコーチ型とフランケンシュタイン男爵型がいる。

前者はその萬年筆が持つ潜在能力を極限まで高める方向で調整する。

後者はその萬年筆を改造してまったく別物の萬年筆にしてしまう調整もいとわない。

後者の例では・・・

★フルハルターの森山さん: 森山スペシャルカモノハシ調整
★パイロットの広沢さん: UEF研ぎ出し
★セーラーの長原Sr.さん: キングイーグルキングコブラコンコルドetc.
★セーラーの長原Jr.さん: 細美研ぎ

などが有名じゃ。

萬年筆研究会【WAGNER】では、今までは、らすとるむさんの【らすとフォルカン】が名称としてあるだけだった。そういやM1600とかM2000もあったかな?

悔しいので、拙者も独自の研ぎに名前をつけた。名前のセンスはともかく、覚えやすいのでこれでよしとする。

現在は4種類ある。実は既にお嫁に行ってしまって手元に無い物もあるがいつでも再現出来る。ただ最近忘れっぽいので記録としてココに残しておく。

タコスペイチオシ   右手に握ればItalicに近いStub。左手に握ればぬらぬらの押し書きが出来る魔法の研ぎ。形状も特殊。一番の自信作で、押し書きが出来るのでイチオシと名付けた。
              WAGNER 2009やPelikan M800のBBや3Bのようにペンポイントが大きなペン先でだけ実現可能な研ぎ。
               横から見ると今まで見たことがない形状をしており、オリジナリティあふれる研ぎだと悦に入っている。
               ひっくり返して書いても抜群の書き味!難点は研ぐのにものすごく時間がかかり、ペンクリでは研いであげられないこと。ペントレにはこっそり混ぜておくことがあるかも・・・
              大宮大会に紛れ込ませておきます(きっぱり!) 土曜日の元町大会で左手書き練習中の人用の調整時に完成形のヒントを思いついたもの。
              Stub調の書き味が好きな人にはたまらない書き味であろう。ただ筆記角度にセンシティブなのでパーソナライズは必要!
              いろんな書き方をする左利きの人の意見を聞きながら完成形に持って行きたい。その過程で亜流が生まれるかもしれない。
              研いだ形状を見れば真似は簡単だが、この形状を思いつく人が今までにいなかったのも事実。
              右手書きStubの書き味改良ヒントが、左手書き(押し書き)にあると気付かなければ生まれなかった研ぎじゃ。

タコスペ一番捻り  O3BやOBBなどの極端な左オブリークを右傾斜の筆記角度で書いてもスラスラと書けるように調整したもの。ペンポイント側で捻りを吸収する研ぎ方。
              一番最初に特殊研ぎと認識したのと、麒麟の一番搾りのゴロが良かったので、一番捻りと名付けた。
              以前はOBを入手したら、右側を研磨して、Bに研ぎ直していた。ところがペン先にOBと入っていると形状不一致を起こし、後世の人に混乱を与えるかもしれない。
              そこである時期からオブリークであっても普通に握って書けるように研ぐことにした。ところがオブリークの形状を意識する人は、Bとは違う握り方をする。
              意識の仕方は人それぞれ。オブリークに合わせて左に捻る人もいれば、意識しすぎて逆に右に捻る人もいる。従ってパーソナライズが必須の研ぎ方なのじゃ。
              上から見た形状はオブリークのままで、ペンポイントの腹の部分だけを書き癖に合わせて研ぐのがコツ。
              オブリークを右倒しで書く人向けの調整では、ペンポイントは酷い形状になっている。ところが書き味は実に良い。オブリークでは実は接紙面積は通常研ぎよりも広くなる。
              従って書き味(ぬらぬら感)も一番捻りの方が通常の研ぎよりも良くなる。O3Bの一番捻りを体験するとオブリークに対する偏見は消滅じゃよ!

タコスペコレドM  カモノハシ調整を練習中に偶然出来た調整。上から見るとカモノハシほどではないが両側の斜面を削り込んでいる。
              横から見るとペリカンのくちばしのような形状で、先端が尖っている。
              M800の最近の丸研ぎのMで、PelikanならEF、昔のPilotの純銀カスタムならF〜M程度の細さを実現したモノ。今一番のお気に入り。
              これがM800のMの書き味だ!と声を大にして叫びたいのと、コレド日本橋のゴロが良かったので、コレドMとした。別名ペリカン研ぎ。
              これはイチオシよりもさらに研磨に時間がかかるが、いつも持参しているので声をかけて頂ければ試筆可能。手帳用に愛用中。
              軸は気に入っているが、ペン先が太すぎるので細字にしたい・・・というような場合に最適な研ぎ。
              持っている萬年筆がほとんど太字だが、最近細字が好きになってきたのでやむなく先人の知恵を参考に工夫した。インクの出具合はスリットの寄せで調整する。

タコスペ超不細工 超極細でStubの書き味が出来ないかと研いでいるうちに出来たもの。UEFと細美研ぎとStubを合わせたような極細研ぎ。
              ペンポイントの極細の線幅を、Stu(b=)と美研ぎの形状に細して実現したので、超不細工と呼ぶ。
              こちらはコレドMとは違い、M800の現行の丸研ぎのEFを削り込んでいく。Montblancの円盤研ぎのEFFにも適用できる。
               5ミリのマス目に【カランダッシュ】の7文字が楽々と書ける。UEFの線幅にしては書き味は良いのだが、横から見ると、名称のとおり形状は不細工。
              ひっくり返して書くと驚くほどヌメヌメのFM程度の字幅になる。しかもインクの出る量が少ないので、太くても滲まない。
              円盤研ぎのEFの書き味に手を焼いていたらお持ち込み下され。こちらはそれほど時間はかからない。15分くらいで完了じゃ。
              Stubが少し入っているので縦線が若干太い。その分だけ書き味が良いのがポイント。研ぎはほんの2〜3分。残りは書き味改善に必要な時間。 


誤解無きように補足しておくが、上記4つの特殊研ぎよりも、いわゆる【たこ吉スペシャル】と自称している、森山スペシャルと(拙者が勝手にそう呼んでいるだけだが)金ペン堂研ぎに触発されて編み出された太字ぬらぬら調整の方が書き味は断然良い。 

正統派の研ぎの世界は確立されてしまっている。なんせ【萬年筆と科學】に出ているくらいだから・・・。となれば名前をつけるからにはニッチな世界の研ぎ方の提案しか残っていない。 

ということで、これから自分の名を冠した研ぎの名称をつける人は、何を狙った研ぎ方で、どの研ぎ方からヒントをもらって研いだかを宣言して欲しい。もしフランケンシュタイン男爵型調整師を目指すのならば・・・ 

自分がどちらかわからない人は、ボーグルーペを装着した写真を友達に撮影してもらいなされ。それが思いのほか似合ってたら、あなたはフランケンシュタイン男爵型です。さぁ、あなたはどっち?       


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(5) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
こんにちは。

例えば、われわれ人類、ホモサピエンスは生物学的にざっくりと
<動物界 脊索動物門 哺乳網 サル目 ヒト科 ホモ属 サピエンス種>
となりますが、師匠の「イチオシ」を勝手に万年筆学的分類をしてみますと
例えば「M800イチオシ」の場合は
<万年筆界 脊索門(ペン芯有り) 哺インク網 フード目(キャップが必要) ペリカン科(メーカー) ペリカン属(ブランド) M800種(型番)
の突然変異種>という位置づけでしょうか。
もとは突然変異ですが個体数の多い森山スペシャルはM800の亜種、長原さん関係はメーカー直系かつ一つのブランドととらえ、セーラー科長原属・・・となる?
そう考えるとつけペンはペン芯不要なので門という早い段階で系統分岐していますが、つけペンの方が万年筆より歴史があるので、界=筆記具としたほうが分類としては妥当でしょうか。
与太ですみません。
Posted by hideyosi at 2012年02月01日 18:07
あわわ〜〜。
師匠。わざわざ命名いただき恐縮です。
認定までしていただき今後は正式名称として使わさせて頂きます。
★らすと・重ね着クロス・・・なるほど特徴を上手く言い表していますね!
この度は誠にありがとう御座いました。
さて、自分も最近は細字の書き味に嵌っていて、それも硬い硬いスクリプトとかアカウント系を研究しています。
Posted by らすとるむ at 2012年02月01日 15:44
調整師界の有吉・・・と呼ばれた(誰もそう呼んだ人はいないが・・・)拙者がらすとるむスペシャルの正式名称を与えよう。

らすとフォルカン・・・採用・・・すでに長い実績もあり、あのマジェスティにも実装されていることから。
らすとクーゲル・・・改名!・・・なんちゃってなところから【らすとクーゲル?】と改名されたし。最後の【?】が重要!
らすとクロス・・・改名!・・・もう少し改造の方向性がわかる名称として、【らすと重ね着クロス】へ改名されたし。
大吟醸山田錦・・・改名!・・・お酒の商品名の頭に付くので、紛らわしい。それに単なる大吟醸よりも柔らかさを強調したいので【らすと純米大吟醸】と命名。【らすと】と【山田】は重なるので山田を省く。
コマネチ・・・頭に【らすと】をつけて採用。正式名称を【らすとコマネチ】へ!
ドボイジャー仕様のキャップレス・・・対象をキャップレス以外にも適用できるので、【らすとドボイジャー】に決定。
結局のところ6種認定

★らすと・フォルカン
★らすと・クーゲル?
★らすと・重ね着クロス
★らすと・純米大吟醸
★らすと・コマネチ
★らすと・ドボイジャー

こう並べてみると、【らすと】の修飾子が【とんでもなく魅力的な】と言い換えられるようでおもしろい!
Posted by pelikan_1931 at 2012年02月01日 10:52
バロン・フォン・らすとるむ公!

なるほど、まだまだありましたなぁ!さすが改造大魔王!
しかし、どぼいじゃーにしろ、大吟醸山田錦にせよ、コマネチにしろ、オリジナルを加工しているからには、立派なフランケンシュタイン型調整です。

それに貴殿は”ボーグルーペが似合う調整師コンテスト”で圧倒的首位ですから・・・

ちなみにバロン・フォンで、バロン・フォン・ベルノウを連想したら酒飲みで、バロン・フォン・ラシクを連想したらプロレス狂
Posted by pelikan_1931 at 2012年02月01日 10:19
こんにちは。師匠。
自分の最も興味のある分野なので僭越ながら書きます。

フランケン型(外見からすぐわかる形状変化を伴います)
らすとフォルカン・・・ペン先自体の柔らかさを演出
らすとクーゲル・・・見た目クーゲルに大変身
らすとクロス・・・クロスポイントだけではなく2枚のペン先の隙間にインクをたっぷり貯蔵しているところに注目

モロゾフ型(外見の形状変化は少ないが、書いて驚き)
ドボイジャー仕様のキャップレス(ギャップレス加工)・・・主にペン芯の空気流入量を調節しています。
大吟醸山田錦加工・・・縦横極細で書けるように考案。書け味向上のためペンポイントだけではなく地金も薄くするのがミソ。
コマネチ加工・・・いわゆるウェットヌードル・・・どんだけスリットが開くんじゃ!・・・スリットを延長したりペン先の側面を削ったりして極細から極太までインク切れなしで筆記可能にします。

以上。・・・ですがこれらが複雑に複合した物がらすとるむスペシャルと呼んで頂けたら幸いです。
Posted by らすとるむ at 2012年02月01日 08:58